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第45話 穴掘り2

 土手に新しいアメーバ穴を掘ることにした。

 道具も揃えたし、ダニーさんも手伝ってくれるようだ。

 穴を掘るのは俺とダニーさんだけでなんとか出来るかな。

 ミケちゃんとポチ君にはアメーバ釣りをしているスラムの子供たちを見ててもらえる様頼んだ。


「わかったにゃ。あちきもアメーバ釣りしたかったし、ちょっとやってくるにゃ。」

「行ってくるねー。」


 ミケちゃんはアメーバ釣りの順番待ちの列に並び、ポチ君は穴の横で弓を持っていざという時に備えてるようだ。

 さて、こっちも進めるか。

 穴を掘る場所は、一つ目のアメーバ穴が開いた場所から50m離れた所にする。


「それじゃ、俺が穴掘っていくんでダニーさんは掘った土をどこかに捨ててきてもらえますか?」


「わかったんだなぁ。」

 ダニーさんは大きな袋を用意する、あれに詰めて捨ててくるようだ。


 さて、やるか。

 アーティファクトの編成をクリスタルエッグ - オブシディアン・タール - スパークトルマリンの通常編成に戻す。

 これで穴掘りで疲れることは無いだろう。

 念のため、掘る場所を意識してオブシディアン・タールで重さを吸い取っておくか。


 土手にスコップを突き刺す、刺さる時に土の抵抗を感じるが土を持ち上げるのに重さをまったく感じない。

 これは・・思ってたより楽だ。

 本来、スコップを刺すことよりも掘った土を放り投げるほうがよほど疲れるのだろうが、土が空気のように軽い。

 簡単にザクッ!ぽいっ!、ザクッ!ぽいっ!のリズムで掘り進めていく。

 途中、石粒の集まった重そうな砂利の層もあったが重さが無ければ土と変わらない、ポイッポイッと掘り抜く。

 あっという間にコンクリートの壁が出てくるところまで掘り進めてしまった。

 俺の横には積み上げられた土の山ができている。

 幅1.5mほどの穴を3mほど掘り進めたが、ここまでで10分も掛かってないんじゃないかな?


「うわ!にいさん掘るの早いんだなあ。」

 ダニーさんも驚いている。


「いやぁ力仕事は得意なもんで。」

 と、とぼけておく。

 アーティファクトのことを知られるわけにはいかないしな。


「俺はこれからコンクリの壁を壊すんで、ダニーさんは向こうにも穴を掘っていてもらえますか?」

 ダニーさんにスコップを渡す、土運びはアーティファクトを使える俺がやった方が早い。


「どこら辺に掘ればいいんだな?」


「ここから東に50m・・あ、えーっ・・と125フィート(50m)向こうにおねがいします。」


「んー、125歩向こうに歩いたぐらいでいいんだなあ?」


「はい、それで。」


 ダニーさんは次の穴を掘りに行った。

 さて、まずはこの土の山をどうにかするとするか。

 土を川に捨てるわけにはいかないので土手の反対側に捨てる。

 反対はスラム街からも離れ、草原だ。

 ここなら問題ないだろう。

 アーティファクトで重さを吸い取った土を獲物袋に詰めるだけ詰めて運んでいく。

 50往復もしたところで土の山はきれいに無くなった。

 結構な量だったな、重さで言えば5トンぐらいあったんじゃ。

 獲物袋いっぱいに詰めるとオブシディアン・タールを2個付けてやっと持ち上がったからな。

 掘るのは手を動かすだけでいいから簡単に終わるが、運ぶほうが大変か。

 普通は逆なんだろうけど。


 さ、次はコンクリの破壊だ。

 コンクリの壁に鍛造製の釘を打っていく。

 釘が折れたりしないかと心配だったが、杞憂のようだ。

 結構サクサク入っていく。

 釘が半ばまで入ったところでビシッ!と亀裂が走った。

 直径70cmの円になるように釘を打っていった。

 10角形で少し角ばっているが、ヒビとヒビが繋がって良い感じだ。

 後はこのヒビを広げるようにハンマーで叩いて崩していくんだろうが、もっと良い方法がある。

 川辺から60kgほどの岩を持ってきた。

 じゃあ、おもいっきしやるか!


 アーティファクト切り替え、オブシディアン・タール暴走


 岩を頭上に抱えて飛び上がる。

 高さ5mから眼下のコンクリート壁に向かって岩をぶん投げる!


 ドコンッ!!という硬質な音を立てぶち当たった。


 当たった箇所には蜘蛛の巣状に大きな亀裂が走っている。

 岩も少し欠けたかな。

 さらに2発投げたところで様子をみる。


 壁は全面的に亀裂が走り、崩れて向こうが見えてる所もある。

 試しにハンマーで叩いたところ、貫通し崩れた。

 丁寧にハンマーで崩し終えたところ、中から鉄筋が出てくる。

 鉄筋は縦横に30cm間隔ではしっているようだ。

 思ったよりも間隔が広いな、もっと細かくはしってるかと思ったが。

 少ないならその分、楽になる。

 見えてる鉄筋は縦横に3本ずつ。

 コンクリートの部分に沿って、鉄筋にタガネを使って切れ込みを入れていく。

 タガネは先が平らな刃になっている。

 鉄筋にタガネをまっすぐ当ててハンマーで叩けば、刃が食い込む。

 計12本の切れ込みを入れて、もう一回岩の出番だ。

 飛び上がり岩をおもいっきし放り投げる!


 ギィン!!という短い悲鳴を上げて鉄筋は奥へと吹っ飛んでいった。



「ふぅ・・、結構簡単だったな。」

 後は崩れたガレキを片付けるか、と穴に近づいたところ。

 奥からズリ・・ズリ・・、と何かが這いずる音がする。

 どうやら壁を壊す音を聞きつけてアメーバがやってきたようだな。

 ハンマーで応戦の準備だ。

 穴の大きさは直径70cmほど、アメーバが1体通るのでいっぱいの大きさだ。

 次々と出てくるアメーバをハンマーで叩いていく!

 穴を塞がないように、死んだアメーバはハンマーの裏のピックの部分で掻き出していく。

 奥が暗くて見えないのだが、結構な数が湧いたかな?

 まぁ、穴から出てくるところを叩くだけだから、どんだけ湧こうが問題ないがな。


「こっちの穴も出来たのかにゃ?」

 いつの間にか近づいてきていたミケちゃんが俺の背後から穴を覗き込む。


「うん、大体は。後はガレキを片付けるだけなんだけどアメーバが湧いちゃって。」


「それならあちきに任せるにゃ。」

 ミケちゃんは硬鞭こうべんを抜く。

 この場はミケちゃんに任せて、俺はダニーさんの方を手伝いに行った。



 この日は2つのアメーバ穴を作れた。

 スラムの子供たちも新しい穴を興味津々に見ている。

 中にはこちらに頭を下げてる子もいる。

 確かヨウ君だったか、手を上げて返礼を返す。

 穴を2つ作ったところで空は茜色に染まっている。

 ミケちゃんの方はと見れば、アメーバの山を作っていた。

 3つ目の穴にはアメーバが湧かなかったと思ったら、2つ目に集中していたか。

 土手にアメーバがうず高く積もっているが、誰も手を出さない。

 よしよし、スラムの子供たちもココのルールを守っているようだな。


「じゃ、ダニーさん。これで終わりにしようか。」


「だなぁ。疲れたんだなぁ、腕が棒だなぁ。」

 ずっと土掻きをしていたからな、疲れるだろう。

 俺もさすがに疲れた。

 スパークトルマリンのお陰で筋肉痛は無いとはいえ、貯め込んだエネルギーを使い切ったんだろう。

 腹が減ってふらふらする。

 ダニーさんも同じような状態だ、腹減った・・と言っている。

 俺が倒したアメーバが5体あったので、それをメシ代にしてくれと渡した。


「ありがたいんだなぁ。何か力仕事があったらまた呼んでほしいんだなぁ。」

 ダニーさんと笑顔で別れ、ミケちゃんたちと合流する。



「あ、おにいさん。見てにゃ! こんなに獲れたにゃ!」

 ミケちゃんがアメーバの山をぺしぺし叩く。

 積み上げられたアメーバの数は全部で42体もあった。


「おつかれさま、ずいぶん獲れたね。」


「引っ切り無しに出てきたにゃ。ま、あちきの敵じゃなかったけどにゃ。」

 ミケちゃんは鼻高々という感じであごをしゃくる。

 その姿が可愛かったので頭を撫でる。


「リーダーもおつかれさまです。これでアメーバ穴が2つ増えたんですよね。」

 ポチ君もしっぽを揺らしながらやってきた。


「ポチ君もおつかれさま。」

 ポチ君の頭も撫でる。


「いや、僕はミケちゃんの手伝いをしただけだから。」

 ポチ君は撫でられてニコニコしている。


「ポチは運び係りにゃ。あちきが倒したのを運ぶ係りにゃ。」


「それはそれで大変そうだけど、とりあえずギルドまで運ぼうか。」

 3人で手分けしてバックパックに仕舞い、スラムの子供たちに手を振って川辺を離れる。

 子供たちも手を振り返してくれた。

 アメーバ穴が3つになったから、これで獲物が釣れないということも減るだろう。

 スラムの子供たちの自活に繋がればいいが。



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