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第37話 ポチ君の装備を揃える

 スラムの子供たちにアメーバ釣りの仕方を教えた。

 順番に釣りを指導したり、ネズミの仕掛けの作り方などを教えていたら、日はすっかり真上に昇りお昼の時間だ。


「とりあえず二人とも、ご飯食べに行こうか?」


「わかったにゃ、お腹ぺこぺこにゃ。」

「ご飯ってネザーさんの所? 僕お金持ってないから先にアメーバ売りに行っていい?」


「いや、ご飯代くらい出すよ。それに装備のこととかもあるし、そこらへんは俺に任せて。」


「あちきも出すにゃ。」


「え、悪いよう・・。」


「装備が無きゃハンターはできないにゃ。黙って言う事聞くにゃ。」

 ミケちゃんが腕を組んで言う、口調は乱暴だが言ってることは優しい。


「まぁ、支払いはこれからの報酬での後払いってことで。」


「そ、それならお願いするんだよう。ありがとうね、二人とも。」

 ポチ君は俺たちに深く頭を下げる、上げたときにあった表情は笑顔だった。

 俺もミケちゃんも一緒だ。



 東の川辺から北門の市場へと移動する。

 相変わらず人ごみがすごい。

 はぐれない様注意しながらうさぎのおばさんの屋台へと向かう。


「こんにちわー。」

「こんにちわにゃー。」

「ネザーさん、こんにちわー。」


「おや、今日はいつもより1人多いね、そこのあんたらちょっと詰めてくんな。

 ほら、そこ座んな。」

 先に座っていたお客さんたちに会釈しながらカウンターに座る。


「ネザー姐さん、ポチもあちきたちの仲間になったにゃ。」

 ミケちゃんがポチ君が仲間になった経緯をネザーさんに説明する。

 ネザーさんはポチくんを心配そうに見つめた後、俺に視線を向ける。


「ハンターのおにいさん、この子たちのこと本当によろしく頼むね。

 あたしに出来ることだったら手伝うからさ。」

 ネザーさんはミケちゃんやポチ君、スラムの子供たちにも慕われている。

 それだけ普段から子供たちを気に掛けているのだろう。

 俺もその信頼を裏切るつもりは無い。


「はい、俺もこの子たちの信頼を裏切らないよう頑張ります。」


 それから、各自料理の注文をしていったのだが。


「あ、ネザーさん。メダカあるから塩焼きにして欲しいな。」


「あいよ、貸しな。」

 ポチ君がメダカを差し出すと、ネザーさんはサッと内臓を取って塩を振り、焼いていく。

 煮込みやパンなどの出来の早い料理を食べてる際中に他の串焼きと一緒にメダカの塩焼きも出てくる。


「みんなで食べよう。」

 ポチ君がメダカを勧めてくれたのでミケちゃんと一緒に手を伸ばす。

 んー、味はししゃもに近いかな。

 ししゃもを丸々と太らせたらこんな味になると思う。


「うん、メダカ結構美味しいね。」

「うまいにゃ! やっぱ魚は良いにゃねー。」


「えへへ、ありがとう。」


 魚好きなミケちゃんが2匹食べて、俺とポチ君は1匹ずつしょくした。

 この場の会計は俺が持って、ネザーさんに挨拶して屋台を出る。

 さて、次はポチ君の装備だ。

 防具はミケちゃんと一緒でいいから、武器を何とかしないとな。



 そんなわけで北門の市場から南門のバザーへとやって来た。

 向かうはミケちゃんの硬鞭こうべんを作ってもらった鍛冶屋だ。


「こんにちわー。」


「おう、いらっしゃい! 今日はなんだい?」

 バンダナを巻いた店主が元気良く挨拶を返す。


「今日はこの子の武器を見繕ってもらいたくて。」

 ポチ君の背中をやさしく押し出す。


「お、おねがいします!」

 ポチ君はぺこりと頭を下げる。


「おう、坊ちゃんはどんなのがいいんだ、希望はあるか?」

 それからポチ君の希望を聞いてみたが接近戦は苦手で遠距離で戦いたいとのことだ。


「ポチは気が弱いから仕方ないにゃ。」


「ご、ごめんよう。」


「まぁまぁ、とりあえず弓とかボウガンでいいのかな?」


「あ、弓なら使ったことあります。父さんから教わりました。」


 ポチ君、お父さん居たのか・・。

 だが、ここで聞いたりはしない。

 ミケちゃんのことで俺も学習したからな。


「それじゃ、ここらへんのはどうだ?」

 バンダナの店主が奥から3つの弓を持ってきた。


 3つの弓を順にポチ君が引いてみた結果、一番小さい短弓ならポチ君の力でも引けるようだ。


「それじゃ、コレください。」


「あいよ、矢を20本付けて2000シリングだ。」


「ふえぇ! そんなにするの?! あの・・、僕こん棒でも大丈夫です・・。」


「ポチはお金の心配しなくていいにゃ。あちきも半分出すにゃ。」

 俺とミケちゃんで半分ずつ出し合う。

 それとミケちゃんとポチ君用のナイフも買う、1500シリングだった。


「そういや兄さんたち、うちの武器使って活躍してくれたらしいね、ありがとよ。

 そこのネコのお嬢ちゃんの硬鞭?だったか、それの問い合わせが来てるんだよ。

 これなら商品になりそうだ、俺に出来ることだったら融通きかせるからまた頼むな。」


 店主にお礼を言い、店を出る。

 この後、雑貨屋でロープや手提げライトに頭に付けるタイプのライトを3つ買ってバザーを出る。

 雑貨屋で買ったものは全部で4000シリングで、これは財布に余裕のある俺が全部出すことにした。

 次はポチ君のハンター登録をするためにギルドへと向かう。


 道すがら装備を抱えてポチ君が思いつめた顔をしている。

 そのしっぽは股に挟むように丸まっていた。


「ご、ごめんなさい・・、ハンターになるのこんなにお金かかるなんて知らなくて・・。」

 ポチ君が申し訳なさそうに言う。


「まーだ言ってるにゃ。これぐらいあちきなら簡単に稼げるにゃ。

 働きで返すにゃ。」

 ミケちゃんがポチ君の背中を叩きながら言う。


「う、うん! 頑張るよう!」


 ポチ君もやる気が出たようで何よりだ、そんなことを話してるうちにギルドへと着いた。

 いつものおかまさんの受付へと向かう。

 今日は事務所の方にいた。


「こんにちわー。」

「こんにちわにゃー。」

「こんにちわ。」


「あら、今日はお友達も連れてきたの? いらっしゃい。今日は何の用かしら。」


「この子の登録をおねがいします。」


「ポチと言います、おねがいします。」


「まぁた、可愛い子を連れてきたわねー。

 坊や、ハンターは大変よ。大丈夫なの?」

 おかまさんは落ち着いた眼差しを向ける。


「はい、覚悟はできています。」

 ポチ君もしっかりと見つめ返し、答える。


「わかったわ、それじゃ説明をするわね・・」


 それからハンターの仕事の説明と誓約書、Fランクへの登録を終えた。


「それじゃ、またねぇ。」


「はい、ありがとうございました。それでは。」


 アメーバを2体買い取りしてもらった後おかまさんにお礼を言って、ギルドを出る。

 この後はどうしよっかな?

 そういえば宿のことでミケちゃんと話してたことあったっけ。


「ミケちゃん、宿で個室借りるかどうか検討しに行く?」


「部屋を見に行くにゃ? 行ってみるにゃ。」


「宿に泊まるなら僕もそっちに移った方がいいよね。どこなの?」


「こっちにゃ。」


 ミケちゃんを先頭にしてロックさんの宿に向かう。

 ロックさんに話を通し、2人部屋の個室を見せてもらうがミケちゃんも不満は無いようだ。

 本当は3人部屋がいいのだが、そろそろ財布に余裕が無くなってきたのだ。

 2人部屋に3人で泊まってもいいか?、ロックさんに尋ねたところ許可を得られたので2人部屋を借りることにした。

 ミケちゃんと折半にしたのだが、ミケちゃんは悲しい表情で財布の中を覗いている。

 しっぽも垂れ下がっていた。


 3階の個室へと移動する。

 ここが今日からの住居だ。

 部屋に入ってすぐにミケちゃんが奥に駆け込む。


「窓際! あちきもーらい! ここ、あちきのー!」

 ミケちゃんがベッドに飛び込み、布団をぺしぺし叩いている。

 その光景に笑いながら俺とポチ君も向かいのベッドに腰を下ろす。

 ベッドは大部屋のよりも大きく、カーテンの仕切りも付いてた。


「俺とポチ君はこっちのベッドを使おうか?」


「僕もベッド使っていいの? 床でも大丈夫だよ?」

 ポチ君が床で寝たら、本当に犬にしか見え・・・、ゲフンゲフン。


「床で寝たら、疲れが取れないよ。ちゃんと布団で寝よう。」


「えへへ、ありがとうリーダー。」


「リーダー?」


「うん、おにいさんがこのパーティのリーダーなんでしょう? だから。」


「そうにゃ、おにいさんがリーダーにゃ。」


「ん、わかったよ。じゃ、そういうことで。」


 それから、ポチ君が引越しの準備で今までお世話になってた小屋に荷物を取りに行ったり、金庫にお金を入れたり、荷物の整理をした。

 お金は結構使った、残金5125シリング。

 うわぁ、仕事頑張ろう。


 ポチ君が帰ってきたところでSHOPアプリを起動する。

 買いたいものが2つあるのだ。

 ただ所持金が足りないのでオブシディアン・タールを1つ売ることにした。

 オブシディアン・タールは2000ルーブルで売れたので、これで所持金が3704ルーブル。

 まず、ポチ君用のトレンチコートを注文する。


「ポチ君、コートの色は何色がいい?」


「コート?」


「あちきが着てるやつにゃ。」


 ポチ君にスマホの画面を見せて選んでもらう。

 グレーで良いそうだ。

 ポチ君の背丈は140cmぐらいなので、それのMサイズで注文する。

 はい、ぽちっとな。


 画面が光った後、手元に光が寄り集まりコートに姿を変えた。


「え? え? これは何?」

 ポチ君は目をまん丸にして驚いている。

 それから俺の力について、ミケちゃんと一緒に説明した。


「うわぁ、スラムでミケちゃんが大きな岩を持ち上げたとか聞いたから、冗談だと思ってたらそういうことだったんだ。」


「そうにゃ。実はおにいさんは魔法使いにゃ。勇者と魔法使いと下働きで勇者パーティにゃ。」


「ええ・・、僕そういうポジションなのう?」


 ポチ君の理解も得られたようで買い物を続ける。

 まずはポチ君のコートに改造で補強ポケットを4つ追加しておく。

 それからミケちゃんのコートも補強ポケットを2つ追加だ。

 そしてレーダー型アーティファクト探知機だ。

 これは3000ルーブルもするが、仲間も増えた現在これからアーティファクトをたくさん探す予定なので外せない。

 注文ボタンを押し、スマホの画面が光る。

 光が収まった後には、手元に液晶画面の付いた探知機が残った。

 携帯用のゲーム機みたいな形だな。

 十字キーやボタンが付いてる。

 違いはフレームが金属製で画面もガラスが厚く、頑丈そうなことか。

 これでアーティファクト探索がはかどるはずだ。

 今日はまだ時間がある、ひさしぶりに西の川辺を探索してみようかな。



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