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第30話 アーティファクト探索

 アメーバ狩りを終え、ギルドへと向かう。

 まだ昼前なので、ギルドは空いていた。

 待つことなく、いつものおかまさんの受付へ向かう。


「いらっしゃい、何を持ってきたのかしら?」


「アメーバ12体おねがいします。」

 バックパックからアメーバを抜き出し、買い取りカウンターに積んでいく。


「あら!相変わらず仕事が早いわね。無理してない?お嬢ちゃんは大丈夫かしら?」

 おかまさんは心配そうにミケちゃんへ視線を向ける。


「大丈夫にゃ。楽しかったにゃ!」

 それに、ミケちゃんは笑顔で応えた。


「まぁ、それならいいのよぅ。それじゃ12体で1200シリングになるわね。ランクも上げていいのよね?」


 Eランクへの条件は、1人アメーバ10体なのでこれで俺もミケちゃんも条件をクリアーできたことになる。


「はい、よろしくおねがいします。」


「じゃ、ちょっと待っててね。新しいハンター証持ってくるから。」


 そう言っておかまさんは一度、後ろの事務室のへと入っていく。

 待っている間、アメーバの買い取り金をミケちゃんと分ける。

 ミケちゃんはまだ硬鞭こうべんの代金が、と遠慮するが装備はパーティの責任と納得してもらう。

 そうこうしてる内に、おかまさんが戻ってきた。

 俺たちの前に赤く輝く、銅製のタグプレートを差し出す。


「はい、これ。Eランクからはハンター証は金属製のプレートになるの。

 代わりに今まで使ってた紙製のハンター証を出してちょうだい。」


「ありがとうございます。」


 Fランクのハンター証と引き換えにEランクのハンター証を受け取る。

 ひもが付いてたので首に下げ、ミケちゃんにも首に掛けてあげる。


「にゃ!なんかプロって感じがしてきたにゃ。」

 ミケちゃんもプレートを手でいじりながら、しっぽを揺らせて言う。


「それで、初心者講習はどうするの?受けるなら予約しておくわよ。」


 初心者講習とは、Eランク以上のハンターが町より離れた荒野での、狩りをする為の許可を出す講習だ。

 これを受けてないハンターは、町から離れた荒野での獲物の買取は拒否され、盗んできたものじゃないかとの疑いを掛けられることもあるらしい。

 おかまさんいわく、常識の無い新人に常識を教えるための講習でもあるそうだが。

 自分たちの装備を見る。

 まだ、危険地域とされる荒野で戦えるほどの腕も装備も無い。


「ミケちゃん、俺たちにはまだ早いかな、と思う。」


「あちきもそう思うにゃ。」

 同意は得られたので、おかまさんに断りを入れる。


「そうね。慎重に行くのは良い事よ。準備が出来たら声をかけてちょうだい。」


 おかまさんに礼を言い、ギルドを出る。

 まだ昼前だ、今日の分は十分稼いだし、これなら探索に時間を掛けられるかな?


「ミケちゃん、これからお宝探しに行かない?」


「ん?宝ってこれかにゃ?」

 そう言ってミケちゃんはアーティファクトの入ったポケットを叩く。


「うん、川沿いに歩いていけば見つかると思うんだ。」


「本当?それは良いにゃ、行くにゃ!」

 ミケちゃんは右手を上げて元気良く同意してくれた。



 ギルド前から北の市場へと移動する。

 いつものうさぎのおばさんの屋台だ。


「こんにちは。」

「こんにちはにゃ。」


「いらっしゃい。お昼かい?」


「いえ、ちょっと遠出するのでお弁当買えないかと。」


「それなら串焼きの盛り合わせとパンを紙に包もうかい?」


「それでおねがいします。」

 代金を支払い、焼きあがるのを待つ。

 待っている間、ミケちゃんは新しいハンター証をうさぎのおばさんに見せていた。


「へー、あんたもいっぱしのハンターになったんだねぇ。」

 ミケちゃんは褒められて気恥ずかしいのか、しっぽの先を手でもてあそんでた。


「ミケ、道中でネズミ見つけたら獲ってきておくれ。」


「わかったにゃ!」

 それに元気良くミケちゃんが答える。

 ランクが上がったからとは言わないが、こうやって商売のやり取りができる様になったあたり、俺たちも一人前のハンターになったのかもしれないなと思った。



 お弁当を受け取り、北門の市場から東門の先へと抜けていく。

 東門を越える際に、首に掛けたハンター証を指でつまんで見せながら抜けた。


 また東のスラムの川辺へとやって来たが、ポチ君は見当たらなかった。

 残念だ。

 代わりではないが、昨日助けた子達が川辺で採取をしていて、こちらに気づき手を振ってきた。

 俺もミケちゃんもそれに振り返す。

 途中、スラムの3人のおっさんたちにも会ったがこちらを見てギョッとしていたので、手を上げて軽く挨拶をしておいた。

 いちいち会うたびにリアクションを取られてもうっとうしいな、と思ったのだ。

 それに、おっさんたちもぎこちない笑顔で応じた。


 アーティファクト探知機を腰に下げながら、東へと川沿いに進んでいく。

 土手に開いたアメーバの穴のある所を越え、川辺に乱雑に石が転がっているのを眺めながら、さらに30分ほど歩いてようやく今日1つ目の反応が出た。

 探知機の反応は川へと向かっている。

 川へ入る用意をする為、着替える。

 肌着を脱いでる最中、ミケちゃんは後ろを向いて「きゃー!きゃー!」言っていた。

 年頃の女の子だからね。

 素肌に直接、戦闘服を着込み、バックパックを下ろせば準備OKだ。

 探知機を手に、川へと入っていく。


 ガイガーカウンターがガリガリ・・音を上げる中、放射能地帯を足早あしばやに抜け。

 いつもの放電現象と発光が収まった中に、電気の檻かごに抱かれたアーティファクトを素早く取る。

 川岸に戻り、ミケちゃんと一緒に手の中の石を見れば、オブシディアン・タールであった。

 オブシディアン・タールは泥状の黒曜石で、重さを60kg分吸い取る力のある、便利なアーティファクトだ。

 これはミケちゃんの分と渡すが、ミケちゃんはもっときれいなのが欲しかったらしい。

 女の子だからね。


 1つ目がれたところで昼休憩に入ることにした。

 お弁当を広げる。

 串焼きの盛り合わせは、朝はネズミ2つにカエル1つだったが、昼はネズミ1つにカエル2つのようだ。

 多分、その時に余ってる肉が多めになるのだろう。

 昼までにスラムの子達がカエルを売りに来るだろうからな。

 味付けは塩とハーブと唐辛子の3種で、ミケちゃんは辛いのが苦手なので俺の塩味のと取り替える。

 食べ終わって、水で一服した後また探索に戻る。

 食べたばっかりなので気持ちゆっくりめに、川辺を歩く。

 町から離れれば、川もドブ臭さが抜けてきて、気持ちの良い風が川を遡上している。

 川辺で揺れるススキのような植物と揺れるミケちゃんのしっぽを眺めながら、探索を続けていく。


 それから3時間の間に、さらに5つのアーティファクトを手に入れた。

 豊作である。

 内訳はオブシディアン・タール3つにクリスタルエッグが1つ、スパークトルマリンも1つだ。

 これで俺たちの持っているオブシディアン・タールが5つとなり、種類に偏りができたが役に立つアーティファクトだし、良しとした。

 ミケちゃんにスパークトルマリンを渡し、ミケちゃんも機嫌が良い。

 さらに東へと向かおうとした所で新たなミュータントに遭遇した。

 50mほど先に灰色のでかいトカゲがいる。

 大きさは・・、2mぐらいか?!


「やばいにゃ!逃げるにゃ!」

 ミケちゃんが焦っている、しっぽもピンと上がってるが毛が逆立ち、膨らんでいた。


「ミケちゃん、あれは何か知ってるの?」


「人食いトカゲにゃ・・、超ヤバイやつにゃ!」

 ミケちゃんがこんなに焦るのは初めて見たかもしれない。


 もう一度トカゲの方を見るが、目が合った。


 トカゲがこちらに凄い勢いで、駆け込んできた!


「うわ!やばい、逃げよう!」

 とミケちゃんに語りかけるが。

 ミケちゃんはすでに町の方に向かって全力疾走していた。


「え?!待ってミケちゃん、うわ!速い!」

 ミケちゃんは四つ足の本気走りで逃げる!

 あっという間に距離を離されるが、俺も必死にミケちゃんの後を追いかけた。


 途中、トカゲに追いつかれそうになるが必死に逃げ続け、500mほど走ったところでトカゲは諦めたようだ。

 時速30kmぐらい出てたと思う。

 後ろを振り返りながら、近くで見たトカゲはコモドオオトカゲとワニを足して2で割ったような見た目で、頭が丸みを帯びたワニ、体がトカゲに似ていた。

 昨日、ギルドの駐車場で走りこみをしておいて良かった。

 これからも絶対に続けよう。


 川辺の草むらに座り込み、休んでいるとミケちゃんが戻ってきた。


「おにいさん、大丈夫だったかにゃ?」


「ミケちゃん、ひどいよ。置いてかないでよ。」


「ごめんにゃー、アレはさすがにこわいにゃー。」

 ミケちゃんは頭を掻きながら、申し訳なさそうに言った。


 これ以上、東に向かうのは難しそうだ。

 ちょっと休憩を取った後、町に戻ることにした。

 日はもう落ちかかってきていて、夕暮れ時だ。


 スラムに近い、アメーバの出る橋の近くで土手に座ってる3人のおっさんたちに遭遇する。

 向こうから声を掛けられる。


「よう、兄ちゃんたち帰りかい?」


「ええ、そうですけど。」


「この先の排水溝には近づかない方がいいぜ、ヤバイのが出たんだ・・」


 向こうでトカゲに追い回されたと思ったら、こちらでもヤバイのが出たそうな。




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