第28話 ミケちゃんのCap値
アーティファクトの暴走は安全だと確認できた。
これを使えば、ミケちゃんがどれくらいアーティファクトを装備できるのか、調べられる。
「ミケちゃん、アーティファクトの装備できる数には個人差があって、ミケちゃんがどれくらい装備できるか調べたいんだ。いいかな?」
「いいにゃよ。どうやるにゃ?」
ミケちゃんはすでにクリスタルエッグを装備している、なので。
「まずはオブシディアン・タールを2個目に装備してみようか。
その前にこのロープで・・」
ミケちゃんは軽いので、オブシディアン・タールが暴走したときにそのまま飛んでいったりしないように、腰にロープをくくりつけた。
はたから見たらネコにリードを付けてるみたいでなんか心苦しい。
「これでいいにゃ?もう装備してもいいにゃ?」
と言いつつも、手に持ったオブシディアン・タールは黒紫の光を放ち始める。
「ミケちゃん、体に異常はない?なければ物に対して軽くなれって念じてみて。」
「わかったにゃ。軽くなーれにゃー。」
ミケちゃんは硬鞭を手に持ち、それに囁く。
「にゃ?」
疑問符を口にしたと思ったら、硬鞭を振り回し始めた。
まるで小枝を振るように軽々と鉄のこん棒を振り回す!
「わ、これすごいにゃ!おもしろいにゃ。」
おもしろがってブンブン!振り回すが、ミケちゃん危ないです。
今度はそれで地面を叩き始めたがそこでミケちゃんが首をかしげる。
「軽すぎて威力が出ないにゃ。」
重さの無い打撃武器はやっぱそうなるよね。
でも、これは上手く使えば俺のハンマー捌きにも利用できそうだ。
覚えておこう。
オブシディアン・タールを一度外して、2個目の装備枠にスパークトルマリンを装備してもらう。
さぁ、3個目の検証だ。
ミケちゃんがオブシディアン・タールを手に持ち、輝かせる・・
「どう?変な感じは無い?」
ミケちゃんは浮きもせず、普通にしている。
「ちょっと待つにゃ。」
そう言って硬鞭を小枝のように振るう。
「大丈夫にゃ。ちゃんと使えてるにゃ。」
どうやらミケちゃんは3つ以上装備できるようだ。
さらに俺の付けてたクリスタルエッグも渡して検証したところ、なんと4つ目も暴走せずに使えた。
Cap値4以上か・・
素のステータスに俺とはかなりの差がある気がする。
「どうにゃ?何かわかったかにゃ?」
「うん、ミケちゃんは4つまではアーティファクトを装備できるみたい。すごいよ!」
「そうかにゃー。それであちきもびょーん!って飛べるのかにゃ?」
「いや、あれはオブシディアン・タールを暴走させる必要があるから、5個目以降の検証をしてみないと無理かな。」
「それは残念にゃ。」
飛びたかったのか、ミケちゃんはしっぽをうなだらせている。
その後、ミケちゃんがアーティファクトを付けたまま硬鞭を30分ほど振り回して、ミケちゃんの練習は終了。
ミケちゃんのクリスタルエッグ以外の3つを返してもらい、宿に戻ることにした。
西門近くのいつもの宿へとやって来た。
「こんばんわー。」
宿の受付のロックさんに挨拶をする。
「おう、らっしゃい。そっちのはお前の連れか?」
「あちきはミケにゃ。安い部屋希望にゃ、いくらにゃ?」
「大部屋が1日50シリングだよ。」
「わかったにゃ。」
俺もミケちゃんと一緒に今日の宿代を払う。
「お嬢ちゃんは2階な、6番のベッドを使ってくれ。」
そう言って、ミケちゃんにカギを渡す。
「それじゃミケちゃん体を拭いたら、後でここに集合で。またネザーさんの屋台に行こうか。」
「わかったにゃ!ちょうどお腹が減ってきたところにゃ。」
その後、ミケちゃんに裏の井戸の場所を教え、俺も身支度を整えていく。
ミケちゃんは水の入った桶を持って宿に戻ったから、中で拭くみたいだな。
まぁ、女の子だしね。
身支度を整えた俺たちは、またうさぎのおばさんの屋台へと赴く。
「いらっしゃい、また来たのかい。よく食べるね。」
昨日に続いてまた夜食を食べに来た俺に、うさぎのおばさんは笑っている。
「ネザー姐さん、こんばんわにゃ。」
「ミケ、あんたもまだ食べるのかい?」
「ちょっとだけにゃ。カエルの串焼きとパンちょうだいにゃ。」
俺もカエルの唐辛子炒めとネズミの煮込みにパンを注文して、ミケちゃんの分も支払う。
ミケちゃんはアメーバの代金を受け取らなかったから、今は金欠だろうからな。
助かるにゃ、と礼を言われなごやかに食事を終えた。
宿に戻って、ミケちゃんは今日は疲れたようで早々に寝る、と2階へと上がっていく。
さて、俺も腹が膨れて眠くなったが、その前にやることがある。
自分のベッドに戻って、ネザーさんからもらったハゲネズミの皮に綿とボロ切れを詰めて縫い合わせていく。
頭が無いのでずいぶん気持ちの悪いオブジェができたが、これにロープを巻きつければ完成だ。
やることはやったし、寝るか。
次の朝、裏の井戸で顔を洗っていると寝ぼけ眼のミケちゃんも起きてきて、挨拶する。
「おはよう。」
「おはようにゃ。ふわぁ・・」
あくびをして、まだ眠そうだ。
「まだ眠そうだね。」
「昨日は近くの姐さん方が抱きついてきて、なかなか寝れなかったにゃ。」
と、ハーレム主人公のようなことを言っていた。
ベッドに戻り、周りから見えないようにカーテンを敷いてまずはステータスチェックからだ。
ステータス
Name サトシ
Age 20
Hp 100
Sp 100
Str 137.0 (+15.0)
Vit 119.0 (+12.0)
Int 96.0 (+1.0)
Agi 115.0 (+6.0)
Cap 2.8 (+0.2)
預金 1155ルーブル (-537)
Str(筋力)を中心にVit(体力)、Agi(反射神経を含む素早さ)も上がっている。
筋トレの効果は抜群だ!
繰り返し毎日やってれば、いつかミケちゃんにも追いつけるかもな。
次に弾薬の補充で9mm弾を50発、SHOPアプリで買い込んでおいた。
2本の弾倉にきっちり詰めて、予備が40発。
これをバックパックに入れておく。
宿の受付で今日の分の水を買ってたところ、2階から支度を終えたミケちゃんが降りてきたので、一緒に朝ごはんを食べに行く。
いつものうさぎのおばさんの屋台だ。
ネザーさんに挨拶をして、朝は多めに食べておくことにした。
俺が串焼きの盛り合わせにパン、ミケちゃんがネズミのから揚げにパンを頼んだ。
支払いはミケちゃんの分も俺がしておく、残金は9025シリング。
昨日の稼ぎがでかい、まだまだ余裕だな。
この分は働きで返すとミケちゃんも張り切っている。
可愛かったのでとりあえず、頭を撫でておいた。
食事をしている途中、スラムの子っぽい子たちがカエルを売りに来ていた。
カエル獲りぐらいしかできない子たちには、ネザーさんがカエルを買い取ってくれるのが貴重な現金収入なんだろうな。
ミケちゃんもそんな感じだったみたいだし、ちょっと考えさせられる。
今日も、昨日と同じスラムのアメーバを獲りに行く。
昨日の夜に作っておいた仕掛けがちゃんと使えるか楽しみだ。




