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第48話 初心者講習

 日は大分傾き、もうすぐ夕方だ。

 ちょっと早いが夕食にした。

 北門のいつものうさぎのおばさんの屋台へとやって来る。


「「こんばんわー」」

「ネザー姐さん、こんばんわにゃー。」


「はい、いらっしゃい。そこ、空いてるよ。」


 いつもの様にカウンターを勧められる。


「教えられた教会に行ってきましたよ。」


「そうかい、神父さんは良い人だったろう。」


「ええ、そうですね。」


「スラムやあたしみたいな他所から来た連中はあそこの世話になってるからね。」


「ネザーさんも教会に入ってるんですか?」


「しっ! 壁の中でそんなこと言っちゃいけないよ。あそこは政府に目を付けられてるからね。

 まぁ、この町はあれにも寛容だけどね。」

 ネザーさんは口元に指を当てる。

 表情は変わらないがその長い耳は左右を向き、周りを探っている。


「すいません。」


「知らないならしょうがないさ。それと、あたしはあそこには入ってないよ。

 入ってたら壁の中で商売できないからね。」


「え!? そうなんですか。入ると結構制限が出来るんですか?」


「まぁ、表立っては町中に入るのも難しくなるだろうね。」

 神父さんも入れないと言ってたが一般の会員も入れないレベルか、厳しすぎだろ。


「ええ・・、そういうのは先に言ってくださいよー。」


「あはは、すまないねぇ。でも、あんたには紹介しておいた方が良いと思ったんだよ。

 あそこにはあたしの故郷の村も世話になってるからね。ミケたちとこれからもハンターを続けるなら、いずれ関わることになるだろうからね。

 あそこは辺境の顔役だからさ。」


「辺境の顔役?」


「まぁ、いつか辺境まで行くならわかるさ。」


 これ以上は答えてくれなさそうだ。

 食事を終え、夜食用の串焼きを包んでもらいギルドへと向かう。

 訓練だ。

 腕立て300回、スクワット300回、重りを左右に振る腰の運動に懸垂を100回に400mダッシュ15本のいつものメニューをこなす。

 初めてこの馬鹿げた訓練をした時はバテて動けなくなったものだが、今日はまだ余裕がある。

 大分鍛えられてきたみたいだ。

 今日はミケちゃんも真剣に訓練をしている。

 素振りをしていたと思ってたら、今度は銃を構える訓練をしている。

 ポチ君は・・、駐車場の横でバテていた。

 バテて倒れてるポチ君を背負って宿へと帰る。

 シャワーを浴び、みんなで夜食を食べて早々に寝た。



 窓から柔らかな朝の日差しが入ってくる。

 今日は初心者講習の日だ。

 しっかりと体をほぐしておくか、背を伸ばし眠気を払う。

 それと昨日は9mmのハンドロード弾を買ったからな。

 荒野で実際に撃ってみて具合を確かめてみるか。

 ミケちゃんたちのハンドガン(グロック17)の予備弾倉をハンドロード弾に詰め替える。

 そして、朝のステータスチェックだ。


 ステータス


 Name  サトシ

 Age   20


 Hp  100

 Sp  100


 Str   195.0 (+5.0) 

 Vit   160.0 (+4.0)  

 Int   100.0 (+2.0) 

 Agi   130.0 (+3.0)

 Cap   4.0  (+0.2)


 預金    191ルーブル  (-176) 

 所持金  5505シリング  (-1185)


 筋トレの成果は出てるな。

 Intも知識を得たからかついに100になった。

 正直これでやっとこの世界の一般常識を知っているってレベルなんじゃないかと思うけど。

 それとCap値がやっと4まで上がった。

 これで常に4つのアーティファクトを着けていられる。

 オブシディアン・タールの暴走も含めれば5つだな。


「・・おはようにゃー。」

 ミケちゃんが寝ぼけ眼で起きてきた。


「おはようございますー・・。」

 ポチ君も目を擦りながら起きてくる。

 ん、寝ぐせがついてるな。

 ポチ君の寝ぐせを手グシで直す。


「あー! ポチだけずるいにゃー。あちきにもやるにゃー。」

 ポチ君よりも毛の短いミケちゃんに寝ぐせなどは無いのだが、とりあえず撫でて直す振りをする。


「ミケちゃんは今日も毛色がきれいだねー。」

 短毛種の三毛猫の亜人のミケちゃんの毛は今日もツヤツヤだ。


「当然にゃ、女の子はいつも毛の手入れは欠かさないものにゃ。」

 ミケちゃんの毛の手入れをしているとポチ君が隣に座った。


「次、ぼくー。」

 朝の毛づくろいはこれから日課となった。


 身支度を整え、ネザーさんの屋台で朝食を済まし、ギルドへと向かう。

 いつものおかまさんの受付へと向かうが今日は先客が居るようだ。

 後ろに並ぶことにする。


「あら、いいとこに来たわねー。マリナちゃん、この子たちが今日連れて行く子たちよう。」

 マリナと呼ばれた女性が振り返る。


 青髪でとても背の高い女性だ、180cmを越えてるか?

 手にはその背に負けないほどの長さの斧槍、ハルバードを持っている。

 ハルバードは斧槍の名の通り、斧と槍を合体させた武器だ。

 斧も槍も、刃の厚みが1cmほどある。

 ロングソードや刀の刃の厚みが6mmぐらいだと聞けば、その太さがわかると思う。

 頑丈で重そうだ。

 俺も筋トレで力を付けたがさすがに、こんなに重そうな武器を振り回せる自信は無い。

 目元のやわらかい優しそうな女性だが、こんなのを振り回せるのだろうか?


 ゲシッ!


「なに見つめ合ってるにゃ!?」

 ミケちゃんからの突込みが入った。


「う! す、すいません。今日ガイドをしてもらうパーティ、ネコと弾丸のサトシです。」

「ミケにゃ。」

「ポチです。」


「こんにちわ。Dランクハンターのマリナです。今日はよろしくおねがいしますね。」


「こちらこそよろしくおねがいします。」

「よろしくにゃ。」

「よろしくおねがいします。」


「それじゃ、挨拶も終わったみたいだしちゃっちゃと行ってきなさーい。

 講習なんてすぐ終わるんだから。終わったらここに顔出すのよう?

 ハンター証に修了印押すからね。」


「わかりました。」


「それじゃ、皆さん行きましょうか。ついて来てください。」



 マリナさんについて行って、北門から荒野へと出る。

 初心者講習はアリを2種倒すことを目的とする。

 アリの出る地域を目指して北へと歩いていく。


「マリナ姐さん、北にアリの巣があるのかにゃ?」


「ええ、そうですよ。と言っても巣までは行かないですけど。

 手前でアリを見つけて、倒したらお終いですよー。」


「なんだ簡単にゃ。あちきの剣捌きを見せてやるにゃ。」

 ミケちゃんが硬鞭こうべんを抜き、振り回す。


「み、ミケちゃん、振り回しちゃ危ないよ。」


「おっと、すまんにゃ。」

 ミケちゃんが舌を出して、テヘッと笑う。


 クスクス・・


「ふふ、皆さん仲がよろしいのですね。」

 マリナさんに笑われてしまった。


「もちろんにゃ! あちきらは無敵で最強で仲良しにゃ!」

「だねー。」

 ミケちゃんとポチ君がしっぽを振りながら応える。


「ふふ、今日は皆さんとご一緒できて良かったです。

 私1人だとなかなか良い仕事がありませんから。」


「いつも1人なのですか?」


「いえ、友達とパーティを組んでいるのですけどこの間、仕事でドジを踏んで友達二人がケガをしちゃって。

 だからその分、私が稼がないといけないんですけど、そんな時にエリザベートさんに皆さんがガイドを募集していることを教えてもらって。」


「エリザベート?」


「受付のお姉さん?の事ですよ。」

 エリザベートって名前だったのか。


「それで、ガイドは報酬が良いんですけど相手が男の人たちだと、私1人だと心細いんですけど。

 皆さんで良かったです。」


「そうなんですか。」


「ちなみにガイドっていくら貰えるんだにゃ?」


「みなさんが払ったガイド料の7割も貰えるんですよー。

 これで今月の宿代もなんとかなります。」


 割りの良いガイドの仕事についてミケちゃんが聞いていくが。

 ガイドはDランク以上じゃないとできないそうだ。

 Dランクになったら、あちきらもやるにゃ!とミケちゃんは意気込んでいた。

 そんなことを話しているうちに遠くに動く黒い点を見つけた。


「あれ、多分アリですね。近寄ってみましょう。」

 マリナさんを先頭に進んでいく。


 働きアリの集団だ、10匹いる。

 巣が近いのか、数が多いな。


「それじゃ皆さん、戦う準備をしてくださいね。その前にちょっと数を減らしていきますね。」

 そう言ってマリナさんがアリの集団に向かって駆け寄っていく。

 アリもマリナさんに気が付き、噛み付こうと走り寄ってくるが。


「ハァッ!!」

 気合一線、体ごと旋回するハルバードの振り回しにアリが次々とバラバラに砕かれていく。

 あっという間に残り3匹になった。


「それじゃ皆さん、1人一匹ずつおねがいします。」


「やっとあちきの出番にゃ! 行くにゃー!」

 呼びかけを聞くや否や、ミケちゃんが駆け込んでいく。


「ミケちゃん待ってー。」

 ポチ君もそれについていくが。


「ポチ君! ハンドガンを使って。予備にハンドロード弾が入ってるから、そっちの方ね。」

 せっかくだ、ハンドロード弾の試し撃ちもやらないと。


「はーい!」

 ポチ君が元気良く返す。


 さて、俺もやるか。

 ハンマーを抜きながら、俺も駆け寄っていく。

 早々に仲間が半分以上やられて右往左往しているアリの一匹に目を付け、目前にまで駆け寄る。

 アリがもっと大きければ駆け寄る力も使って打ち込むのだが、アリの頭の高さは40cmほど。

 足元のアリを打ち抜くには上から振り下ろすしかない。

 ハンマーは取り回しが遅いから、一度も外せない。

 間合いギリギリで上段で待ち構える。

 アリがギィー!っと威嚇しながら間合いに入ったところで一歩踏み込み、素早く振り下ろす!

 簡単に頭の殻を貫通し、地面へと突き刺さる。

 ミケちゃんたちはと見れば、ミケちゃんたちも早々に仕留めたようだ。


「皆さん強いですねえ。これで講習は半分終わりです。

 残りは・・アレですね。ちょっと見ててくださいね。」

 マリナさんが指差すほうには、働きアリの鳴き声を聞きつけたのか二回り(ふたまわり)ほど大きいアリがこちらに駆け込んできていた。



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