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第6話 アーティファクト

ケガした部分書き忘れたので加筆しました

 なんとかハゲネズミをしとめたが、バカな油断をしていたためにケガをしてしまった・・

 裾をまくり腕の状態を見てみるが、青タンが出来てるだけで済んでいた。

 川辺で襲われていた人は泣き叫んでいたが?

 戦闘服を見てみると、ほんの少しほつれたような跡があるがそれだけだ。

 戦闘服は厚手で、中にゴムのような生地も織り込まれており、それが緩衝材としてハゲネズミの攻撃を和らいでくれたのだろう。

 表面がほとんど傷ついてないこともあり、この戦闘服がかなり丈夫なのものだと評価できる。

 おかまさんがこの装備なら楽勝みたいなことを言ってたのもこういうことか。


 俺はハゲネズミに黙祷した後、ナイフに付いた血脂をハゲネズミに擦り付けるという罰当たりことをしながらこれからのことを考える。



「とりあえず運ばないと、バックパックに入れるか?

 でも汚れたまま入れたくないなぁ、何か袋あったっけ?

 食料の入った袋があったか。あ、ご飯!」


 食事の途中だったことを思い出して、さっきまで座っていた大きな石の辺りを振り返る。

 そこには、投げ出されたソーセージと、食いかけのパンを咥えた新たなハゲネズミが驚いた様子でこちらを見ていた。


 見つめ合う俺とハゲネズミ。

 のそりと一歩後退すると振り返り、逃走しようとするハゲネズミ。

 だがそれは許さず、一息に間合いを詰め、その尻をおもいっきし蹴っ飛ばしてやった。

 ハゲネズミは3mほどの放物線を描いて吹っ飛ぶ。

 蹴り飛ばした時のつま先がめり込む感触から、このブーツはつま先に鉄板が埋め込んであるんだろうなと確信する。


 尻を蹴り飛ばしたハゲネズミは、先ほどの頭を蹴ったハゲネズミと違い、苦しそうにもがいている。

 流石にこれには罪悪感を感じる・・

 これは速やかに介錯を入れるのが慈悲だろうと思い、ハゲネズミの首にナイフの刃を当て、一気に引き裂く!

 だが、骨まで断つことが出来ず、首の半ばまでしか切れなかった。

 自分の手際の悪さをハゲネズミに詫びながら、再度刃を当て、体重を掛けながら骨を押し切った。

 首の神経を絶ったから痛みを感じることはないだろう、それが命を絶った詫びになどなりはしないが。


 おもいがけず2匹のハゲネズミが手に入ったので、それを座っていた石のそばに寄せ、バックパックを漁る。

 ハゲネズミを入れる袋として食料袋は使いたくない。

 他に無いかと探して、まだバックパックのサイドポケットは見ていないことに気づく。

 バックパックには4つのサイドポケットが付いており、この戦闘服にも胸、腰、太ももに2つずつのポケットが付いていた。

 戦闘服の腰の2つだけ特殊で、金属で補強されており何やら頑丈に作られている。


 戦闘服のポケットには何も入っていなかったが、バックパックの4つのポケットにはそれぞれ裁縫セットとライター、10mほどの細いロープ2本、医薬品、折りたたまれたビニール袋が入っていた。

 目当ての袋を見つけて俺ニンマリ、気持ち悪い笑顔である。


 作業をする前に、拾いなおしたソーセージを水で洗って一口で食べる。

 疲れた体に塩気と肉の旨みが元気を分けてくれる。

 ハゲネズミに咥えられたパンは雑菌が怖いので残しておく、これはハゲネズミをおびき出す撒き餌にでもしよう。


 折りたたまれたビニール袋を広げてみると、結構大きいことがわかる。

 ごみ袋を2回りほど大きくしたぐらいで、傾きかけた日の光にさらすとキラキラ光っている。

 よく見れば、ビニールの中に光ファイバーのような線が編み込んであり、引っ張ってみても伸びず、かなり丈夫なことがわかった。


 食料袋と見比べてみれば、両方とも同じものであり、大きさも一緒であった。

 新しい方を獲物袋と名付け、ハゲネズミを詰め込む。

 ハゲネズミは1匹15kgほどだが、2匹入れて持ち上げてみても、ビニールは伸びもせず余裕がありそうだ。

 荷物を武器以外、全てバックパックに詰め替え帰りの支度をする。





 帰る前に、川の観察をしておこうと川辺に寄るとカエルを見つけた。

 目が飛び出たカエルで深い藍色の瞳と光沢のあるグリーンの皮膚を持ち、きれいだ。

 子供たちの獲っていたものはこれだろうか?

 俺も獲ってみようと思い、近づく・・


 ・・ピコーン・・--・・--

 不意に腰のアーティファクト探知機から音がする、それに目線を向けた隙にカエルは逃げてしまった。


「え?あ、あるのか!ここに!」

 アーティファクトが近くにある!

 その示唆に胸が沸き立つ。


 ネトゲ<探索者>ではアーティファクトは不思議な力を与えてくれる物質で、常人と超人を分ける境界線である。

 アーティファクトの力を得た超人は、得たアーティファクトに拠るがどんなに走っても疲れず、傷を負っても直ちに再生して塞いだり、200kgの荷物を羽根を運ぶがごとく背負うことができる。

 他にも様々な能力があり、どれもこの野蛮な世界では黄金に勝る価値があると言えよう。

 ただし、少しのデメリットはあるが。


 アーティファクト探知機を川に向ける。

 探知機は探索対象に近づくと、光の点滅と音を出す、初期型の一番性能の低い物であり、正確な方向や位置を割り出すのが難しかった。

 探知機を左右に大きく振りながら、川へと近づいていく、探知機の反応が強く出るのはやはり川のようだ。

 この川は幅30mほど、深さは中心あたりは結構ありそうだ。

 川へと入って行き、探している途中、探知機から嫌な音が聞こえてくる・・


 カリカリ・・カリカリ・・--


「げ!放射能かよ!」

 この探知機はアーティファクトを探す以外にも、ガイガーカウンター、放射能感知器としての機能も付いている。


 んー・・、アーティファクトがある所には、放射能もあることもよくあるのだがそこまで再現しているのか・・

 いや、核戦争後の世界だからたまたまか?

 どちらにしても引くべきか、進むべきか?


 医薬品の中には、放射能血清という放射能を除去してくれる謎アイテムも入ってたが、正直胡散臭くて使いたくない。

 だが、アーティファクト無しにこの世界で生き抜くのは無謀であろう。

 進むしかない。



 カリカリ・・カリカリ・・--

 ガイガーカウンターが反応する方にアーティファクトの探知反応もつづく。




 ガリガリ・・ガリガリ・・--

 うわ・・、放射能が濃くなってきたよ・・




 ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ・・--

 これでもか!というほどガイガーカウンターが反応している、それでも勇気を出して進むと、探知機から一際強い光が放たれる!


 瞬間、目の前にバチッ!と電撃が走ると、光が寄り集まり、石となった。

 石の周りを電気が円状に飛び交い、鳥かごの様になって浮かんでいる。

 恐る恐る手を伸ばすと、電撃はこちらに干渉することなく、石を掴む事が出来た。


 石を掴むと、急いで川辺に戻り、石を鑑定する。

 透明な卵形の丸石、クリスタルエッグだと見切りをつけ、手が震える。

 最初に手に入れるアーティファクトとしては大当たりだと言える。

 この石は放射能を吸収する力があるのだ。



 アーティファクトの僅かなデメリット、それは放射能を発することでありそれを吸収するクリスタル系列のアーティファクトを基準に着け増して行くのだ。

 クリスタルエッグはクリスタル系だと最低ランクだが、それでもここからさらに二つアーティファクトを装備する余裕が出来る。


 早速、腰の金属補強の特殊ポケットにクリスタルエッグを入れて装備する。

 これでちゃんと装備できてるか疑問だが、多分これでいいのだろう。

 これは幸先がいいぞ!





 戦闘服を脱ぎ、絞り上げ、帰り支度をする。

 濡れた服が気持ち悪いが乾かす用意も無いし、日が沈み始めてきた。

 夜になる前に帰ろう、だが気になることがあるので川沿いを歩いて行く。



 スラム街に近い川べりで、またアーティファクト探知機の反応があった。

 アーティファクトと放射能の関連はまだわからないが、この川にはまだ他にもアーティファクトが眠っている可能性がある。

 それが今、証明されたのだ。


 アーティファクトはまだ1つしか装備できないがこの世界に適応していくことで装備枠が増える。

 そしたら、その分だけ強くなれるし、ダブったのは売っても良い。

 SHOPアプリで売って、代わりに強い装備を買うのも良い。


 アーティファクトの採れるこの川は俺にとって、まるで西部開拓時代のゴールドコーストのようだ。

 砂金採りの代わりにアーティファクトを採る。

 アーティファクトを探せるのは俺だけ。


 この川には無限の可能性を感じる!

 俺は川に向かってニンマリと微笑んだ、やはり気持ち悪い笑顔だった。




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