第77話 ビルの探索6
ちょっと短いですが。
3人でグールをエレベーターシャフトに落とし、片付けていく。
これで30階から27階までのグールを掃討できた。
間に1つ空けるとして、28階までは安全に探索できそうだ。
と、その前に。
「それじゃミケちゃんお願い」
火炎瓶を渡す。
「うむ、浄化するにゃ」
「ポチ君も」
ポチ君にも渡す。
「うん!」
二人が落とした火炎瓶がエレベーターシャフトの奥底で花開く。
2つ同時だと流石に火力が強いな。
奥底が溶鉱炉のように赤く煌々と輝いている。
最上階以外のエレベータードアを閉め、屋上へと避難する。
これで最上階以外は煙が回らない。
落ちたグールたちもあの高さなら助からないとは思うのだが、途中で何かに引っ掛かって生き延びている可能性もある。
が、あれだけ燻せば確実だろう。
とは言え煙が消えるまでの間、暇になるな。
「ちょっとクーンのところに遊びに行こうか?」
「良いにゃ。おやつの時間だにゃ」
「カリカリだねー」
クーンの居るビルへと移動する。
いつものようにミケちゃんが先行して登り、ロープを仕掛け、それに続く。
荷物は極力最上階に置いて、エレベーターシャフトをダイブだ。
ミケちゃんが買ってきてくれた皮手袋のお陰で思いっ切り滑り落ちても痛くない。
手の平がちょっと熱い程度だ。
「遊びに来たにゃー!」
「ようこそ、いらっしゃいませ。こちらへどうぞ」
クーンに応接室へと案内され、ミケちゃんはソファーの上でそわそわと何かを待ち構えている。
そこへクーンが箱と水を持って戻ってきた。
「カリカリです、どうぞ」
「待ってたにゃー」
「わーい」
二人が早速テーブルに置かれたカリカリの入った袋へと手を伸ばし開けていく。
二人のパクつく、カリッ……カリッっとした小気味良い音が部屋に響く。
「うーん、この味にゃー。一仕事した後のカリカリは美味しいにゃー」
「だねー」
「お仕事ですか。今日は何処へ行ってきたのですか?」
「この都市の入り口辺りにあるビルだよ。入ってた会社は……なんだろう?
レジャー関連の会社みたいだったけどまだ調べてないからな」
「レジャー関連ですと……ユークラフトコーポレーションかシューストカ開発ですかね」
「へー、そういう会社があったのか。パソコンは使えそうなの確保したから後で調べてみないとな……」
調べるので思い出したが、見つけたパソコンの処理も考えないとな。
中に入ってるデータがどうでもいいものならシャーロットさんの所に売り払ってもいいが。
何か有益な情報だったら自分たちで活用したいし。
データを消したパソコンを売るにしても、1つぐらいなら怪しまれないだろうが毎回だと怪しまれるだろうし。
どうしたもんか?
「どうしたのですか?」
「いや、見つけたパソコンの処理でどうしようか?と。
物が物だけに何でも売って良いって訳でもないし、かといって在庫として宿に置きっぱなしにするのも不用心だしなぁ」
「……それでしたらココで預かりましょうか?
好きな時に取りに来てくれて良いですよ」
「ん。良いのか? 助かるけど」
「ええ、部屋は空いてますし電気も通じてますから、どうぞ」
「それは助かる、ありがとう。
そう言えば電気なのだが、ここの発電はどうなってるんだい?
ガソリンが必要なら持って来ようか?」
「お気遣いありがとうございます。電気でしたら大丈夫ですよ。
熱イオン発電で蓄えた電力が100年分有りますから」
「熱イオン発電?」
「ええ、温度差で電流が起こる特殊な金属を地中に埋めて、それを使って発電しているんですよ。
発電量はすごく少ないのですけれど、このビルの下にちょうど地下水脈が通っていて発電するのに適しているんですよね。
シューストカ都市では非常用の電源として推奨されていて、この辺りのビルでも多く使われているとデータには残っていますね。
今ではこの発電方法は使われてないのですか?」
「んー、どうなんだろう?」
けど、初めて聞いた方法だな。
チェルシーの街だとガソリンを作っているから、多分火力発電じゃないかと思ってたけど。
もし、まだ使われてない技術だとしたら……また、えらいお宝の情報を得たかもな。
「お代わりにゃー」
「もう食べたの? あんまし食べると夕飯食べれなくなるよ」
「ええー、まだ食べれるにゃ」
「ふふ、お代わりを持ってきますね」
「すいません」
「あ、僕もー」
十分休憩を取って、クーンの元を後にする。
さて、仕事の時間だ。
また都市入り口付近のビルに戻り、屋上から忍び込む。
煙はすっかり退いた様だ。
屋上には最上階で手に入れたパソコンやカーテン、空き瓶などが積まれている。
リアカーにはまだ乗せられそうだし、29階も漁っておかないとな。
耳の良いポチ君を先頭にいそいそと忍び込んでいく。
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