表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/169

第35話 スラムのこと

 ギルドでの清算を終え、お腹が減ったので北門にあるうさぎのおばさんの屋台に向かうことにした。

 日はちょうど真上に昇ったところだ。

 午後はどうするかなぁ?


 北門の市場へとやって来た。

 昼時ということもあって人だかりがすごい。

 込み合う人の波をかき分けて、うさぎのおばさんの屋台へ向かう。


「こんにちわー。」

「こんにちわにゃー。」


「はいはい、いらっしゃい。そこ空いてるよ。」

 カウンターを勧められた。


 まずは注文から、俺はネズミのから揚げに煮込みとパンを頼み、ミケちゃんはネズミの煮込みとパンだけでいいようだ。

 巨大アメーバ討伐前に間食で串焼きを食べていたからな。

 頼んだものが出てくるまでの間に近くのカフェスタンドでジュースも買ってくる。

 今日は懐が温かいからな。

 食べながらうさぎのおばさんと話をした。


「ネザー姐さん、巨大アメーバをあちきたちでやっつけたにゃ!」

 ミケちゃんはしっぽを揺らしながら言う。


「へー、かなりでかい化け物みたいなアメーバって聞いたけど本当かい?」


「本当にゃ。あちきがトドメを刺したにゃ。こう・・、バッと飛んで!グサー!ってにゃ。」

 ミケちゃんは身振り手振りで説明しようとするが、うさぎのおばさんは半信半疑のようだ。

 こちらに目線を送ってくる。


「本当ですよ、上から石をたくさん投げて身動きを取れなくしたら、核の部分だけで逃げ出そうとしたのでそこにミケちゃんがトドメを。」


「はー、そりゃすごいねぇ。」

 うさぎのおばさんはミケちゃんの頭を撫でる。

 ミケちゃんはしっぽを揺らしながら、それを受け入れた。


「ところでスラムのことでいろいろ聞きたいことがあるのですけど・・」

 スラムのおっさんたちや子供たちと接したことでいろいろと疑問点が出てきたのだ。


 食事を取りながらうさぎのおばさんにいろいろ聞いたが、やはりスラムの子供たちの状況が悪いとのことだ。

 この世界にセーフティネットとなる福祉事業は無く、スラムに住む住人の大半はその日暮らしの生活だそうで。

 子供たちもそれに順じ、寝る所の提供は大人たちから与えられることはあるが、食事などは自分たちで賄うのがルールだそうだ。

 子供たちは自給自足で、当然学習の機会を与えられることも無く。

 そうやって成長した子供たちが、あのおっさんたちみたくなるんだな。

 なんか不毛だな。

 どうするか?


 当然、俺が彼らを養うことなどできない。

 だが、狩りの仕方を教えることぐらいならできる。

 道具を揃えるのに多少の身銭を切ることにはなりそうだが。

 現在、懐が温かい。

 自分が貧しかったらケチケチして生きるのが良いだろうが、余裕のある時までそうはしなくてもいいだろう。


 好きに生きる。


 この世界で生きていく上での目標だ。

 なら自由にやってみるかな。


「ミケちゃん、スラムの子供たちの事なんだけど。」


「ん? どうしたにゃ?」


「生活が厳しそうだし、狩りの仕方ぐらいなら教えてあげようかなって思ったんだ。」


「良いと思うにゃ。あちきも同じような生活してたし、ただカエルを獲るだけではキツイにゃ。

 あそこにはポチも居るし、あちきもおにいさんに狩りの仕方を教わって助かったにゃ。」

 ミケちゃんは真剣な眼差しでこちらを見つめてくる。


「アメーバ釣りなら彼らでも出来ると思う。ただ、あそこは穴が1つしかないから教えたら混み合って、俺たちはやりずらくなるだろうけど。」


「別にいいんじゃないかにゃ? あちきとおにいさんなら他の狩りだってできるにゃ。」


「ありがとう、じゃ、この後はそれの準備をしよう。」


 うさぎのおばさんにハゲネズミの皮が余ってないか聞いたところ、何枚もあるとのことで2枚頂く事にした。

 巨大アメーバの囮にネズミの仕掛けを使った際に、前のはボロボロになってしまったのだ。

 ロープだけは回収したが、それ以外の部分は溶けかかっていたので捨ててきた。

 頂いた皮で仕掛けを2つ作ることにする。

 うさぎのおばさんに挨拶をして、屋台を出る。

 次は南のバザーだ。



 南門近くのバザーへとやって来た。

 前回、綿などを買った店で仕掛け2体分の綿やボロ切れにロープを1つ買う。

 次は鍛冶屋だ。


「すいませーん。」

 ミケちゃんの硬鞭こうべんを作った鍛冶屋へとやって来た。


「おお、あんたらか。変わった警棒を作った人たちだよな?」

 バンダナをした店主はこちらのことを覚えていたようだ。


「はい、あの時はお世話になりました。今日は新しい武器が欲しくて。」


「どんなのだ?」


「子供でも扱えて、アメーバを倒せるようなのありますか?」


「それなら、短槍でいいんじゃないか? 斧やハンマーは力がいるしな。」


 店主に薦められて、壁に掛けられた武器等を見せてもらう。

 目当ての武器は・・、あった。

 1.5mほどの長さの槍がある。

 穂先は刃が無く、ただ尖っているだけだ。

 これを店主の下に持っていく。


「それでいいのか? そいつは鉄パイプ槍だ。鉄パイプの先を熱して叩いて潰し、ヤスリで尖らせただけだがそれなりに頑丈だぞ。安いし。」


「いくらですか?」


「1000シリングでいいよ。そいつは材料が手に入りやすいからな。」


 1000シリングか。

 値段的に悪くないな、高いと壊れたときに自分たちで買い換えられないからな。

 おっさんたちが持ってた槍もこれに似ていた気がする。


「じゃ、これ下さい。」

「あちきも半分出すにゃ。」


 ミケちゃんと半分ずつ出し合い購入する。

 ついでにミケちゃんの硬鞭を見てもらった。

 傷んだ箇所も無く、きれいに洗浄しただけですんだ。


 礼を言って、鍛冶屋を出る。

 一度、宿に戻るか。

 西門の宿へと向かう。



 いつもの宿へとやって来た。

 受付で今日の分を払い、一度ミケちゃんと別れそれぞれの部屋に向かう。


 いつものベッドで荷物を降ろす。

 今日は大金が手に入った、現在の所持金は14040シリング。

 お金をそのままロッカーに入れたままにするのは不安だ。

 受付に行き、ロックさんに金庫を借りれないか聞いてみる。


「個室になら金庫あるぞ。部屋にカギもかかるし、稼いだならそっちに移ったらどうだ?」


 そのままロックさんの営業を受けた。

 一番小さい部屋で2つのベッドにテーブル、金庫、シャワーと揃っているらしい。

 長期宿泊なら1ヶ月で一部屋6000シリングだそうだ。

 ミケちゃんとシェアすれば1日100シリングになる。

 後で相談だな。

 ロックさんに礼を言い、部屋へ戻る。

 ロッカーを覗けば洗濯物も溜まっている。

 宿の娘のウェンディさんに洗濯を頼もうと裏庭に行ったら、ミケちゃんとウェンディさんが仲良く洗濯をしていた。


「お! おにいさんにゃ。」

「こんにちわ。」


「こんにちわー、ウェンディさん洗濯物頼んでもいいですか?」


「ええ、ありがとうございます。30シリングです。」

 洗濯物と代金を渡す。


「おにいさん洗濯ぐらい自分でやるにゃ。」


「いや、やったことないし。それにこの後トレーニングとかで時間も無いし。」


「ギルドの駐車場行くにゃ? あちきも行くから、後で一緒に行くにゃ。」


 ミケちゃんとウェンディさんに手を振って、部屋に戻る。

 ミケちゃんが洗濯を終えるまでネズミの仕掛けでも作るか。

 1つ終えたところでミケちゃんが呼びに来た。

 出かける前にスマホのチェックを見たところ。


 ステータス


 Name  サトシ

 Age   20


 Hp  100

 Sp  100


 Str   151.0 

 Vit   130.0   

 Int    96.0  

 Agi   120.0 

 Cap   3.0  


 預金  1704ルーブル (+625)

 所持金 14010シリング (+4565)


 基本のステータスは朝見たときと変わらないが預金が大分変わっている。

 巨大アメーバ、あれ625ルーブルも出すのか。

 ギルドに行ったときにおかまさんに聞くことが増えたな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング よければお願いします。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ