第68話 吸い出したデータの中身
早めに探索を切り上げ、宿へと戻る。
今日はこれからやることも無いから、じっくり手に入れたデータでも調べてみるか。
ミケちゃんとポチ君はご近所回りをしてくるようだ。
「ご近所付き合いは大切にゃ」
そう言って、服を選別してバックパックに入れている。
可愛いのは自分用、それ以外は世話になった人たちに配るようだ。
衣料品はさっき買い手が見つかったが、近所付き合いを考えれば少しぐらいバラまいたって良い。
元手はタダだしな。
俺はこの世界のことに疎いし、コミュ力があるわけでもないので情報収集が難しい。
その点、ミケちゃんとポチ君は誰とでも仲良くなれるし、知り合いも多い。
情報担当はミケちゃんに任せた方が良さそうな気がするんだよな。
「そういえば、リーダー」
「ん、なんだい?」
「服の買い取りなんだけど、僕は娼館のお姐さんたちにツテを紹介してもらおうと思ってたんだけど。
その人が次にこの町に来るの、来月なんだって。
だからシャーロットさんたちが買い取ってくれて良かったね」
ポチ君の方でも買い取り先を探していてくれてたようだ。
「そうか。ありがとうね」
「うん。じゃ、行ってくるねー」
荷物を抱えて二人が出て行く。
売買担当はポチ君に任せたほうが良いかな。
俺は探索の方に専念した方が良さそうだ。
さて、データを洗うか。
デュプリケイターを開き、収集したデータを確認していく。
まずわかったことは、あのビルは農業関係の会社だったようだ。
トロッコ農機か。
農業用の機械に車両、殺虫剤に肥料と手広くやっていたようだな。
ただし、会社の規模としては小規模で一部地域を相手に取引していたようだ。
機械なんかも設計はするが自社工場で製作するのではなく、委託で作らせてたみたいだな。
自作してるのは肥料等の化学薬品か。
工場の位置は、ここからかなり北に行ったところのようだ
この町が都市同盟の最北端で、辺境との境目だって聞いたから、未探索地域かもな。
ツベルキン工場地帯か。
この情報は……マズイやつかも知れない。
生きてる工場は貴重だってメアリーさんが言ってたからな。
ミサイルの直撃受けてたら潰れてるんだろうけど。
次にわかったのは、あのビルの見取り図。
ざっと目を通していくが、1つ気になる所がある。
地下1階なのだが、《シェルター》の表記がある。
「核シェルターってことだよな? なんか気になるな」
核戦争の際に避難した人たちもいるのだろうか?
居たとしたら、何らかの物資、情報も残されているかもしれない。
一度、見に行ったほうがいいな。
さて、どう行くか?
1階の階段から行けそうだが……そうなるとグールを正面から相手することになりそうなんだよな。
後は決算報告などの業務情報とかだ。
何か他にも有益な情報はないかと探していたところ、銀行口座の情報を見つけた。
「良し良し! こういうのが欲しかったんだよ」
張り切ってデータを辿るが……
書いてあるのはシューストカ都市銀行本店に口座を持っているということだけ。
何か、他にヒントは無いのか?と考え、ピンと来る。
隠し金庫の中に入ってたメモリーカードとカギを取り出した。
早速メモリーカードをデュプリケイターで調べる。
中には口座情報とIDデータが入っている。
カギとセットで口座を好きに出来るそうだ。
銀行の位置もわかった。
旧シューストカ都市址の内郭部。
今、探索してるのが比較的安全とされる外郭部。
内郭部は探索があまり進んでいないそうだから、何とかする方法を考えないとな。
まずは情報と……武器か。
ついでに今までに手に入れた電子マネーカードのチェックをする。
18枚のカードから端数を除いて、320万クレジット。
金色のカードからは、なんと800万クレジットが入っていた。
合わせて1120万クレジット。
今までに手に入れた手持ちのと合わせれば、現金が358500クレジット。
電子マネーが1140万クレジットとなる。
とんでもないお宝だ。
だが、問題は使い方だ。
電子マネーデータはデュプリケイターで吸い取れるが、それを直接人や機械の商人に見せるわけには行かない。
盗みを白状する様な物だからな。
流石に100年前の持ち主は現れないから、拾得物として拾った者の物だと思うが。
とにかく、必要なのは名義替えだ。
正式なカードを手に入れて、そちらに移し変えれば問題なく使えるはず。
カード文化の衰退した都市同盟内では使えないが、100年前から生きてるロボットたちなら何らかの反応は見せる可能性が高い。
このカードを直接名義替え出来たらいいんだが、名義にはセキュリティが掛けられている。
そして、このデュプリケイターなのだが、セキュリティは基本破壊していくものらしいんだよな。
情報の書き換えではなく壊してから変性修復ウィルスを流し、強引にパスを通すという力技仕様だ。
わかりやすく言うなら、相手を全力で叩いて破壊し、破壊した部分に寄生体を侵食させて相手を操るというおかしな設計だ。
コレも謎なんだよな。
システム画面にカナン統合幕僚本部 情報戦略室付け電子戦装備 《デュプリケイター》とか出てるし。
コレの事も人に知られないように気を付けよう。
特にロボットの商人たちに知られたら非常にマズイ気がする。
さて、これで今日の作業は終わりだ。
明日は遺跡で出張買取か。
出張買取だと買取額が少し下がるようだが、グールは82体もある。
それなりの値段になるはずだ。
いつも読んでいただきありがとうございます。
今週の投稿はここまで、次の投稿は金曜日になります。
明後日、火曜からぼっちシェルターの連載も再開します。




