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第43話 射撃練習

 西のチンピラ共を追いやり、アジトも潰してきた帰り道にアメーバの大湧き出し(おおわきだし)に遭遇した。

 湧き出したのは町中の排水溝でアメーバの数は50体ほど。

 こちらの武器は銃が3丁。

 銃1丁で30体を相手にした時に比べればなんでもない。


「二人とも、銃の扱い方は覚えてるよね? 全弾撃ちきってもいいからアレをやっつけよう。」


「え? ホントに全部撃っちゃってもいいにゃ?」

 ミケちゃんがしっぽの先をくねくねさせながら再度伺ってくる。


 ミケちゃんが疑問に思うのも当然だ。

 この世界では銃弾は高級品だ、9mm弾の正規品で200シリングもする。

 二人に渡したグロック17は予備弾倉も含めて34発入っている。

 単純に6800シリング分撃ちきってもいい、と言ってるのだから。


「本当にいいんですか?」

 ポチ君も聞いてくる。


「うん、午前中は弾倉を抜いて、撃つ振りだけしてたからね。

 今度は実際に撃ってみようか。大丈夫、赤字にはならないから。」


 アメーバは1体2ルーブル、銃弾1発分だ。

 素材が100シリングで売れる分、1発で仕留めれば100シリングの得になる。

 射撃練習相手にはちょうど良い。


「にゃー! やるにゃ、やるにゃ! あちきの腕前を見せてやるにゃ!」

 ミケちゃんは早速銃を抜き、やる気満々だ。

 しっぽも上がって、左右に振れている。

 機嫌は直ったみたいだな。



 アメーバを倒すのはいいが、獲物の横取りだの後になって言われたら困る。

 こちらに逃げてくる5人組のハンターたちに了解を取ったほうがいいだろう。


「おーい! 後ろのアメーバもらってもいいかぁー!」

 ハンターたちに声を掛ける。


「はぁ?! 何言ってんだ?! 好きにしろー!」

「無茶すんなよぉー!」

 ハンターたちが息せき切りながら答えてきた。

 了解は取れたようだ。

 じゃ、やるか。


 逃げるハンターたちと入れ違いになるように俺たちも土手の下に降りる。

 50mほど先にはアメーバの群れ。

 俺を真ん中に横一列に距離を取って並ぶ。

 足元の石を拾って、3m先に投げ置く。


「二人ともいい? あの石の所までアメーバが来たら撃つのを止めて、すぐに30m後退ね。」


「わかったにゃ!」

「うん!」


 二人とも銃を抜き、わくわくした表情でしっぽを振っている。

 銃を撃つのって何でこんなにわくわくするんだろう?

 俺もリボルバー(M686)を構えるだけで胸がどきどきして、高揚してしまう。

 リボルバーのロックを外し、レーザーサイトを起動する。

 50m先のアメーバの群れにレーザーを当てるが、弱点となる核が点にしか見えない。

 核の大きさはソフトボール程度、レーザーサイトがあるとは言え、アレに正確に当てるには15m手前まで引きつけないと駄目そうだ。

 二人にも近くまで引きつけてから撃つと声を掛け、じっと待つ。


 アメーバの群れが徐々に近づいてくる。

 足の踏み場も無く、土手下の道を塞ぐように前進してくる姿はまるで一つの波のようだ。

 槍などの近接武器しか持って無いなら、確かにこれは逃げるしかないだろう。

 数の暴力は絶対の優位の一つだ。

 そこに遠距離攻撃というこちらの優位を持って立ち向かう。


 アメーバが15m手前までやって来た。

 先頭のアメーバの核に赤いレーザーポイントを合わせる。

 先制はリボルバーの一撃。

 ダンッ!と空気を震わせマグナム弾が発射される!

 瞬間、アメーバに指が2本入るほどの大穴が開きレーザーポイントがかき消される。

 穴は一直線に核まで続いており、核が破裂したのが直接見えた。


 俺に続いてミケちゃんたちも撃ち込む。

 パシュッ!パシュッ!っと空気が抜けるような射撃音が続けて聞こえた。

 ポチ君のはきちんと当たったみたいだが、ミケちゃんのは外したらしい。


「あれ? あれ? ずれたにゃ?」

 ミケちゃんが首を傾げている。

 おそらくポイントは完璧に合わせてたのだろう、だとすると問題は引き金を引いた後だな。


「ミケちゃん、引き金を引いた後反動がくるから、それを押さえ込むように柔らかく握りこむんだ。

 火薬に火が付いてから、弾が銃身を抜けて行くまでに一瞬のタイムラグがあるから、その間銃身が動かないように発火の反動を押さえ込んで。」


「わかったにゃ。ぎゅっ!じゃなくてぎゅぅっ!にゃ?」

 ミケちゃんが手をにぎにぎしながら聞いてくる。


「うん、そんな感じ。」


 ミケちゃんが納得いったようで手を上げて応える。

 ポチ君もコクコクとうなづいている。

 と、そんなことを話しているうちに3m手前までアメーバが近づいてきていた。


「後退! 後退!」

 俺の掛け声に合わせて30m後退する。

 そこでまた仕切りなおしだ。

 ミケちゃんもコツを掴んだようで次々とヒットさせていく。

 ポチ君も弓をやっていただけあってかなり上手い。

 一度も外していない、撃ち終わった後に落ち着いてるように見えるから残心が出来ているんだな。

 俺も負けて入られない。

 次々と迫り来るアメーバにマグナムを撃ち込んでいく!

 マグナムの威力は絶大だ。

 あ、外したか?と思った当たりでも核に掠れば、それを破壊してくれる。

 アメーバは体が柔らかい為に、ある程度の衝撃は全体に流すことで逃がしてしまうが、その特性が祟ってマグナムの強烈な衝撃が核を蹂躙する。

 次々とアメーバに大穴を開けていくが、弾込めの時はどうしても近づかれてしまう。

 俺の前だけアメーバの群れが突出した形になってしまった。

 3m手前まで近づかれたので後退の指示を出す。


「二人ともごめん、近づかれた。」


「大丈夫にゃ。」

「気にしないでください、僕も頑張ります。」


「ミケちゃん、ポジション変えよう。中央に溜まったからガンガン頼む。」


「わかったにゃ!」


 俺のいた中央のラインにアメーバが溜まっているので、そこをミケちゃんに任せる。

 やる気満々で勢い込んだミケちゃんに任せれば大丈夫だろう。

 ミケちゃんが射撃距離に近づいたアメーバを次々と撃ち抜いていく。

 ミケちゃんの射撃を見ていて気づいたが、銃口がまったく動いていない。

 9mm弾のグロック17とは言え、撃てば5mmほど反動で銃口が撃ち上がるものだが。

 もしかして肉球だろうか?

 肉球パワーで反動を完全に押さえ込んでいる?

 と、余所見をしてる暇は無い。

 俺も次々と撃ち抜いていく。


 俺が2回スピードローダーで弾込めし、ミケちゃんたちも予備の弾倉に詰め替えたところで、アメーバたちが撤退の鳴き声を上げる。

 と、言っても残りはたったの5体。

 追撃で一気に殲滅だ!


「おにいさん、残りはコイツでやるかにゃ?」

 ミケちゃんが硬鞭こうべんを指し示す。

 ポチ君も鞄に引っ掛けてある弓を抜くか迷ってるな。


「今日は銃の練習だからそのまま撃っていいよ。

 俺はアメーバを拾っていくから、二人は追って。」


「わかったにゃ!」

「はい!」

 返事をするか早いか、ミケちゃんはアメーバを追って駆け出す!


「え? ミケちゃん待ってー。」

 それをポチ君が追っていく。


 俺はスパークトルマリンを外し、オブシディアン・タール2個装備に切り替えた。

 これで120kg、アメーバは1体5kgだから24体まで俺1人で拾える。

 バックパック一つにそこまでは入らないから、獲物袋にも詰めて手で持っていくか。

 拾いながら遠くから聞こえるパシュッ!パシュッ!という音を聞く。

 二人のグロック17に付いたサイレンサーはきちんと作動しているようだ。

 俺のM686にもサイレンサーは付いてるのだが、音は大きい。

 撃ちながらそれについて考えたが、どうも弾を詰めてる回転輪胴シリンダーの部分から音が漏れてるようだ。

 シリンダーが回る以上どうしても銃身との間にわずかな隙間が空く。

 火薬のガスが抜けるほどでも無くても音は漏れるようだな。

 消せてる音は銃口からの発射音のみで、全体的に5割削減といったところか。


 音が聞こえなくなってきたと思ったら、二人も拾っていた。

 集めたアメーバの数は52体。

 重さにして260kgにもなるが、オブシディアン・タールは8個もある。

 合計で480kgまで運べるから楽なものだ。


「おにいさん、これからどうするにゃ?」

 ミケちゃんが背に手にアメーバを山盛りに抱え聞く。


「東のスラムに戻る前にギルドに卸しに行こうか。」

 俺も背に手に山盛りだ。


「うん!」

 アメーバを山盛りに抱えたポチ君が良い笑顔でうなづく。


 最近、財布が軽かったが良い補充ができた。

 ギルドへと向かう。



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