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第38話 ポチ君の腕前

 SHOPアプリを使い新たな装備を手に入れた。

 ポチ君のコートと新型のアーティファクト探知機だ。

 古いほうの探知機を金庫に仕舞い、新しいのにカラビナという金属製の輪っかを付けて腰に下げる。

 ポチ君の方は、と見れば新しいコートを着てご満悦のようだ。

 ピカピカの服だー、としっぽを左右に振りながら喜んでいる。

 ポチ君の前の格好は白のTシャツに青い短パンで田舎の子供って感じだったからな、イヌの亜人さんだけど。

 グレーの生地の厚いコートを着て少しはハンターっぽくなったかなぁって気がするな。

 少し地味な色だけどポチ君が喜んでくれて良かった。

 ミケちゃんは横で、黒こそ至高・・とかつぶやいてるけど。


 時間はまだ昼を少し回ったところなので、ちょっと西の川辺に散策しに行こうと提案した。

 ミケちゃんとポチ君も賛成してくれた。



 宿を出て西門をくぐり、西の川辺へとやって来た。

 川に近づいたところ、


 ・・ピコーン・・--・・--


 と、新型のアーティファクト探知機から音が鳴る。

 今居る所は町に近い川辺で、前にクリスタルエッグをった場所だ。

 はて? 一度採った後、反応は無くなったのだがまた沸いたりでもしたのだろうか?

 新型の探知機の画面を見れば、画面の中に青く光る点が映っていた。

 画面はレーダー型で上半分の半円の線が等間隔に引かれている。

 十字キーやボタンでいろいろ操作してみたところ、探知距離は100mで画面も最大でそこまで表示できるようだ。

 あんまし距離が開くと表示が小さくなって見づらいので画面表示は30mにした。

 それ以上離れたところを探知した場合は矢印で方向を表すらしい。

 青い点が表示されてるということは30m以内だな。

 場所も大体わかった、川の中腹辺りに見切りを付けて出発だ!


 濡れると困る装備を川岸に置いて、川の中へ入っていく。

 本当は肌着も濡れるので脱いでおきたかったがミケちゃんの手前、裸になるのも良くないかと思いそのままだ。

 女の子だからね。

 水は少し冷たい、腰まで浸かりながら川の中を進んでいく。

 探知機に付属したガイガーカウンターの機能も発揮され、ガリガリ・・音が鳴っている。

 相変わらず川の中腹辺りは放射能が溜まっているようだ。

 この川で獲れるメダカやカエルをみんな平気で食べてるあたり、この世界の住人は放射能耐性が強いんじゃないかと思う。

 そんなことを考えてる間に目当ての場所に近づいた。

 アーティファクト探知機から一際強い光が放たれる!

 光が・・収まらない?!

 いつもなら一瞬で終わるのに数秒目の前の空間に放射され続けた。

 陽炎のように目の前の空間が歪んだ瞬間、目の前にバチッ!と電撃が走ると、光が寄り集まり、石となった。

 石の周りを電気が円状に飛び交い、鳥かごの様になって浮かんでいる。

 いつもとは違う光景に恐る恐る手を伸ばす。

 すぐに石を取って川辺へと引き返す。

 川辺では二人が興味しんしんに待ち構えていた。


「おにいさん、何取れたにゃ?」


「うわー! ピカピカ光ったねぇ。今のが魔法なの?」


 二人の前に握った手を広げる。

 手の中にあったのは複数の透明な蛇が絡まって球体になっているオブジェの様な物だった。

 ミケちゃんの反応はうわぁ・・という感じで、逆にポチ君は興味しんしんに見ていた。

 そういえばネコさんは蛇嫌いでしたね。

 ミケちゃんもダメな人だったか。

 これは多分、クリスタルゴーゴンだ。

 まさかの上位アーティファクトである。

 これはクリスタルエッグの上位版で放射能を吸収する効果がある。

 ゲーム的には放射能-20といったところか。

 クリスタルエッグが-5なので効果は4倍だ。

 これ1つで下位アーティファクトを10個付けられる。

 付けるとしたら・・、やっぱミケちゃんだよな。

 ミケちゃんのCap値は5で一番高い。

 だが、ミケちゃんはヘビが苦手のようだ、何とかしなければ。


「ミケちゃん、これはクリスタルエッグの上位アーティファクトなんだけどミケちゃんが付けるのが良いと思うんだ。」


「えー・・、あちきヘビ嫌いにゃ。」

 ミケちゃんは一歩後ずさった。


「いやいや、単なる石だから大丈夫だよ。」

 そういってクリスタルゴーゴンを見せるが、ヘビの装飾が動いた。

 コレ動くのかよ・・

 ミケちゃんはさらに一歩後ずさる。


「わー、コレこんなにきれいなのにミケちゃん要らないの?」

 ナイスだ、ポチ君。

 ミケちゃんがちょっと興味を示したぞ。


「ヘビは金運の守り神とも言うし、クリスタルでできたヘビの装飾がセレブっぽくてミケちゃんに似合うよ。」


「セレブ・・お金持ちって意味かにゃ?」

 ミケちゃんのしっぽが少し上がった。

 ここでダメ押しだ!

 アーティファクトを1つ外し、俺がクリスタルゴーゴンを装備してみる。

 するとヘビの絡まってる真ん中の部分が虹色に光り、それが絡まるヘビに乱反射してキラキラと光る。

 その強いレインボー光はダイヤモンドの様だ。


「わぁぁ・・。」

 ミケちゃんは両手の平を胸の辺りで組みながらウットリと眺めている。


「たしかにコレはきれいにゃ! あちきが貰うにゃ!」

 ミケちゃんが両手を差し出してくるので苦笑しながら渡す。

 代わりにミケちゃんに渡したクリスタルエッグを回収する。

 クリスタルエッグを手渡す際に少し名残惜しそうな顔をしていたが、すぐに目線はクリスタルゴーゴンに移った。

 キラキラと輝くレインボー光に夢中のようだ。


 それにしてもここで上位アーティファクトが採れるとは思わなかった。

 新型の上位アーティファクト探知機に変えたからだろうか?

 上位アーティファクトを探すのに上位アーティファクト探知機が必要なのであれば、今までに探したところももう一度探る必要があるな。

 今日はあまり時間が無いので、明日本格的に探索してみるか。


 川に入ったせいで濡れた肌着が冷たい。

 今日は早めに帰るか。

 その前にポチ君がどの程度狩りをできるか見て見たいのでハゲネズミを探すことにした。

 ミケちゃんが囮用のカエルを獲ろうとしていると。


「ネズミなら何とか探せると思う。」

 と、ポチ君が言った。


「あー、ポチは鼻と耳が良いにゃ。任せてみるかにゃ?」

 そういってミケちゃんが目線をこちらに送る。

 俺もうなずき、ポチ君に任せてみることにした。


 草原を四つん這い(よつんばい)になってポチ君が進む。

 クンクンとポチ君が鼻を鳴らすと立ち上がり、ゆびす。

 どうやらその先に獲物がいるようだ。

 静かに近づいていく。

 ポチ君が右手を挙げ止まったので、俺たちもそれにならう。

 ポチ君は慎重に弓を引くと1つ息を吐き、矢を放つ!

 ピュッ!という弓と矢が擦れる音を立てながら草むらの中に矢が消えていく。

 それと引き換えにギィーッ!と悲鳴が聞こえた。

 ポチ君がすぐに草むらに駆け寄り、弓弦ゆづるを引いてトドメを刺す。


 華麗なものだ。

 思った以上にハンターらしさある立ち振る舞いに俺もミケちゃんも顔を合わせる。


「ポチ、やるじゃないかにゃ!」


「うん、思ってたよりもずっとすごい腕前だね!」


「え、いやぁ・・。この弓が良いからだよう。」

 そういって謙遜するがしっぽは忙しなく左右に振れている。


「これだけ出来るなら何でいままでネズミ獲りをしなかったにゃ?」


「父さんに貰った弓は無くしちゃったから・・、さすがにこん棒一本でネズミを相手にするのは怖いよう。」


 ポチ君に過去の話を聞いたのだが、ポチ君とお父さんは父子二人でトレーダーをしていたそうだ。

 トレーダーというのは町から町へと渡り歩く商人のことである。

 このチェルシーの町に向かっている途中にミュータントの群れに襲われ、ポチ君だけが命からがら町に逃げ込めたようで。

 お父さんはミュータントを食い止めるために立ち止まり、帰ってこなかったそうだ。

 勇敢な人だったんだな・・。

 それ以来、ポチ君は東のスラムでお父さんの帰りを待ち続けている。

 襲われた場所は南東のジャンクション迷宮と呼ばれる地帯らしい。

 崩れた高速道路とビルが建て並ぶ難所の1つだそうだ。

 ポチ君のためにもいつか行こうと心に決めた。


 それから、さらに3匹のハゲネズミを狩った。

 2匹はポチ君が弓で倒し、1匹はポチ君が探したのをミケちゃんが気づかれない様に近づき、硬鞭の一撃でしとめた。

 俺?

 俺は荷物持ちだよ。

 ミケちゃんとポチ君の動きを見ていて、俺にはサイレントキルは難しいなと感じた。


 4匹のハゲネズミを狩ったところで一度宿に戻り、肌着を着替えてから北門の市場へと向かう。

 いつものうさぎのおばさんの屋台だ。

 4匹のうち1匹を夕飯の支払いに当て、残りを買い取ってもらう。

 4匹のうち3匹をポチ君が狩ったとネザーさんに話したところ、すごいじゃないかとポチ君を撫でる。

 ポチ君も照れていたがしっぽを揺らした。


 その後、ギルドに向かいいつもの訓練を始める。

 ポチ君も腕立てやランニングをするようだ。

 ミケちゃんは隅っこで丸くなっている。

 スパークトルマリンが2個しかないから、二人同時にしか訓練できないんだよな。

 明日の探索でさらに手に入ればいいのだが。

 腕立て300回、スクワット300回、懸垂を100回に400mダッシュ15本と前の世界でなら異常と思える訓練をこなす。

 ポチ君も俺と同じメニューをこなそうとしていたが途中でお腹が空いてへばっていた。

 体が小さい分、蓄えられるエネルギーが少ないのかもな。

 ミケちゃんを起こして、宿へと戻る。


 宿に戻りロックさんに挨拶をして部屋へと帰る途中話しかけられる。


「おーい、シャワー使うなら10分までだからな。

 1日10分しかお湯が出ないようになってるから。」


 部屋へ戻り、早速ミケちゃんがしっぽを揺らしながらシャワールームに向かう。

 俺はポチ君にアーティファクトの説明をしながら、ポチ君のCap値を探る。

 ポチ君は5つめのアーティファクトを装備したところでオブシディアン・タールの力で体が浮いた。

 ポチ君のCap値は4のようだな。

 それはそうと、ミケちゃんがなかなか出て来ない。

 結構時間経ったと思うんだけどな。


 そんなことを考えていたら、体を拭いたミケちゃんがシャワールームから出てくる。


「おにいさん、途中からお湯が出なくなったにゃ。」


「え?! ミケちゃん、シャワーは10分までって聞いたよね?」


「あ!」


「ミケちゃん・・」


「しょ、しょうがないにゃ! レディは身だしなみに時間が掛かるにゃ。」


 俺とポチ君はしっぽをうなだらせながら、今日も水で体を拭くことにした。


 この後、また屋台で夜食を食べ、一日を終える。

 明日は1日掛けてアーティファクト探索だ。



明日は短い閑話を投下する予定です。

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