表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

59/169

第53話 はじめての遺跡探策

 旧シューストカ都市址としあと、チェルシーの町の北東に在る都市遺跡の名だ。

 元は内側に環状の高架道路を抱えた流通都市だったらしい。

 中心に近隣都市の経済と生活を支える巨大倉庫が建ち並び、そこから資材を運ぶのに環状の高架道路が発達した。

 最盛期には6車線、5階層というそれ自体が巨大な壁のような立体道路になった。

 だが大戦の折りに都市の7割が破壊される。

 環状道路もミサイルの直撃を受け崩れ落ち、都市の中心を囲むガレキの壁となってしまった。

 都市にも生き残った人たちは居たようだが、環状のガレキの壁を乗り越えることが出来ず、放射能の影響を受けグールへと変質してしまったのでは?と噂されている。

 旧シューストカ都市址はガレキに囲まれた中心部と、その外郭の部分の2つに分類される。

 中心部は、いまだ奥まで誰も到達していない未踏地域だ。

 俺たちが今回探検するのは、外郭のある程度探索されている地域だ。

 目的はクレジットの入手。

 できれば崩壊前の世界の情報もあるなら掘り出したいところだ。


 片道6車線もある大きな道路にリアカーを引いて行く。

 ひび割れたアスファルトを越えるたびにガタッ、ガタッと音が鳴り、それがグール共を引き付けないかと緊張する。

 ミケちゃんとポチ君もリアカーの上でハンドガン(グロック17)を構え、周りを警戒している。


 日はまだ昇り始めたところで頂点まではまだ遠い。

 日差しは柔らかく、緩やかな風の流れる穏やかな良い日だ。

 そんな心地よい温かさを肌で感じ取れるのが俺たちしか居ない、この広い大通りでだ。

 周りは静けさに満ちており、建物のほとんどは崩れ落ちている。

 天気が良く、遠くまで見通しがきくから良くわかる。

 この都市は死んでいる。

 それに何故か物悲しさを感じた。


 辺りを警戒しながら慎重に進み、ようやく入り口の潰れてないビルを発見した。

 これまで通りを歩いていてグールにはまだ遭遇していないが、中には居るかも知れない。

 リアカーを置き、物音を立てないように慎重に入り口に近づく。

 頭にライトを着けて中を覗き込むがグールの姿は見えない。

 銃を片手に、俺を先頭にして中へと入っていく。

 入ってすぐ100畳ほどの広間に出る。

 入ってすぐに見えるのは受付だ。

 受付の奥には階段が見え、その奥に続く通路に左右にも通路見える。

 とりあえず、受け付けのカウンターの後ろを慎重に探ってみるがグールが隠れてたりはしなかった。

 この玄関口の広間は安全そうだな、ほっと息を吐く。


「何か使えるものは無いかな?」

 受付を見るがとっくに漁られた後の様で何も無い。


「おにいさん、次はどうするにゃ?」

 ミケちゃんが中腰の姿勢で周りに気を張りながら聞く。


「んー、どうしよう。階段を上るか、左右、奥の通路に行ってみるか?」


「リーダー、階段の上からは何か物音がするよ」

 ポチ君が階段を上目遣いに睨みながら言う。


「階段は危険か。ポチ君、よく教えてくれた」

 ポチ君の頭を撫でる。


 とりあえず左の通路から見ていくことにした。

 通路には奥に向かって4つのドアが、左右に2つずつ付いている。

 手前の開けっ放しのドアから覗き見るが・・


「見事に荒らされた後みたいだな」

 机や棚はひっくり返され、カラになっていた。

 それでも何か使えるものは無いかと探るが……、無さそうだ。

 諦めて他の部屋を見に行くかと考えた時。


「にゃ? あ、財布にゃ」

 ミケちゃんが財布を拾った。


「お、ミケちゃんでかした。中身はどう?」


「ちょっと待ってにゃー♪ ・・お金入って無いにゃ。」

 ミケちゃんが拾った財布は、お金は抜き取られた後でカードが数枚残ってるだけだった。


「そっかー。まぁ、とりあえず次行こう」


 手前にあるもう一つの部屋も探ってみるが収穫は無かった。

 町から近い位置にあるこのビルはとっくに探索された後なのかもな。

 残すは奥の二部屋か。

 奥へと近づこうとするがポチ君から警告が入る。


「奥から変な臭いがするよう」

「あちきも何か臭いと思うにゃ」


 二人が言うのだから、何かあるのは確かだろう。

 マグナムリボルバー(M686)をお守りに握り、奥のドアを開く。

 この部屋も荒らされた後のようで机や棚がひっくり返されている。

 机の後ろに焼け爛れたような、茶色いミイラが寝転がっている。

 思わずそのミイラを凝視してしまう。

 その際に頭部のライトがミイラの顔に当たる。


「・・ぅごっ、・・うぃー?」


 ミイラが眩しそうにその目を開ける。

 っ!、目が合い背筋に悪寒が走る!

 ミケちゃんとポチ君もしっぽをピンと立てて毛を逆立たせている。

 ミイラ、いやグールは眠りを邪魔されてご機嫌斜めの様だ。

 こちらを見る視線に剣呑なものがある。

 舌舐めずりをしながら立ち上がろうとしているところを見ると、こちらをエサだとでも思ってそうだな。

 心を落ち着かせる。

 目の前にあるのはただの敵。

 立ち上がるのをただ見守るつもりは無い。


 レーザーサイトをグールの頭に合わせる。

 ダンッ!という音と共に撃ち放たれたマグナム弾がグールの頭を打ち砕く!

 眉間の骨を砕きながら入り込んだマグナム弾が、後頭部をバラバラに砕きながら抜けていく。

 水をパンパンになるまで入れた水風船が破裂したかの様に、その黒い血を撒き散らしてグールが倒れる。

 奥にまだ居るか!?と視線を向けたところ、今度は後ろからドンッ!と何かを叩く音がする。


「おにいさん!」

 ミケちゃんが呼ぶ先を見れば、通路の奥のドアのもう一つから、ドアを壊しながらグールが出てきたところだった。

 グールがミケちゃんたちに飛びかかろうとする。

 慌てて、間に入る。


 ドンッ!

 肩をおもいっきし殴られる。


 ・・痛ぇぇ!

 木製のバットで叩かれたような痛さだ。

 コイツ! 細い体をしてる割りにやたら力が強い。

 肩の辺りはプレートが入って無いから直にダメージが入ってくる。


 ギァァ!と叫びながら腕を振り回してくる!

 なんとか腕のプレートで受けるようにして防御するが、反撃する間が無い。

 ミケちゃんたちも俺が近いために撃てないようだ。

 なんとか離さなければ。

 意を決して、肩からタックルを決める。

 カウンターで頭に一発もらったが・・、なんとか吹き飛ばせたようだ。

 頭に受けた衝撃でおもわず膝をつく、マズイと思い立ち上がろうとするが眩暈がして動けない。

 目は涙でにじみ、視界もままならない。

 完全に死に体だ・・、焦る気持ちで早く回復しろと念じる中、パシュ!パシュッ!と音が聞こえた。


 二人がグールにトドメを刺してくれたようだ。

 まだ視界が揺れるがなんとか立ち上がる。


「おにいさん! 大丈夫かにゃ?」


「・・うん、なんとか?」


「うわ! やばいよう! 上の方で何か走り回ってる音がするよう・・」

 ポチ君の言葉に俺とミケちゃんが硬直する!


「に、逃げよう!」

 慌てて入り口に向かって走り出す。

 受付の広間まで走って戻るが、階段からは次々とグールたちが降りてきているところだった。

 グールの集団が俺たちを見つけて歓喜の声か威嚇か、ギィィ!ギィィ!と鳴いている。

 そして俺たちを追ってくる。


 俺たちも入り口に向かって駆け出すが、存外にグールが早い。

 まだ頭のふらつく俺へと迫ってくる!

 俺に掴みかかろうとするグールへとマグナムリボルバーを撃ち込んでいくがすぐに弾切れだ。

 銃弾の止んだところに飛び掛ってきたグールにおもわず身を固めるが。


「にゃー!!」

 ミケちゃんが寸でのところで硬鞭で叩き落してくれた。

 ミケちゃんも怖かったのか、涙目だ。


 ミケちゃんに手を引かれながら駆けて行く。

 入り口を出ても、まだグールの群れは追ってくる。

 走ってるうちに少しだがふらつきも収まった。

 このまま都市遺跡の外まで逃げ込むか?と考えていたところグールの追撃が止む。

 走りながら後ろを振り返ると、ビルの近くに残したリアカーにグール共が群がっていた。

 バックパックは背負い込んだが、道中で手に入れたアリの収穫品はリアカーに積んだままだ。

 そのままグールが見えなくなるまで逃げ続ける。



 1時間ほどして警戒しながらリアカーを取りに戻ったところ、グールの姿はもう無く。

 リアカーの荷物もアリの顎以外、蜜玉を全て持ってかれていた。



環状の高架道路については東京の山手線が巨大な高速道路になったイメージです。

首都高でもOK。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング よければお願いします。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ