第50話 講習修了
講習を終えた帰り道、アリの群れに襲われてるタヌキのおじさんを助け、一緒に町へと帰る。
ミケちゃんとポチ君も、ガイドのマリナさんとこの講習で親しくなり、手を繋いで帰るようだ。
マリナさんもミケちゃんとポチ君と手を繋いでニコニコだ。
俺とタヌキのおじさんはその横をただ黙って歩く。
「それにしてもミケちゃんとポチ君もこんなに小さいのに強いですね。」
マリナさんの身長は180cmぐらい、ミケちゃんたちは140cmぐらいでミケちゃんたちからみたら頭二つ分の身長差がある。
「あちきは勇者だからアリ程度には負けないにゃ。」
ミケちゃんがしっぽを振りながらドヤ顔で言った。
「ふふ、すごいですね。」
「まあにゃ。姐さんもすごかったにゃ。あんな大きな武器を軽々と振り回してすごいにゃ。」
「わたしはほら、体が大きいから昔から力だけはあったんですよ。
その分、器用に武器を操るのは苦手なんだけど、ミケちゃんもポチ君も銃を外さずに次々と当てるからびっくりしたよ。」
「毎日特訓してるからにゃ。アメーバをバンバン撃ってるにゃ。」
「ふわあ、すごい練習法だね。銃弾って高いんでしょ?
それじゃ利益が出ないんじゃ?」
「そこらへんはおにいさんがどうにかするにゃ。」
ミケちゃんがこちらに話を振ってくる。
「まぁ、安い弾薬を使ってますから。」
実際にはSHOPアプリ製の弾薬だが、それを言うわけにはいかない。
「そうなんですか。あの、さっきの救助料なんですが本当に人数分けでいいんですか?
弾薬の費用が掛かる分、そちらが損をしてしまうと思うんですけど。」
救助料は3200シリングだったがそれを参加した4人で均等に分けたのだ。
「ええ、構いませんよ。マリナさんには兵隊アリを2体相手取ってもらいましたし。
それに俺たちは勉強不足で救助料の事とか知りませんでしたから。
マリナさんに交渉してもらえて助かりましたから。」
「そうですか、それではありがたく戴こうと思います。
それにしても3人とも銃を持ってるなんてすごいですね。
私も友達と3人で組んでますけど、持ってるのは1人だけで高いから滅多には使わないようにしてて。」
「いや、俺たちも利益を出したい時はなるべく使わないようにしますよ。
ただ、最近銃を手に入れたばっかしで、こういうのは使わないと覚えられないから積極的に使ってるんですよ。」
「そうなんですか。確かに使わないと覚えられないですよね。
私なんかは不器用だからコレしか使えないですけど。」
笑いながら、そう言ってマリナさんは背負ったハルバードを示す。
俺からしたらハルバード一本でDランクまで上がった方がすごいと思うんだが。
「それにしても、あんなアリの倒し方は初めて見ました。
アリって飛び越えたら隙だらけなんですね。」
俺が兵隊アリをジャンプでかわしてからボコボコにしたことだ。
「あ! あれ、おもしろそうだったにゃ。今度あちきもやるにゃ。」
「とっさにやったけど上手い具合にハマッたね。
後ろに回れば反撃もこずに、殴り放題だから結構簡単に狩れるね。」
「私もマネしてみようかな、ハルバードを地面に引っ掛けるようにして飛べばできるかな?」
そんなことを話してるうちに町の北門へと着いた。
タヌキのおじさんとはここでお別れだ。
「にいさんたち世話になったな。わてはしばらくこの町に滞在するから、用があったら南のバザーにまで来てな。
スクラップやクレジットの買取なんかは、このポン造に頼むでえ。」
「ええ、こちらこそ。戦車バザーやクレジットの話を聞きたいので、後でお邪魔してもいいですか?」
「ええで、待ってるわ。ほな。」
タヌキのおじさんは大きな荷物を背負って、おっちらと歩きながら南へと去っていく。
「それじゃ、私たちもギルドへと行きましょうか。」
マリナさん先導の元、ギルドへと戻ってきた。
「おかえりなさーい。どうだった?」
ギルドに入ってすぐにおかまさん出迎えを受ける。
「おつかれさまです。3人とも無事講習は終了しましたよ。
帰り道にアクシデントはありましたけど、それも問題なく切り抜けたので。」
「アクシデント? 後で聞かせてね。それじゃ3人ともハンター証を出して、修了印を押してくるわ。」
俺たちのハンター証を渡す、おかまさんはそれを受け取ると奥でガチャコン!と機械で押し印をしてるようだ。
「それじゃ、ここで講習は終了です。3人とも頑張りましたね。
また、お仕事が合いましたらよろしくおねがいしますね。」
「ええ、こちらこそお世話になりました。
機会が合えばまたよろしくおねがいします。」
「姐さん、世話になったにゃ。宿はどこにゃ?
今度遊びに行くにゃ。」
「この近くのロックモーテルの4階ですよ。」
「あちきたちも同じところにゃ。後で遊びに行くにゃ。」
横耳に聞けば女の子3人で個室を借りてるらしい。
俺が訪ねに行くわけにはいかないな、行っても気まずくて死にそうだろうし。
「僕もー。」
そうかポチ君も行くのか、俺は1人で留守番か。
「はい、3人ともできたわよ。」
おかまさんが修了印を押したハンター証を持ってきてくれた。
修了印は四角の刻印を押しただけのシンプルなものだ。
「ありがとうございます。そうだ、戦車バザーのことで聞きたいんですけど。」
「ああ、そういえばそろそろ来るわね。来週あたりかしら。」
「参加するのに何か要る物とかありますか?」
「特に無いわー。でもロボットの商人との交渉は基本クレジットよ。
シリングは使えないからね。」
「ええ、そうらしいですね。クレジットは都市遺跡に落ちてるんでしたっけ。」
「そうよー。初心者講習を終えたからと言って、いきなり遺跡址に入るのは感心しないわよ。」
「えっと・・、まぁ、そこらへんは事前に調べていけそうだったらってことで。」
「ふぅ、行くのなら事前に相談しなさい。」
おかまさんが困ったわねという感じでため息を吐く。
ガイドをしてくれたマリナさんと別れる。
倒したアリの素材はそれぞれの倒した数で分配した。
半分ほどはマリナさんが倒したもので、俺たちが手に入れたのは働きアリ15匹、兵隊アリが2匹だ。
兵隊アリはマリナさんが3匹トドメを刺したのだが、ポチ君がサポートした分1匹譲ってもらった。
アリの素材は蜜玉がほとんどで、兵隊アリの顎と胸の甲殻が2匹分あるだけだ。
ギルドで顎だけ買い取ってもらう。
1つ50シリングで100シリングだ。
おかまさんに礼とアリの蜜玉を1つ渡し、ギルドを出る。
蜜玉を渡すとずいぶん喜んでいた、女の子ってことか。
次はタヌキのおじさんに会いに行きたいところだが。
日はまっすぐ頂点に達し、お昼だ。
荒野をずっと歩きっぱなしでお腹もへった。
「おにいさん、お腹へったにゃー。」
「僕もー。」
二人からご飯の催促だ。
「そうだね、ネザーさんの所行こうか。」
「そうだにゃ。蜜玉もネザー姐さんに渡したいにゃ。」
「そうだねー。」
北門の市場へと向かう。
昼時とあって大通りは足の踏み場も無いほどに混み合っている。
はぐれないように手を繋いで移動する。
ミケちゃんとポチ君も、えへへと微笑った。
俺もだ。
うさぎのおばさんの屋台へとやって来た。
そこで見知った顔に合う。
「お、にいさんもお昼か。一緒に食べようや。」
タヌキのおじさん、ポン造さんだ。
戦車バザーのことやクレジットのことについて聞きたかったし、ちょうどいい。
お昼をご一緒させてもらうことにした。
明日は休みます。




