第57話 ビルの探索
遅れてすいません。
アイテムの取捨選択考えてたらダウンしました。
ビルの屋上で一休みして、弾薬の詰め替えをしアーティファクト探知機の音声を切る。
用意を整えて、探索再開だ。
屋上の端にある出入り口のドアを捻るが動かない。
カギが掛かってるようだな。
なんとか入り込む場所が無いか見渡したところ、側面に小さな換気窓を見つけた。
換気窓はカギが掛かっておらず、隙間を空けている。
俺では入り込めないが・・
「あちきにまかせるにゃ」
ミケちゃんが装備を外して、潜り込んだ。
すぐにドアのカギを外して、ドアの隙間から手招きをする。
「中はどう?」
ミケちゃんの装備を渡して、俺も中へ入る。
「気配は無いにゃ」
ミケちゃんが装備をし直し、ハンドガンのスライドを引いて、初弾を薬室に装填しながら答える。
「じゃ、僕がちょっと探ってくるね」
ポチ君もハンドガンを構え、進んでいく。
今回は敵に気づかれずに探索する予定なので、サイレンサーを付けたハンドガンがメイン武装だ。
ポチ君が階段を下りていく、俺とミケちゃんはそれを見守りつつ待つ。
5分ほどでポチ君が戻ってきた。
ポチ君が言うには、グールも呼吸をしていて、その呼吸音が2つしか聞こえなかったらしい。
臭い的にも、大勢居る時の生活臭の様な物も感じなかったそうだ。
敵は2体か、ポチ君を先導に俺たちも階段を下りる。
壁に20を示すこの世界の数字が書いてある、階段はさらに下まで続いている。
耳を澄ませるが静かだ。
さっきのグール共は上まで上がってこないようだな。
一息ついて進もうとして、壁に縦に溝が入ってるのに気づく。
上を見ればシャッターがあるようだ。
防火シャッターかな?
コレが階段部とフロアー部の境界になってるのだろう。
境界を越える。
ポチ君が中腰でススッと近くのドアまで進み、中を指差す。
ドアの隙間から見れば、中でグールが寝ている。
よし、次は俺の出番だ。
俺が中へ足音を立てないように静かに入り、ミケちゃんは単独で通路の奥へと進んでいく。
ハンマーをゆっくりと抜き、寝息を立てるグールの横へと近づく。
グールのクセにボロボロのスーツを纏っている、変なグールだ。
ハンマーを裏返し、尖がったピックの部分を下に向ける。
心の中でせーのっ!と声を上げながら、中段に構えたハンマーを餅つきの要領で振り下ろす。
コッ!と小さな音を立てて、グールの目がカッ!と開く。
そのままハンマーを捻れば、声を上げることなくグールは息絶えた。
離れた所からパシュッ!パシュッ!と聞こえてきた、ミケちゃんも殺ったようだな。
それから3人で固まりながらフロアーの探索を進める。
ポチ君の言う通り、あのグール2体だけしか居なかったようだ。
ここからは3人で手分けして金目のものが無いか、探る。
俺はまず防火シャッターの所だ。
シャッターを音を立てないようにゆっくりと下ろす。
これで下に居るグール共に不意を打たれることもないだろう。
シャッターのロックを掛けて、ホッと一息つく。
さて、さっきのスーツを着たグールから探るか。
スーツのポケットから分厚い財布にカード入れ、スマートフォンの様な機械を手に入れる。
財布には30万クレジットにキャッシュカード、金色の電子マネーカードが1枚ずつ。
カード入れにはいろいろ入っているが、使えそうなのはIDカードと小さなカギくらいか?
スマートフォンは後でタヌキのおじさんの所にでも持っていってみよう。
ジャンクとか買うって言ってたからな。
部屋の中も探る。
ざっと見て、金になりそうなのはパソコンとそれを置いてるテーブルとイスぐらいかな。
どれも状態は良さそうで、テーブルとイスは埃を拭うと黒く光沢があって高級品ぽい。
誰か買う人を見つけたら、コレを持って帰ってもいいな。
パソコンを調べるが電気が通って無いので動かない。
とりあえずコレは持って帰るか。
ケーブル類を外し、バックパックに詰めていく。
本体ごと詰めても、まだバックパックには余裕がある。
よしよし、次は机の中を探るか。
引き出しにはカギが掛かっていたが、さっき手に入れたカギで開けていく。
中には書類と、丁重にケースに入ったカギに写真が入っていた。
書類はこの会社のことが書いてあるようだが、よくわからんので捨て置く。
写真には3人の親子が写っている。
神経質そうな男性に笑う女性、その二人に挟まれた大人しそうな女の子。
横のグールを見る。
このグールの生前の家族だろうか?
息を吐いて天井を見つめ、少し悩む。
窓際のカーテンを剥ぎ取り、写真と一緒にグールをそれで包んだ。
ミケちゃんたちは嫌がるかもしれないが、町まで連れ帰って埋めてやろう。
町中に墓を作ることまでは出来ないが、土手に埋めるぐらいはしてやるか。
土手は子供たちでにぎやかだし、悪くないだろう。
二人と合流する。
奥には本のいっぱいある部屋と空き瓶の転がる部屋があったそうだ。
それと財布を一つ手に入れた。
中身は52000クレジットとキャッシュカードと電子マネーカードが1枚ずつ。
後は中身の入った瓶を一つ、中身が琥珀色なのを見るとウィスキーかブランデーかな?
まずは本の部屋から見ていくか。
部屋には本棚が並んでいるが全部書類を束ねたものみたいだな。
壁際にも本棚が並んでいるが一部不自然にポッカリと空いている。
床も見れば細いレールが敷いてある。
バレバレだな、おそらくは遊び心で作ったのだろう。
本棚を横に引いたら、金庫が出てきた。
「おお! 隠し扉にゃ!」
「わぁ! お宝ー?」
ミケちゃんとポチ君は隠し扉に大喜びだ。
ミケちゃんが金庫の扉に手を掛けるがビクともしない。
どうにかするにゃ!とミケちゃんが目で催促してくる。
苦笑しつつ、さっき手に入れたケースに入ったカギを使い開ける。
中には小さなケースがある。
中身はメモリーカードとカギが一つ。
なんだろう?
後で調べてみるか。
二人に金庫の中身を見せると酷くガッカリしていた。
「金貨とか宝石がザックザクだと思ってたにゃ」
「僕もレーザーガンがぎっしり詰まってるかと思ったのに」
期待が大きかった分、二人は落胆している。
「まぁまぁ、さっき金色のカード手に入れたよ。ほら」
金色の電子マネーカードを見せる。
「おお! ピカピカにゃ」
「わー、ピカピカだねー」
二人のしっぽが左右に揺れる。
気を取り直したところで探索再開だ。
残りの空き瓶の転がる部屋を見たが、元は応接室か休憩室だったのだろう。
棚はカラで、そこに飾られていたと思われる空き瓶が散乱している。
中身が入ったのは二人が見つけた1本だけだったらしい。
空き瓶だが、ガラスは高級品らしいので持って帰ることも検討する。
これで、この階は全部見たな。
この階ではアーティファクト探知機の反応は無かったな。
防火シャッターを静かに開け、階段まで戻ってくる。
「じゃ、ポチ君頼む」
「うん、ちょっと見てくるね」
ポチ君が静かに階段を下りていく。
少しして、ポチ君が毛を逆立てさせながら戻ってきた。
「下、グールでいっぱいだよ。20体以上居た」
ポチ君の知らせに俺とミケちゃんも緊張する。
「・・どうするにゃ?」
「・・ちょっと考えたい。今日の探索はここまでにしよう。
後は持てるだけ持って、帰ろうか」
20階のフロアーに戻り、荷物を詰めていく。
俺もカーテンで包んだグールを取りに行く。
オブシディアン・タールを2個着けているから重さは大丈夫だ。
二人はバックパックに空き瓶を詰めれるだけ詰めてきた様だ。
音を立てないように静かに階段を抜け、屋上へと戻る。
屋上で一息つきながら、持ってきたグールについて説明する。
二人も納得してくれたようだ。
さて、後は帰るだけだが。
二人はここからアーティファクトの力で、ふわりと飛び降りることが出来るのだが。
俺は窓枠を伝って、一つ一つ降りて行くことになりそうだ。
今度来るときは長いロープを買って来よう。
屋上の手すりに結んであったロープから1本回収し、それを使ってグールの死骸を俺のバックパックに縛りつける。
二人がさきにピョンッと屋上から飛び降りていく。
怖くないのかな・・?
屋上の手すりに結んであるロープは20m分だ、残り40mはまた窓枠を伝ってのクライミングだ・・
俺がおっかなびっくり降りていたところを、離れた所から見ている奴がいたことに俺は気づけなかった。
リアカーに荷物とミケちゃんたちを乗せて、町へと戻る。
リアカーを引きながら、グールたちを倒す方法を考える。
途中スラム近くの土手に寄り、グールの死骸を降ろす。
俺だけ先に宿に戻り、スコップを取ってくる。
土手に穴を掘り、グールを埋めた。
ミケちゃんとポチ君が何処からか花を摘んで来てくれて、それを墓の上に供えた。
手を合わせて冥福を祈る。
祈るが、グールを人として扱うのは今回だけだと心に誓う。
東門をくぐり、町中へと戻ってきた。
日は少し傾いている、今は昼の3時くらいか。
南のバザーにタヌキのおじさんを探しに行く。
前に連絡先を交換した時に聞いた場所へと向かう。
タヌキのおじさんは南門の大通りから離れた、人通りの少ない場所で露天を開いていた。
「こんにちわー」
ポン造さんに挨拶する。
「ん? おお、兄さんたちか。何や、買い物か?」
「ええ、探してるものと売りたいものがあって」
まずは売りたいものから出していく。
スマートフォンのような機械に空き瓶を大量にだ。
「これはまた・・、仰山持ってきたなぁ」
「いくらになるにゃ?」
「この小っこい機械は状態良いし1000シリングで買うわ。
こっちのガラス瓶やけど1つ100シリングでどうや?」
それを聞いてミケちゃんを見るが首を振る。
「もっと上がりませんか?」
「んー、ちょっと厳しいなあ。でも、兄さんたちには助けてもらったし120シリングでどうや?」
ミケちゃんを見るが首を傾げて悩んでいた。
ポチ君が俺の裾を引く。
「アレ、もっと高く売れるよ。任せて?」
ポチ君が小声で囁く、それにうなづく。
それからポチ君とポン造さんで値段交渉が始まる。
ポチ君はお父さんがトレーダーだったので、この手の交渉は以外にも得意のようだ。
中央に近い町ならもっと高く売れる、他の町での値段を提示したところ、ポン造さんが折れて1本200シリングで買い取ってもらえることになった。
30本あったので5本だけ残して、残りは売ることにした。
ポチ君とポン造さんがやり合っている間、俺とミケちゃんは露天の品物を見ていく。
その中、変わったものを見つけた。
コンセントだ、だが普通のコンセントと違っていろんな穴が開いている。
さらにはメーターが付いていて、ただのコンセントではないようだ。
「すいません、コレはなんですか?」
ポチ君に言い負かされ、しょげているポン造さんに聞く。
「ああ、それは充電器やで。
スイッチの切り替えで放出と蓄電と切り替えられるんや」
それを聞いて、あることをひらめいた。
「コレ下さい。いくらですか?」
「それ高いで。5000シリングや」
ミケちゃんとポチ君に相談したところOKを貰えたので買う。
それからさらに、30mのロープ2つに大きな壺4つ、ズタ袋を3つ買った。
これらは明日のグール討伐で使うものだ。
壺は兵隊アリのお尻を加工したもののようで軽く丈夫そうだ。
代金は700シリングだった。
差し引き300シリングを手に入れ、宿へと戻る。
宿へと戻る途中、ミケちゃんが壺やズタ袋を指して聞いてくる。
「おにいさん、コレ何に使うにゃ?」
「明日のグールの群れの討伐で使うんだよ。
後は石鹸を買わなきゃ」
宿に着き、ロックさんを探す。
「こんにちわー、石鹸ありますか?」
「ん? この前買ったやつはもう無くなったのか?」
「いえ、アレはまだあるんですけど。他に使う用ができて。
できれば粉石鹸がいいんですけど、ありますか?」
「ああ、洗濯に使うのがあるな。
でかいから高いぞ、1箱300シリングだ」
代金を支払い、これで用意は整った。
後は明日に備えるか。