第63話 町への帰還
戻ってきました、またよろしくおねがいします。
これまでのあらすじ。
都市遺跡でレイダーに襲われたけど、撃退したよ。
レイダー達を撃退し、ビルの屋上で3人で無事を喜んだ。
「二人とも、ケガは無い?」
「大丈夫にゃ!」
「うん、僕も大丈夫だよう」
ミケちゃんはニッと、ポチ君は控えめに笑みを返してくる。
「おにいさんこそ大丈夫かにゃ?」
「俺もちょっと腕を痛めたぐらいだから、大丈夫だよ」
レイダーのボスとやりあった時に左腕と左の肋骨にヒビを入れられたが、回復の効果があるブラッドルビーのお陰で痛みは徐々に治まってきている。
歩くたびに振動で痛みが小さく走るが、その程度だ。
「にゃ!? そういう事は早く言うにゃ。痛くないにゃか?」
ミケちゃんが気遣わしげにこちらを覗う、しっぽもダランと下がってしまった。
「大丈夫だよ、さっき採ったブラッドルビーの力でどんどん治ってるし」
「そうにゃか、にしても便利なアーティファクトにゃ」
「だね。反応はまだいくつもあったから、明日また採りに行かないと。
今日はもう帰るけど、ポチ君。奴等の反応はどう?」
「足音はここから遠ざかってるよ。さっきから探ってるけど近くには居ないと思う」
「追いかけるにゃ?」
「いや、今日は疲れたし、もう帰ろう。
残弾も心許ないし」
俺の.357マグナム弾はまだ50発ほど残っているが、ミケちゃんたちの9mm弾は残り少なそうだ。
それから、倒したレイダー達から銃と銃弾、財布があれば剥ぎ。
裏通りで刺さったままにしていたナイフを回収していく。
回収作業の間、ずっとポチ君が耳を立てていたが、レイダー達は戻ってこなかった。
手に入れた剥ぎ取り品はハンドガン12丁、ありがたいことに9mm弾が165発。
財布の方からは700シリング。
財布がしけていたが、なかなかの稼ぎだ。
「さて、じゃあ帰ろうか」
リアカーを引こうとするが…
「それはあちきがやるにゃ。おにいさんはケガしてるんだから、上に乗ってにゃ」
「僕も引くよー」
二人が俺より早く、リアカーの引き手の中に入り込む。
「ん、ありがとう。それじゃ上で休ませてもらうよ」
二人の重荷にならないよう、オブシディアン・タールを暴走させ体重を軽減してから乗る。
「それじゃポチ、行くにゃ!」
「うん!」
リアカーが町に向かって走り出した。
途中、アリに出くわしたが荷台の上からマグナムリボルバーで蹴散らし、そのまま通り過ぎた。
荷物が一杯だったのでアリから剥ぎ取らない。
それにポチ君は走ってて楽しそうだが、ミケちゃんはすでにバテ気味だ。
荷物は軽く、さっさと帰った方が良い。
そのまま町の北門へ。
ハンター証を見せ、門をくぐるが少し進んだ所で声をかけられる。
「ちょっと、アナタ! 何をしているんですか!」
金髪の長い髪をクルクルと巻いたお嬢様然とした女の子が、こちらに向かって眉尻を吊り上げている。
左右を見渡すがトラブルを嫌がったか、周りから人が離れていく。
ミケちゃんとポチ君も困惑顔だ。
「そこの粗末な台車に乗ったアナタです!」
あ、ミケちゃんがムッとした。
「こんな可愛い子達に……、奴隷みたいな扱いをするなんて!
許しませんよ!」
ポチ君の尻尾が垂れ、悲しそうな表情をする。
これは一言、言ったほうがいいな。
「二人はそんなのじゃありませんよ。大切な仲間です。
今は俺がケガしたので、荷台で休ませてもらっているだけです」
「信じられませんわね。ネコちゃん、ワンちゃん大丈夫?
私は味方だから本当のことを話していいのよ?」
「おにいさんの言ったことは本当にゃ! それに、あちきらはハンターにゃ。
アンタの言ってることは失礼にゃ」
「そうだよう…」
ミケちゃんは毅然と、ポチ君はミケちゃんの後ろに隠れながら言う。
「……そうでしたか。これはとんだ勘違いを、失礼しました。
声を荒げてびっくりさせちゃったわね。ごめんなさいね、二人とも」
女は俺に向き、頭を下げた後、二人にも頭を下げた。
「ま、まぁわかってもらえれば」
「わかれば良いにゃ」
「だ、だよう」
それから女と軽く自己紹介をしたが、女の名はシャーロット。
町の中心に住む1級市民で、俺のことを奴隷商人かと勘違いして話しかけたそうだ。
1週間後には戦車バザーがあるのだが、そういう大きなイベントがあるとレイダーや奴隷商人などが町に寄ってくることが多いらしい。
気をつけてと忠告された。
彼女と別れ、ひとまず宿を目指す。
「俺は宿で荷物を降ろした後、リアカーを返しに行くけど二人はどうする?」
「あちきは娼館の姐さんたちに服を渡しに行くにゃ。
ポチ、手伝うにゃ」
「はーい」
二人と別れ、西のハンターギルドへと。
駐車場にリアカーを置き、中へ。
「こんにちわー」
「あら、いらっしゃい。遺跡はどうだった?」
受付にはいつものおかまさん、エリザさんが佇んでいる。
「いろいろ大変でした。かなりの量のグールを仕留めたんでギルドでもっと大きい車を借りられませんか?」
「あら、どれくらい?」
「グールが82体になります」
「ん、んー? 聞き間違いかしら」
「いえ、聞き間違いじゃないです。」
「とんでもない量ね、どうやったのかしら? って、ハンターの内情を聞くのは野暮ね。
ごめんなさいね」
おかまさんがウィンクしてくる。
「いえ、大丈夫です。それにただ撃っただけですから、出し惜しみ無く」
作戦やアーティファクトについては流石に言えない。
「そう。それで車の件だけどギルドが貸せるのはリアカーまでなのよね。
でも出張買取はできるから。トラック出すわよ、何時がいい?」
「んー…、明後日でどうですか?」
「わかったわ。それじゃ明後日の朝にギルドへ来てちょうだい」
それからレイダー達に襲われたことも話した。
こちらの安否を尋ねホッと胸を撫で下ろし、おかまさんは遺跡について注意勧告を広めると言い。
挨拶を交わして、ギルドを出る。
「さて、明日の準備をしないとな」
出張買い取りを明後日にしたのは、アーティファクト等いろいろ見られるとマズイものがあるからだ。
それを誤魔化すために明日はいろいろ仕掛けをしないといけない。
今日のうちに準備を整えねば。
それから南のバザーへ。
バザーの鍛冶屋へと顔を出す。
「こんにちわー」
「おう、いらっしゃい。今日は何を探してるんだ?」
バンダナをした店主が返事を返す。
「前に買った鍛造の太い釘、まだありますか?」
「おう、10本ぐらいか?」
「はい、それぐらいで」
「500シリングな、ちょっと待ってろ」
店主が用意をしている間、店の中を見渡すが変わったものを発見した。
直径3cmほどの円形の、平べったいケースにワイヤーが入っている。
「巻尺ってわけじゃないよな?」
「お、それが気に入ったかい?」
「いえ、コレって何ですか?」
「ワイヤーだよ、暗器のな。紐を通して手首の辺りに固定して持ち歩くんだよ」
そう言って店主が薦めてくるので、ちょっと試着してみる。
「これは……、中々……」
中二病をくすぐってくる。
隠しワイヤーは腕時計を反対に付けたように手首に固定され、ワイヤーの引き出し部にはリングが付いている。
そのリングに指を引っ掛け、ワイヤーを引き抜くようだ。
「どうだい? 良いだろ?」
店主の勧めに頷き、これも買った。
釘と合わせて800シリングであった。
帰りにガンショップに寄ったところ、ハンドガンの買取は1000から2000シリング程だそうだ。
ハンドガンの扱いについては二人とも相談しないとなぁ。
宿へと戻り、二人を待った。
こっち久しぶりでちょっと戸惑う。
今週中にリハビリを、日曜には戦闘シーン入れたいなぁ。