第46話 排水構内での狩り
遅れてすいません。
土手にアメーバ穴を2つ新たに作った。
その際に大量に湧き出したアメーバを背負ってギルドに買い取りへと向かう。
「そういえばおにいさん、穴の中に鉄の棒が落ちてたけど、アレ子供たちにあげちゃっても良かったかにゃ?」
ギルドへと向かう際中にミケちゃんが聞いてくる。
「鉄の棒って鉄筋のこと? 曲がってたしいいよ。」
「アレ、鍛冶屋に持っていって鍛えなおせば、あちきの勇者の剣になるにゃ。」
「ああ、なるほど。」
ハンター業が成り立つこの野蛮な世界において、子供たちの武器が増えることは良いことだろう。
そんなことを話してるうちにギルドへと着いた。
背負っていたアメーバ42体を買い取ってもらい宿で身奇麗にした後、いつものうさぎのおばさんの屋台へと向かう。
土手での出来事をうさぎのおばさんに話したら、西のチンピラ共について憤っており。
土手に新しく作ったアメーバ穴については感謝された。
食事を終え、宿に戻ってくるが穴掘りで存外に疲れたので今日の訓練は中止にした。
ミケちゃんたちも相応に疲れてたようだ。
ベッドに横になるなりすぐに寝息が聞こえてくる。
俺も弾倉に弾の詰め込みを終えたら、すぐ寝ることにした。
次の朝、日課の朝のステータスチェックだ。
ステータス
Name サトシ
Age 20
Hp 100
Sp 100
Str 190.0 (+3.0)
Vit 156.0 (+2.0)
Int 98.0 (+1.0)
Agi 127.0
Cap 3.8 (+0.2)
預金 367ルーブル (+94)
所持金 6690シリング (+1480)
昨日は結構疲れたと思ったんだがあんまし上がらなかったな。
それと昨日弾の詰め替えをして気づいたが予備の弾が大分無くなっていた。
弾倉は全て満タンにしてあるが予備が9mmが残り12発に.357マグナム弾が6発しかない。
両方とも50発ずつ買い足しておいた。
「ふわぁぁ・・。おにいさん、おはようにゃー。」
「んー・・、おはようございますー。」
二人とも起きてきた様だ。
身支度を整えて、朝の食事に向かう。
北門の市場へやって来た。
市場はこれから仕事に向かう前の労働者たちが食事を取って賑わっている。
いつものうさぎのおばさんの屋台に向かう。
「ネザー姐さん、おはようにゃー。」
「「おはようございまーす。」」
「おはよう、そこ座んな。」
いつもの指定席に座り、食事の注文をする。
朝は煮込み料理をやっていないので串焼きとパンをみんなで注文する。
ミケちゃんはネザーさんと親しい、二人で朝のおしゃべりをしている。
「そうそう、おにいさんに話があるんだよ。」
こちらにも話を振ってきた。
「なんですか?」
「おにいさんはスラムの子たちにも良くしてくれるだろう。それで教会の神父さんがおにいさんにお礼を言いたいってさ。」
「教会?」
「ああ、慈愛教っていう宗教があってね、スラムの子達を保護したりしていてね。そこのポチなんかも教会の世話になってたのさ。」
「うん、僕も教会で寝泊りさせてもらってたんだよう。」
「それで神父さんが一度会いたいってね、今日は時間はあるかい?」
「うーん、午前中は仕事する予定なので午後なら。二人もそれでいい?」
「あちきも問題ないにゃ。」
「僕も大丈夫だよう。」
二人もしっぽを振りながら、返事を返してきた。
「それじゃ午後で。」
「わかったよ、向こうにはそう伝えておくよ。場所はポチが知ってるから。」
「うん、案内するよ。」
食事を終え、ネザーさんに礼を言い屋台を出る。
今日はいろいろやることが出来た。
まずはバザーだ。
アメーバ穴を増やしたのでその分の槍をスラムの子供たちに渡そうと思う。
バザーの鍛冶屋に寄って鉄パイプ槍を2本注文してから、東のスラム近くにある排水溝に向かう。
「じゃ、今日はここで射撃の練習をしようか。」
「アメーバ撃ち放題にゃ!」
「うん!」
スラム近くの排水溝に近づく、中に誰か先に入ってるか声を掛けてみるが返事は無い。
俺たちは頭にヘッドライトを着けて暗い排水溝の中へと入っていく。
「あいかわらず暗いにゃー。」
ミケちゃんは興味深げに排水溝の中を見渡す。
「暗いの怖いねぇ・・。」
ポチ君は俺の服の裾を掴みながら、恐る恐る着いてくる。
「二人とも、アメーバを見つけたら教えてね。石を投げて鳴き声を上げさせてから入り口まで戻るよ。」
「大湧き出しを起こすにゃ?」
「そうそう、射撃練習用に的はある程度欲しいから。弾はいっぱいあるから大丈夫だよ。」
「撃ち放題にゃ!」
ミケちゃんは撃ち放題の示唆に元気良く応える。
暗闇で見えないがしっぽも上がった気がした。
「ぼ、僕もがんばるよう。」
ポチ君は対照的に暗いのが苦手なのか意気消沈しているな。
見えないけどしっぽも垂れ下がってそうだ。
暗い中を進んでいく。
排水溝の中は少しドブ臭いがそれだけだ。
下水じゃないのか?
「ミケちゃん、ここって下水道じゃないの?」
「下水道って何にゃ?」
「あー、うんちとかトイレに流したのが通る水道のこと。」
「あー、そういうのは内壁の中に向いてるんじゃないかにゃ?」
「内壁の中に下水処理施設がある?」
「多分にゃ。そんなこと前に聞いたことあるにゃ。なんかアメーバ飼ってる施設があるとかなんとか?」
「スラムにもよくうんちを買い取りにバキュームカーが来るよ。」
「エサなんだ・・。」
そんなことを話してたところ、ミケちゃんがアメーバを見つけた。
早速、石を投げつける。
石を当てられたアメーバはぷるぷる震えたかと思ったら、ヴィィーッ!と鳴き始めた。
「お、鳴いたにゃ。」
アメーバは鳴き続ける、段々と奥からズリ・・、ズリ・・と這いずる音が聞こえてきた。
「来たみたいだね、入り口まで下がろう。」
「わかったにゃ。」
「うん。」
駆け足で入り口まで戻り、待ち構える。
後退してる間にもアメーバの這いずる音は増えていた。
入り口は幅4mで、そこから奥へ20mほどの直線がT字路の突き当りまで続いている。
遮蔽物も無しで迎え撃つにはちょうど良い。
懸念があるとすれば、真ん中に深さ50cmほどの排水路があることだ。
水の中を進むアメーバを打ち抜くには、二人のハンドガンではパワーが足りないかもしれない。
真ん中はマグナムリボルバーを持つ、俺が受け持つか。
「おにいさん! 来たにゃ。」
ミケちゃんは銃を構えて正面を睨みつける。
しっぽも体に纏わりつくように動きを止めている、集中モードだ。
「ポチ君も準備はいい?」
「うん! 大丈夫だよ。」
ポチ君も暗い排水溝から出てきて気が持ち直したか、ハキハキと応える。
「真ん中は俺がやるから、二人は左右のを好きに撃って。」
「わかったにゃ!」
「うん!」
右奥から次々とアメーバがやってくる。
暗闇を赤いレーザー光が核を探して舞い飛んでいく。
二人が20m先のアメーバを次々と撃ち抜くなか、俺は排水路の真ん中に立って待ちの姿勢だ。
水に入ったアメーバは視認しずらい。
5m手前に来て、ようやく見つけられた。
水面から核を覗かせる様にしてアメーバが泳いでくる。
ソフトボール大の青い核に向かって.357マグナム弾を撃ち込む!
ダンッ!という音が排水溝の中を反響していく。
アメーバも核を破裂させて排水路の中に沈んでいった。
次!と思って後ろに続くアメーバをポイントするが動きがおかしい?
水の中にいるアメーバがぷるぷる震えて戸惑っているように見える。
何故だ?
とりあえず次々と撃っていくと排水路の中にいたアメーバが側道へと上がっていく。
どうやら着弾のショックが排水路の水を通じて当たっていたようで、それを嫌がったようだ。
水の中を進んでくるアメーバがいなくなったので俺も側道に上がったアメーバを撃ち抜くことにした。
10分ほどでアメーバの湧きは途切れた。
そこから、さらに10分待ってみるがもう出て来ないようだ。
排水溝の中に落ちてるアメーバの死骸をかき集める。
全部で62体になった。
その場で弾倉の詰め替えとSHOPアプリでさらに9mm弾を50発買い取ってから、ギルドへと向かう。
西門のギルドへとやって来た。
買い取りカウンターにいたおかまさんに挨拶をする。
「こんにちわー。」
「あら、いらっしゃい。アメーバ?」
俺たちのバックパックから顔を覗かせているアメーバの山を見て言う。
「ええ、今日もおねがいします。」
「はい、はーい。それじゃ、そっちの台車に乗っけてね。」
買取はアメーバ1体100シリングで6200シリングだ。
3人で2000ずつ分けて、余りは食事代に当てる。
「そうそう、ガイドの募集見つかったわよ。日時は明日以降ならいいみたいだけど、いつにする?」
初心者講習のガイドのことだ。
これを受けておかないと遠くで狩る許可が出ない。
「明日ならいつでも大丈夫です。」
「それじゃ、明日の朝ここに来てくれる。ガイドのハンターを紹介するわ。」
「わかりました。」
おかまさんに礼を言い、ギルドを出る。
次はバザーだ、槍は用意できただろうか?
「こんにちわー。」
バンダナをした店主に挨拶をする。
「おう! いらっしゃい。注文の品、さっき出来たぜ。2000シリングな。」
アメーバの代金の余りが200シリングあったのでそれに足す形で3人で割り勘にする。
店主に礼を言って、東の川辺へと向かう。
東の川辺へとやって来た。
川辺では採取をしている子供たちがいる。
中には腰に曲がった鉄棒を差している子なんかもいた。
アメーバ穴で釣りをしている子たちも居るが、使ってるのは元々あった穴だけのようだ。
新しく出来た穴はおっさんたちしか使っていない。
槍が一本しかないから仕方ないな。
「おーい、槍持ってきたぞー。」
スラムの子たちに声を掛ける。
「こんにちわー、またもらってもいいんですか?」
妹を二人連れたヨウ君がそれに応える。
「ああ、ネズミの仕掛けは持ってきてないけど自分たちで作れるか?」
「ん、大丈夫。」
妹ちゃんの方が答えた。
「すいません、いろいろお世話になっちゃって。」
「いいよ。これぐらい。」
「そうにゃ。それよりも釣りを頑張っておまえたちもハンターになるにゃ。」
「うん。ありがとうね、ミケちゃん。」
「ミケちゃん、ありがとねー。」
「ねー。」
この子たちは出会ったときからそうだが、ちゃんとお礼を言える子たちだ。
ポチ君と同じで、それなりの教育を受けている気がする。
ちょっと聞いてみるか。
「君たちも教会のお世話になってたりするの?」
「そうですけど?」
「いやぁ、教会の神父さんが俺に話があるらしくて、それでちょっと興味あって。」
「ああ、神父様にハンターさんのこと話したんですよ。僕らのこと助けてくれる良い人だって。」
「そうなんだ。今日の午後に挨拶に行くんで、神父さんによろしく伝えてもらえるかな?」
「わかりました。伝えておきますね。」
2つ目の穴でアメーバ釣りをしているおっさんたちに遠くから手を振り。
スラムの子たちに挨拶をして、川辺を離れる。
北門のうさぎのおばさんの屋台で食事を取りながら時間を潰した後、ポチ君の案内で東のスラムの中にある教会を目指す。
神父さんの用は一体なんだろう?




