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第73話 ビルの探索2

「もうお帰りになられるのですか?」


「うん、そろそろ上で回収屋スカベンジャーの仕事をしないといけないから」


「また遊びにきても良いかにゃ?」


「ええ、喜んで。そうだ、コレをお土産に……」

 そう言って、クーンがペットフードを差し出してくるが、やんわりと押し止めた。


「それはまた今度来た時の楽しみにさせてよ」


「にゃ! ここに来ればまた食べれるにゃ? なら毎日来るにゃ!」

「だねー」


「ええ、喜んでお待ちしております」


「それじゃ、また」

「バイバイにゃー」

「また来ますねー」

 クーンに別れを告げ、エレベーターのワイヤーを登っていく。





 20階から18階までは調べたから今日は17階からの探索だ。

 一旦、18階の開けたエレベータドアまで登り、そこから階段を慎重に下りていく。

 ポチ君が先行して物音を探っていくが……すぐに両手で丸を作りながら戻ってきた。


「ここから結構下まで大丈夫そうだよー」


「それじゃガンガン行くにゃ」


 ミケちゃんが率先して17階のフロアへと入っていく。

 いつもの更衣室へと向かうかと思ったら窓際に寄り、何かを探している。


「何を探しているの?」


「カーテンにゃ。服はシャーロットさんに売るから、姐さんたちには大きな布を持っていくにゃ。

 姐さんたち器用だからそれで服とか作れるにゃ」


 3人で手分けしてカーテンを見ていくが、この大部屋のカーテンはどれも破けて雑巾にすら出来そうもない。

 ついでに念のため音声を切ったアーティファクト探知機を見ていくが……お、反応がある。

 後で取りに行くか。

 小さな応接室か休憩室といった所でやっとキレイなカーテンを見つけた。

 色は白と緑の2枚。

 白はレース状で透けており、緑のは葉っぱの刺繍がしてある。


「これキレイにゃー。これなら姐さんたちも喜ぶにゃ」


「そうだね。でも白い方は布としては使えなさそうだね。

 他にも探そうっか?」


「コレはコレで使えるにゃって、何を言わせるにゃ!

 おにいさんはエッチにゃ」

 ミケちゃんがぺしぺしとしっぽで叩いてくる。


 ああ、娼館だからそういう服とか下着も需要があるのか。

 ただ、特殊なところだから見たいような、見たくないような。

 それからはいつものように更衣室を漁り、使えそうな衣服と財布を拾っていく。

 今日はたくさん持ち帰るために、いつものカバン以外にも大きなズタ袋も3枚用意しておいたので、そのまま14階までガンガン漁っていく。

 袋がパンパンになる頃にはアーティファクトも二つ手に入り、帰り支度をすることにした。

 手に入れたのはブラッドルビーにオブシディアン・タールだ。


「はいはーい! 赤いの欲しいにゃー。

 黒いのと交換してにゃー」


 ミケちゃんが余分に持っているオブシディアン・タールと交換する。

 ミケちゃんはCap値が高いためにオブシディアン・タールを3つ持たせていたのだが、暴走用を考えても1つ余分だ。

 これで俺たちのアーティファクト装備編成は次となる。



『俺   Cap値4

 ■クリスタルエッグ x2- スパークトルマリン - オブシディアン・タール

 予備 - オブシディアン・タール(暴走用)

 計5個

 放射能値 -4


 ミケちゃん Cap値5

 ■クリスタルゴーゴン - クリスタルエッグ - スパークトルマリン - オブシディアン・タール  - ブラッドルビー

 予備 オブシディアン・タール(暴走用)

 計6個

 放射能値 -17


 ポチ君  Cap値4

 ■クリスタルエッグ 2個 - スパークトルマリン - オブシディアン・タール

 予備 オブシディアン・タール(暴走用)

 計5個

 放射能値 -4


 余り

 ■オブシディアン・タール 2個 (売値 1つ2000ルーブル)       』



 ミケちゃんは上位アーティファクトのクリスタルゴーゴンを装備しているので、放射能をかなり中和できている。

 クリスタルエッグも枠を埋めるために着けているだけだから、他のアーティファクトが手に入れば付け替えてもいいな。

 そろそろ戦闘用のが欲しいところだ。


「そろそろ帰るかにゃー?」


「そうだね。あ、でも最後にアーティファクトの探索だけして行こうか?」


「下の方見てくるの? 行ってくるねー」

 ポチ君が14階へと階段を下りていく。


 戻ってきたポチ君は眉をひそめ渋い顔をしていた。


「リーダー、グールたちが12階まで上がって来ているみたい。

 これ以上下りると気づかれるかも」


 一昨日にグールの大掃除をした時には10階までは安全になったと思ったのだが、それより下のグールたちが上がってきたようだ。


「んー、そうか……。ポチ君のブラッドルビーも欲しかったんだが、荷物一杯で戦闘は避けたいな」


「明日、また大掃除するにゃ?」


「どうするかな? グールを全部倒しちゃうと他のハンターやスカベンジャーが入り込んできて、クーンの事がバレそうだし」


「それはダメにゃー」


「他のビルも探索してみようか?」


「わかったにゃ」

「うん」


 それから二人に空きビンを集めてもらいながら帰り支度を整える。

 エレベーターを降りていて思いついたことがあるので、他のビルで試してみるつもりだ。

 リアカーに荷物を満杯にして、都市遺跡を後にする。

 こんもりと積もった荷物の上に二人が寝転がりながら1袋だけ貰ったペットフードをカリカリして、俺がリアカーを引いていく。

 荷物もずいぶん増えたなぁ……

 部屋がいっぱいになりそうだ。

 シャーロットさんとの取引は明後日だから、明日はほどほどにしておこう。



 チェルシーの街の北門をくぐり、宿で別れる。


「それじゃ、あちきは姐さんたちにおみやげ持って行くにゃ」


「あ、帰りにロープ100mほどと皮手袋買ってきてくれる?」


「わかったにゃー」


「僕は部屋に荷物入れておくね」


「ありがとう、俺はギルドに行ってくる」


 二人と別れ、ギルドへグールの買い取り金を受け取りに行く。

 売ったグールの数は81体。

 いくらになるやら?



「こんにちわー」


「あら、いらっしゃい。清算出来てるわよ」

 いつものおかまさんが見せてくる明細書の数字は……22680シリング。

 3人で分けても1人7500シリングに、余りは夕飯代ってところか。


「通常、グール1体400シリングだけど、出張買い取りで7掛けになるから1体280シリングでの買い取りになるわ」


「思ったより安いですね……」


「トラックを使ったからねぇ。あの車高いのよー。

 その維持費も込めて安くなっちゃうの、ごめんなさいねぇ」


 車は俺の知る限りだとロボットの商人しか扱っていない高級品だ。

 それを使う以上、それなりに手数料を取られるか。


「わかりました、ありがとうございます。この値段でおねがいします。」


「おほほ、まいどねぇ。また大量に仕留めたら呼んでねぇ」


 おかまさんに礼を言い、裏の駐車場へと。

 ガソリンを買い、火炎瓶を5本製作。

 700mlの中ビン、満杯に詰めたヤバイやつだ。

 これで明日の準備は出来た。

 明日行くのは都市探索初日に苦い思いをさせてくれた最初のビルだ。

 楽しみだ。



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