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第66話 ハッキング

 都市遺跡のビルに向かう途中、レイダーによる待ち伏せを受けたが難なくこれを撃退。

 ビルの側面に突き出ている看板にぶら下がりながら、身を隠していた俺は無傷だ。

 左右のビルの屋上に散開した2人はどうだろう?と手を振ってみる。

 すぐに向こうからも振り替えしてきたので、安心して地上へと飛び降りた。


 広場や路地裏にはレイダー達の死体が散乱している。

 そのどれもが胸か頭を一撃で撃ち抜かれており、射手の腕の確かさがわかる。

 俺が撃ったのは2人、接近戦で2人殺ったから、残りの8人はミケちゃんとポチ君の仕事だ。

 10m程の距離とは言え、動き回る相手に正確に当てられるのはすごいな、俺は止まった相手でないと当てる自信無いんだけどな。


「おにいさん、大丈夫かにゃー?」

 ミケちゃんがビルから飛び降りて、声を掛けてくる。

 ポチ君も同じようにビルから飛び降りた。

 もちろん2人ともアーティファクトの力を使って、着地の瞬間に体重を消している。

 2人とも銃だけでなく、アーティファクトの扱い方も上手くなったなぁ。


「大丈夫だよ、そっちもケガは無い?」


「大丈夫にゃ! お兄さんが囮になってくれたから、簡単に逃げ出せたにゃ。ありがとにゃ」


「リーダー!」


 しっぽを振りながら、駆け寄ってくるポチ君とも合流し、そのまま後片付けに入る。

 2人がレイダー達の荷物を漁り、俺が遺体を道の横に積み上げた。

 この都市遺跡はグールの巣窟で、奴らは夜行性で夜になるとそこらをうろつき始めると聞いたから、道端に置いておけば勝手に片付けてくれるだろう。


 収穫品はハンドガン8丁に9mm弾が115発、重いハンマー1つとナイフが12本。

 他にはこん棒もあったが売れそうにないので捨て置く。

 ハンマーは俺が使ってるのより一回り大きく、重い。

 試しに振ってみたが、上段からの振り下ろしで腰が泳ぎ、前につんのめってしまった。

 これは俺には扱えないな、これも売るか。


「おにいさーん! 見て見て! 弾がこんなに!」

 ミケちゃんが両手の平いっぱいに弾を乗っけて見せてくる。


「お! いっぱい獲れたね。……こいつら弾は持ってるくせに金はまったく持ってないんだよなぁ?」


「多分、お金はアジトに隠してるにゃ。探すにゃ?」

 ミケちゃんの瞳にお金のマークが映っている気がする。


「うーん、場所がわかればいいんだけど」


「ポチ! 出番にゃ、臭いを辿るにゃ!」


「ええ!? こんな入り組んだところで探すなんて無理だよう」


「そこを何とかするにゃ、ほれ」

 ミケちゃんがレイダーから剥ぎ取った靴下を放り投げる。


「ひぇ!?」

 慌ててポチ君が避け、臭そうな靴下を手で摘んだミケちゃんがポチ君に迫る。

 2人が追いかけっこを始めた。

 流石にポチ君でも、警察犬の真似事は無理か。



「それにしてもこいつら、何処にアジトを構えてるんだろう?

 ここはグールだらけなのに」


「そ、そうだね。多分、グールに備えた造りをしてるだろうから、近くに行けばわかるかも?」

 追いかけっこを終えた二人が戻ってくる。


「機会があれば探すにゃ」


「そうだね」


 レイダーのアジトはなんらかのグールに備えた改装をしている可能性が高い。

 そういうのは見ればわかるだろうから、そのうち探す方法を考えてみるかな。

 銃に使った分の弾の詰め替えをするが、9mm弾は4つの弾倉を満タンにしても予備弾が310発も残り。

 それを二人に半分こして渡した。

 しばらく撃ち放題にゃ、とミケちゃんが喜んだ。



 最近、探索をしているビルまでやって来た。

 リアカーに積んだ荷物の中から鍛造の釘とハンマーを取り出す。

 前に土手に穴を掘ったときのと合わせて釘の数は20本。

 これをビルの側面に1m間隔で上へと打っていく。

 打つ目的は明日、ギルドの出張買取がここまでやって来るので。

 どうやってビルの屋上まで登ったのかの追求を誤魔化す為だ。

 アーティファクトの存在を知られるのはマズイ気がする。

 側面に釘を打ちながら、それを伝って身軽なミケちゃんたちが上手く登っていったと伝えるつもりだ。

 ビルの高さは60m、釘を打つのは20mほどだが目視で20m先の釘を探すのは難しい。

 もし見つかり追求されても、そこからはビルの窓を駆け上ったとでも言えば良いだろう。


 ミケちゃんが先にビルを駆け上がり、ロープを下ろしてくる。

 それに掴まりながら俺がハンマーを、ポチ君が釘を摘んで打ち込んでいった。

 慣れない作業に手間取り、途中休憩を挟みながら1時間ほどで終える。

 ビルの屋上で一休みしながら。


「さて、それじゃ今日も昨日の続きで探索に入ろうか」


「了解にゃ! 可愛い洋服は全部、ぜ~んぶ! あちきのものにゃ!」

 ミケちゃんがぐっと手に力を入れた。


「僕も頑張って漁るよう」


 二人がやる気になっている。

 近くのグールは全部倒したし、後は高額な収穫品を探して漁るだけ。

 簡単で高収入な仕事だしな。

 しばらくは楽そうだし、俺もやる気が出てきた。



 まずは20階のパソコンのあった部屋に行く。


「ん? どうしたにゃ、ここはもう見た所にゃ?」


「うん、下の階を漁る前にこのパソコンの中身を調べてみようと思ってね」

 バックパックから充電器を取り出す。

 それにパソコンのケーブルを繋げ、……画面が起動した。

 良し、これにハッキングツールのデュプリケイターを繋げ、データを根こそぎ戴くことにした。

 デュプリケイターの記憶容量はとんでもない桁数になっているし、容量的にも問題無さそうだな。

 パスワードやセキュリティは全部破壊(クラック)で、データは全部こっちに移す……と、ポチっとな。

 画面を操作してハッキング作業が自動的に始まったが、どうやら時間が掛かるようだ。

 データの移動に手間取ってるらしい。


 デュプリケイターはそのまま放置して、二人と共に下へと降りていく。

 19階は昨日調べたから、今日は18階からだな。

 18階も上の階と同じような構造で、今日もロッカールームを漁る。

 ロッカーを開けていくわけだが、ポチ君のしっぽが左右に振られている。


「開ける瞬間、ドキドキするよねー。

 僕、漁るの大好きー」


 ポチ君もたくましくなったなぁ。




 収穫は上と同じで衣料品がほとんどだ。

 財布は1つしか見つからず、8000クレジットにキャッシュカードに電子マネーカードを1枚ずつ。

 ミケちゃんは今日も可愛い収穫品があったのか、ニコニコしている。

 ポチ君は漁り足りないのか、他の場所も調べてくると行ってしまった。

 服は軽いのだが結構かさばる、これだけでバックパックがもう一杯だ。

 次、来るときは追加の袋を買ってこよう。

 今日の探索はここまでかな?


「リーダー、向こうに開かないドアがあるんだけど。

 ちょっと来てー」


 ポチ君の呼んでいる方に向かえば、通路の突き当たりに銀色のスライドドアがある。

 おそらくエレベーターだ。

 その前でポチ君が首を傾げている。


「これ、上にもあったにゃ。何の部屋にゃ?」


「多分、エレベーターだよ。階段の代わりに上り下りするための機械だよ」


「ふーん、便利にゃ? どうやって使うにゃ?」


「横のスイッチを押せば動くはずだけど……動かないね」

 電気が通ってないので、昇降スイッチを押しても反応が無い。


「リーダー、開けてー?」


「うーん、とりあえずやってみるか」


 ドアの隙間にナイフを差し込み、出来た隙間に指を入れて強引にこじ開ける。

 ズズッ……、ズズッ……とゆっくりながらドアが開く。

 開いた先は真っ暗闇。

 落ちないように気をつける。


「何にも無いにゃ」

「ハズレかぁ……」

 想像と違ったのか、二人がガッカリしていた。


 何も無いエレベーターを後にして、20階でデュプリケイターを回収。

 充電器は電力を使い切ってしまったらしく、カラになっていた。

 時間はまだあるが、荷物が一杯なので町へと帰ることにした。


 二人を荷物と一緒にリアカーに乗せ、荒野を走る。

 服の詰まったバックパックの上に寝そべりながら、ミケちゃんが上機嫌に鼻歌を歌っている。

 ポチ君もそれに合わせて軽く手拍子をしている。

 こうやってリアカーでゆっくりと走るのも悪くないな。

 来週の戦車バザーで車が手に入れば良いが、無理そうだったらこのままリアカーの旅でもいいかな。



 町へと辿り着き、北門から入る。

 門を抜けてすぐの所でメイド服の女性に声を掛けられた。

 その後ろで、昨日会ったシャーロットさんが所在無さげな顔をしている。



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