第44話 穴掘り
アメーバの大湧き出しに遭遇し、射撃練習がてら大量のアメーバを狩りとった。
アメーバを山盛りに背負ってギルドへと向かう。
アーティファクトを使ってるので重さはまったく無いし、大量の収穫にミケちゃんもポチ君もしっぽを揺らしながら運んだ。
ギルドへとやってきた。
ギルドの中は俺たち以外にハンターの姿は無く、空いている。
いつものおかまさんの受付に行く。
「こんにちわー。」
「あら、いらっしゃい。今日はたくさん抱えてるのね。」
おかまさんの視線が俺たちの背に向く。
「大湧き出しに遭遇したにゃ。全部やっつけたにゃ。」
ミケちゃんが胸を張って言う。
「あらあら、すごいのね。ふふ、それじゃあそこの台車に出してくれる。」
おかまさん指定の台車にアメーバを積み上げ、買取をしてもらう。
「全部で52体だから5200シリングね。それとポチ君も昇格よ、今新しいハンター証持ってくるから待ってて。」
ポチ君も俺たちと同じEランクになった。
ポチ君も有料の初心者講習を受けられるようになったのでそれについて話し合う。
「良いんじゃないかにゃ。お金もできたし、面倒はさっさと済ませるにゃ。」
「僕も戦闘は自信ないけど頑張ります。」
「それなら受けてみようか。」
「あらあら、何の話ー? はい、コレ新しいハンター証ね。無くしちゃダメよう。」
おかまさんがポチ君に紙製のハンター証と引き換えに銅製のハンター証を渡す。
「初心者講習を受けようって話をしてて、今回の報酬から天引きしてもらえますか?」
「あら、やっと受ける気になったの。わかったわ、差し引いて2200シリングを渡すわね。
ガイドのハンターの募集をするから、また明日来てくれる?」
「わかりました。」
報酬を700シリングずつ分けて、残りの100シリングは今日の夕飯に当てることにした。
おかまさんに礼を言ってギルドを出る。
空を見れば日は少し傾き始めた、昼の3時といったところか。
東の川辺にスラムの子供たちの様子を見に行く。
川辺にはもうチンピラの姿は見えない、横になっていた奴等も居ないがおっさんたちが連れてったのかな?
東の川辺はまたスラムの子供たちでごった返す場所へと戻ったようだ。
子供たちが川で採取をしているが、アメーバ穴の付近に集まった子達の様子がおかしい。
「おーい、おまえたちどうしたにゃー?」
ミケちゃんが子供たちに駆け寄り、声を掛ける。
「あ、ミケちゃんだー。ネズミの仕掛けがボロボロになっていたのー。」
そう言って子供たちがネズミの仕掛けを見せてくれるが所々穴が開いて、擦り切れている。
「あ、ホントにゃ。」
「ああ、あのチンピラ共。仕掛けごと攻撃したんだな。
外側の皮はもう使えそうに無いから、中の綿を取り出そう。新しい皮はあるから。」
バックパックからハゲネズミの皮と針と糸を取り出す。
綿を移し変えてる際中、ミケちゃんとポチ君が他にも困ったことが無いか聞き取りをしている。
話に上がるのは穴の順番待ちでケンカが起こったり、アメーバが出てこなくて稼げない時があったりするとの事だ。
やっぱし、穴が一つは問題か。
アメーバ穴を見てみる。
暗いのでライトを使って奥まで見てみるが、奥のほうにコンクリートが見える。
やはり排水溝の壁がなんらかの事故で崩れて、土手に露出してしまったんだな。
土手の下に排水溝が通ってるなら、他の場所に穴を開けても使えるかな?
「ミケちゃん、土手って勝手に穴掘っても大丈夫かな?」
「ん? いいんじゃないかにゃ? 穴掘っても誰も怒らないと思うにゃ。」
「そっか。んー、でも一応おかまさん所に聞きに入ってみるか。」
スラムの子供たちにバイバイをし、もう一度ギルドへと戻る。
受付におかまさんを見つけた。
「すいませーん。」
「あら、どうしたの? ガイドの募集はさっきしたばかりだからまだ決まってないわよ。」
「いえ、一つ尋ねたいことがありまして。勝手に土手に穴掘ってもいいのか聞きたくて。」
「どこの土手?」
「東のスラムの近くです。」
「ああ、そこならいいんじゃない? 町中だとまずいけど、壁の外は都市の管軸外だし。
穴なんか掘ってどうするの?」
おかまさんは手に頬を乗せ悩ましげだ。
「アメーバが1体ずつ出てくる様に誘導したくて。」
「ああ! なんか昨日スラムの子供たちがアメーバ持ってきたのよね。
穴がどうのこうの言ってたけど、それかしら?」
「ええ、簡単に1体ずつ釣りだすやり方があるんですよ。」
「アメーバの買取が増えるならギルドとしても文句は無いわぁ。
アレ、ガソリンの元になるし。」
「あ、それ聞きました。本当にガソリンになるんですか?」
「内壁の中の工場地帯にガソリンを作る施設があるのよ。実際に見たことは無いけどそうらしいわよ。
うちに配達されるガソリンも内壁の中からやってくるしね。そうそう、ガソリンが欲しくなったら言いなさい。裏庭で売ってるから。」
裏庭の駐車場にガソリンの給油所もあるそうだ。
とりあえず穴を掘っても問題無さそうなので、次に掘る方法を考えないとな。
コンクリートの壁を破らないといけないし、バザーの鍛冶屋の店主に相談してみるか。
西門のギルドから南門のバザーへと向かう。
バザーは今日も賑わっている。
昼過ぎの日差しと群がってる人たちの熱気もあって暑い。
カフェスタンドで3人分のジュースを買い、飲みながら鍛冶屋へと向かう。
「こんにちわー。」
「おう、いらっしゃい。今日は何を探してるんだ?」
「穴を掘る道具とコンクリートの壁を壊す道具とかありますか?」
「うん? 何をするんだ?」
バンダナをした店主に詳しく話す。
「穴を掘るのはスコップでいいとして、排水溝の壁を崩すには鍛造の太い釘をハンマーで打ち込めばいけるな。
ただ中に鉄筋が入ってるはずだからタガネで傷を付けた後、ハンマーで思いっきし叩けば折れると思うぞ。」
店主から勧められた道具を買う。
スコップと10本の釘にタガネ、タガネというのは石を削るノミのような形をした鉄製の道具だ。
全部で1500シリングだった。
3人で割り勘したのだが。
「今日の稼ぎが大体無くなったにゃ・・」
ミケちゃんは肩を落とし、しっぽも垂れ下がってる。
ポチ君はあまり気にしてないみたいだ、あの川辺には友達も多そうだしな。
「まぁまぁ、明日もアメーバを大量に狩り取ればまた稼げるから。」
「明日も撃ち放題にゃ?」
「うん、しばらくは練習も兼ねて撃ち放題でいいよ。」
「それなら良いにゃ。」
ミケちゃんのしっぽは少し上がり、揺れてくれた。
道具も手に入れたし、土手に戻るか。
店主に礼を言い、東の川辺へと移動する。
土手ではスラムの子供たちがアメーバ釣りを再開している。
その近くでは3人組みのおっさんの1人、体の大きいダニーさんが見守っている。
「こんにちわー、もう動いても大丈夫なんですか。」
「おぉにいさん、世話になったんだな。俺は人一倍丈夫だから大したことないんだな。
ここに寝転がってたチンピラ共も向こうまで運んだんだな。」
「助かります。」
「にいさんは何してるんだな?」
ダニーさんに土手に穴を掘ることを説明する。
どうやらダニーさんも手伝ってくれるようだ。
手伝い賃はアメーバ穴を自分たちも使って良いか?との事だが自分たちで掘る分にはいいだろう。
ミケちゃんとポチ君には子供たちのアメーバ釣りを見ててもらうことにした。
さて、掘るか。
明日は休みます。
土手編、今日中には終わらせたかったのになんか長くなった。
次の更新には終わらせます。