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第27話 アーティファクト検証その2

タイトル、少し変えました。

 東のスラム近くの排水溝で思わぬアクシデントに巻き込まれたが、俺もミケちゃんも共にケガは無いので良しとする。

 今日、集めたアメーバの数は全部で19体にハゲネズミ1匹だ。

 ミケちゃんにハゲネズミだけ持ってもらって、アメーバは俺が全部持つことにした。

 アメーバは1体5kg、アーティファクトオブシディアン・タールで重さを60kg吸い取っても、まだ35kg残る。

 少々重いが、これもまたカネの重みと自分を励ます。



 東門に入り、南門のバザーに立ち寄ってからギルドを目指す。

 ちょっと思いついたことがあるからだ。

 地面にゴザを敷いてガラクタを売ってる商人からボロ切れや綿の固まりを買う、50シリングだった。

 ついでに露天のカフェスタンドからコーヒーとオレンジっぽいジュースを1杯。

 ミケちゃんにジュースを渡して、夕日を眺めながら一服。

 今日は疲れる1日だった。

 コーヒーの苦味がまだ荒振りの収まりきれてない神経を鎮めてくれるのを実感しつつ、深く息を吐く。

 ふいに背中を撫でられ横を向けば、ちびちびとジュースを飲んでいたミケちゃんが微笑わらっていた。

 夕日で茜色に染まったミケちゃんの頭を撫で返しながら、俺も微笑った。



 西門近くのギルドへと移動する。

 相変わらず、この時間は混み合っている。

 いつものおかまさんの列に並び待つ。


「あら、おつかれさま。今日は何を持ってきたのかしら?」


「アメーバ19体おねがいします。」


「まぁ、ずいぶん頑張ったのね。無理はダメよぅ?」

 おかまさんはちょっと苦笑している。


「東のスラム近くで大湧き出しに遭遇しちゃって、弾を盛大に吐き出すハメになりましたよ。」

 俺も笑いながら言う。


「あらあら。ま、そういう事もあるわね。Eランクへの昇格条件が殺人アメーバ10体だけど、どちらが昇格するのかしら?」


「同時に昇格したいのでまた今度おねがいします。」

 ミケちゃんが俺の腕をポンポンと叩く、わかってるじゃないかという感じだな。


「わかったわ。それじゃ近いうちに残り1体持ってきてね。代金は1900シリングになるわ。」


 アメーバの報酬をミケちゃんと半分こにしようとしたが、硬鞭こうべんとコートの分があるからと辞退された。

 そのコートをおかまさんにきれいね、と褒めてもらいミケちゃんは照れていた。

 おかまさんから代金をもらい、礼を言ってギルドを出る。

 外へ出たときにはすっかり日が沈み、街灯や店のネオンサインが薄闇の中、自己主張していた。

 今日は今までで一番働いたし、お腹もぺこぺこだ。

 うさぎのおばさんの屋台へ行くか。



 北の市場へとやって来た。


「ネザーねぇさん、こんばんわにゃ。」


「はい、こんばんわ。ここ空いてるから座りな。」

 そう言って、うさぎのおばさんはカウンターを示す。


「これも頼むにゃ。」

 ミケちゃんはハゲネズミを取り出す。


「あいよ、100シリングでいいね。それにミケ、ずいぶん良いカッコしてるじゃないか。」


「えへへ、ありがとにゃ。」

 ミケちゃんのしっぽの先が照れたようにくねくねと揺れる。


「あ、姐さん、それアメーバがくっついてたけど大丈夫にゃ?」


「んー、鼻の部分が少しただれているけどこれぐらい問題ないよ。

 アメーバに毒も無いし。」


「ありがとにゃ。」


「あ、すいません。ハゲネズミの皮だけ引き取らせてもらえませんか?」


「いいけど、こんなのどうするんだい?」


「ちょっと罠の仕掛けに使おうかと。」


「あいよ、朝に剥がしたのがあるから、それ持っていきな。」

 うさぎのおばさんから頭の無いハゲネズミの皮をタダでもらった。


「ありがとうございます。で注文なんですけど・・」


 俺はカエルの串焼きにネズミの煮込みとパン。

 ミケちゃんはネズミの串焼きと煮込みにパンを注文した、約束どうりここは俺のおごりだ。


「おごってもらっちゃって悪いにゃー。」

 と言いつつニコニコ顔のミケちゃんを撫でる。


「そういえばミケちゃん、この後トレーニングしようと思うんだけど、走れる広さのある場所知ってる?」

 串焼きを齧りながら聞く。


「んー、ギルドの裏に広い空き地があった気がするにゃ。行ってみるかにゃ?」

 ミケちゃんもナンのような伸びるパンに齧りつきながら答えた。



 食事を終え、うさぎのおばさんに挨拶をして屋台を出る。

 目的地はギルドだ。


 いつものおかまさんのカウンターへと行く。

 混み合いのピークを過ぎたのか空いていた。


「あら、また来たの。今度は何かしら?」


「訓練をしたいのですけど、ギルドの裏の空き地で走りこみなどしてもよいでしょうか?」


「駐車場のこと?別にいいわよ。ただ、車が来たらどいてね。」


 おかまさんの許可も得られたので、裏の駐車場へとまわる。

 駐車場の広さは学校のグラウンドぐらいで、一周すれば400mぐらい走れそうだと思った。

 8箇所に街灯が灯り、この暗さの中でも足元は見える。


 アーティファクトをクリスタルエッグとスパークトルマリンに付け替え、荷物をミケちゃんに見張っててもらう。

 ミケちゃんは駐車場の隅で一眠りするそうだ。


「寝るなら娼館まで送ろうか?」


「あちきはもうハンターにゃ、娼館には帰れないにゃよ。

 おにいさんの泊まってる宿を後で紹介してにゃ。」


「わかった、それと先に宿に行く?」


「一眠りしたら、あちきも少し運動するにゃからいいにゃよ。」

 そう言ってミケちゃんはバックパックの近くで丸くなった。


 さて、運動するか。

 食べたばっかしだし、まずは軽めにゆっくりとやるか。

 腕立て300回にスクワット300回をゆっくりと1回ごとに息を吐きながらこなす。

 これだけやっても腕が少しだるく感じる程度で痛みなどが無い。

 アーティファクトの力は本当に魔法としかいいようがないな。

 やりすぎると流石に腕が痙攣してくるのでほどほどにしておく。


 次は走り込みだ。

 持久走が体力作りに良いのかもしれないが、あまり時間を掛けたくないので徒競走にした。

 駐車場1周400mを何回かダッシュしてみよう。

 何回できるか楽しみだ。


 1周ごとに1分休みを入れて、10週したところで体に力が入らなくなってきた。

 細胞の奥からの飢餓感、エネルギー切れだ。

 ・・腹減ったぁ。

 駐車場に寝そべってたら、頬をつんつんされる。


「おにいさん、大丈夫かにゃ?」

 ミケちゃんが心配してくれたみたいだ。


「ん、大丈夫だよ。疲れただけ。」


「途中から見てたけどハリキリ過ぎにゃ。体壊すにゃよ?」


 俺は左右を見回して小声で言う。


「実はこれもアーティファクトの力なんだ。かなりきつい運動をしても少し疲れるだけで済むんだ。」


「そんなのもあるにゃか!」

 ミケちゃん、ちょっと声が大きいです。


 スパークトルマリンを外して、ミケちゃんに見せる。

 その鮮やかなネオンブルーにミケちゃんの目は釘付けだ。

 震える手でスパークトルマリンを受け取り、それを眺める目はトロンっとしている。

 しっぽはさっきから左右に振りっぱなしだな。


「これ、すごいにゃー。白いのもきれいだったけど、これもっとすごいにゃー・・。」

 スパークトルマリンに頬ずりしながら、ミケちゃんはうっとりとしている。


 さて、万が一にもミケちゃんが安全のため装備しないように言いつけてから、一度返してもらう。

 ミケちゃんがいくつのアーティファクトを装備できるのかわからないので、これから調べてみよう。

 調べるには、アーティファクトを暴走させるところまでやらなければいけないのが困ったところだ。

 スパークトルマリンは電気を暴走させるから非常に危険であり、クリスタルエッグは放射能を吸収するという特性上、実感がつかみにくい。

 そうなると、残るは重さを吸い取るオブシディアン・タールである。

 以前に暴走させた経験から、アーティファクトの暴走はその力の安全リミッターが外れることで、その性質の反転などは起きないと考える。

 オブシディアン・タールは物の重さを吸い取り、自分自身の体重には関与しない。

 これが暴走した場合、自分自身の重さを吸い取るようになるのではと考えた。

 さぁ、これから実験だ。


 クリスタルエッグとスパークトルマリンを装備する。

 俺のCap値は2.6だから、3個目は装備できない。

 右手にオブシディアン・タールを持ち、装備すると念じる。

 念じた瞬間、オブシディアン・タールは黒紫の光を放ち始めた。

 足裏に感じる圧力が減ったかな?

 俺の体重は65kgだから、60kgの重さを吸い取るオブシディアン・タールでは浮くほどではないんだよな。

 ちょっとジャンプしてみる。


 軽く蹴ったつもりなのに3m近く飛んだ!


 何て力だ、しかもこの暴走は体に負担を感じない。

 これは使えるぞ!


「はわ!おにいさんすごいにゃ!あちきも負けないにゃ!」


 ミケちゃんも俺に続いてジャンプしてるが、素で2mほど飛び上がった。

 流石ミケちゃんですわ、リスペクトっすわ。




スパークトルマリンのイメージはパライバトルマリンです。

検索するとネオンブルーのきれいなトルマリンが見れます。

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