第25話 トレンチコート
銃弾を再装てんするの忘れてたので書き足し
川で新たなアーティファクトを採取し、川辺へと戻る。
川岸ではミケちゃんが心配そうにこちらを見ていた。
「おにいさん!ピカッて光ったにゃ、大丈夫にゃ?」
心配してるのかミケちゃんのしっぽは水平に上がり、ぷるぷる震えてた。
「大丈夫だよ、光るだけでなんともないから。」
「よかったにゃ。」
安心したのかしっぽは下がった。
川から上がり、あらためて手の中のアーティファクトを見る。
透明なたまご型の石、クリスタルエッグだ。
これは放射能を吸い取る力を持った、装備する際の基本となるアーティファクトである。
基礎となる為、これはいくらでもあって良い。
良い物が手に入った。
ミケちゃんにも見せる。
「わぁ、さっきのヤツと同じヤツにゃ。」
ミケちゃんは楽しそうに透明な丸石を眺めてる。
「これはダブったからミケちゃんにあげるよ。」
「え!いいのかにゃ?ホントに?」
びっくりして、しっぽがピンッ!と立っている。
「うん、これはアーティファクトを装備する上で基礎となる石だから大事にしてね。」
ここでミケちゃんに他のアーティファクトの力や毒性(放射能を放つこと)等も説明した。
放射能に関しては目に見えない毒だと説明し、それにドン引きしていたが。
概ね、理解してもらえたようだ。
ミケちゃんはニコニコしながら手の中の石を眺めているが、ミケちゃんのつぎはぎだらけのワンピースにはアーティファクトを装備するポケットが無い。
防御力の点でも不安だし、これもなんとかするか。
「ミケちゃん、俺にはもう1つ別の力もあるんだ。」
「ん、なんにゃ?」
「このスマホのアプリを使って武器や防具、便利なアイテムなんかを呼び出すことができるんだ。」
「お、よくわかんにゃいけど、また魔法にゃ?それはあちきにも使えるのかにゃ?」
「うーん、これは俺専用・・、かな?」
「それは残念にゃ。」
と言いつつもしっぽはくねくねと動き、あまり残念そうではない。
手に持ったクリスタルに夢中みたいだ。
「それで今からミケちゃんの新しい服を呼び出そうと思います。」
「え?!服ももらえるの?そんなにもらっても大丈夫なのかにゃ?あ、可愛いの希望にゃ!」
混乱して、しっぽは周りの草をぺしぺし叩いている。
「大丈夫だよ。ただ戦闘用のコートにしようと思うから可愛くはないかも。」
「それでもうれしいにゃ!ありがとうにゃ。」
しっぽもくねくねして、うれしそうだ。
さて、選ぶか。
SHOPアプリを起動して、まずは残高の確認だ。
現在の所持金は・・と、1675(+13)ルーブルとなっている。
13の内、1はハゲネズミの分として残り12がアメーバ6体分なのだろう。
アメーバは1体2ルーブルか、ハンドガン用の弾が2ルーブルだから、撃っても赤字にはならないみたいだな。
覚えておこう。
目当ての商品は防具のトレンチコート、値段は500ルーブルだ。
材質は俺の戦闘服から補強プレートを抜いたもので、かなりお買い得な値段となっている。
さて、サイズ調整はできるみたいだが、色も選べるのか。
「ミケちゃん、色は何色がいい?白と黒とグレーにカーキ色、それと青と赤になるんだけど。」
色を聞いたら、ミケちゃんはうーん、と悩んでしまった。
可愛い色も無いし、俺は白か赤なんかが似合うかなって思ったけど。
ミケちゃんは、勇者なら白・・、いや悪人を断罪する・・黒か・・、とブツブツ唱えてる。
「決めたにゃ、黒でおねがいにゃ。」
色も決まったので、140cmのSサイズで注文する。
注文確定ボタンを押せば、目の前が光り、足元に光の球体が生まれた。
光が収まると黒い折りたたまれたコートが残り、今度は改造をする。
改造欄は、と。
・トレンチコート
■耐銃弾ジェル追加 [銃弾耐性UP、+5kg] 費用200ルーブル
■温度調整機能追加 [保温性、快適調整追加] 費用100ルーブル
■補強ポケット追加 [ポケット追加] 費用20ルーブル
追加できる機能は3つか。
銃弾耐性は欲しいが予算に余裕が無いのと、重さがな。
これは後回しにするとして、温度調整機能は使い心地を聞いてから考えてもいいだろう。
今、必要なのはポケット追加だな。
このトレンチコートは普通のポケットしか付いてないからな。
安いし4つほど追加しとくか。
買ったら残金は1095ルーブルか。
改造ボタン、ポチッとな。
手元のトレンチコートがピカッと光ると腰の辺りに4つの金属製のポケットが追加された。
トレンチコートの外観は、腰の辺りにベルトが着いており、ちょうど補強ポケットの下を通って締める形になっている。
細身で体のラインがでやすいタイプのコートで丈は長く、膝まで隠れそうだ。
首元にはフードが付いてて、滑水性の高い素材だから雨が降ってきても大丈夫そうだな。
俺が手にとって眺めていると、それを見てたミケちゃんがそわそわとしてる。
しっぽも先端がくねくねしていて、まだかなー、まだかなーという感じだ。
「ああ、ごめんね。はい、コレ。」
ミケちゃんに手渡す。
「ありがとうにゃ!」
そう言ってミケちゃんはちょっと眺めた後、すぐに袖を通した。
「どうかにゃ?似合うかにゃ?」
コートはミケちゃんの体格にぴったしで、黒く艶やかな腰や袖の細いラインが女性らしさを出している。
新品のコートを着たミケちゃんは中に着てる、今までのボロボロのワンピースに比べ、言葉は悪いが貧乏臭さが抜けて良いとこのお嬢さんに見える。
なんか野良猫から家ネコになった感じだ、これも失礼な表現だが。
貧乏っぽいミケちゃんも可愛かったが、コレはコレできれい目で可愛い。
「うん、かわいいよ。」
「そうかにゃ、照れるにゃー。ありがとうにゃ。」
ミケちゃんはしっぽを手でもてあそびながらモジモジしている。
コートの腰の後ろの部分から下が真ん中で2つに分かれていて、そこからしっぽが出せるみたいだ。
ミケちゃんにクリスタルエッグを腰のポケットに仕舞うよう薦めると。
「コレ宝物入れにゃー」と、うれしそうにポケットに仕舞いこんだ石を見つめている。
さて、装備も整ったし、そろそろ帰る支度をするか。
銃弾も弾倉に再装てんする。
一応、予備の弾倉にも詰めておくか。
アメーバは全て仕舞ったが、ハゲネズミはまだだ。
アメーバが襲ってたハゲネズミは見た目はほとんど外傷が無い。
鼻の辺りが火傷の様に爛れているぐらいか。
アメーバは酸を持っているみたいだな。
毒性はどうなんだろう?
「ミケちゃん、これ食べても大丈夫かな?」
「んー、アメーバに毒があるとかは聞いたことが無いにゃ。
とりあえずネザーおばさんの所に持っていってみるかにゃ?」
ハゲネズミを俺のバックパックに仕舞い、帰る支度は出来た。
空は茜色に色づき、ぐずぐずしていたら夜になってしまう。
町へと戻る途上、アメーバの特性に付いて考える。
アメーバは仲間を呼ぶが、ハゲネズミと戦っていた時は呼んでなかった。
自分から襲うときは呼ばないということかな。
それと川べりで迎え撃つ際にこちらを見失ってオロオロしていたように見えた。
俺たちは正面に居たのに、それに気づいてないような仕草をしていたから、目は見えてないのでは?
おそらくアメーバは目が見えず、音や匂いなどで相手の気配を探るのでは?、と考える。
この2点は今後のアメーバ狩りに利用できそうだ。
遠目に東の外壁が見える。
ここら辺になると川で採取をしている子供たちの姿もよく見かける。
スラム側の排水溝の手前に近づいたところで排水溝から叫び声が聞こえる。
「逃げろー!」と。
思わず立ち止まると、排水溝の中から3人の男たちがこちらへ駆け込んできた。
その後ろからはアメーバの群れが追ってきている。
排水溝の近くには、棒立ちになった子供たちがまだ残っていた。




