第2話 確認
第1話からのつづきになります。
スマホに残されていたメッセージを読み、思わずカッとなる。
「本人の意思も確認せずに勝手な!糞!糞!」
突然の転移、自分が何もかも無くしたことへの不安、新世界への恐れ、これを仕組んだ存在への罵詈雑言。
腹の底から湧き上がる感情は唇を通り、汚い言葉に変換され、手足は忙しなく震え、地団駄を踏み続け、虚空へと金切り声を張り続ける。
俺は自分のことをまるで壊れたシンバルのようだ、と他人事のように思った。
10分か20分か、そうしてようやく心が落ち着いた。
だが腹の底に不安が重く残っている。
「これからのことを考えなきゃ・・」
とにかくまずは情報収集、スマホを調べる。
見ればアプリがいくつか増えている。
・本試験においてのガイダンス
・SHOPアプリ
・オートMAPアプリ
・ステータスチェッカー
・サルでもわかる機械修理法 -初心者編-
・プログラムハッカーVer.1.0
・各種図鑑
これらが新しく増えていたアプリだが、それ以外にも俺のスマホはいろいろと改造されているらしい。
ガイダンスをちょっと読んでわかったことだが、まず電池の残量が無限になり、本体も特殊合金と強化ガラスで出来ていて、CPUやメモリも異世界の未来技術で作られたものらしい。
見た目が同じだけで中身はまったくの別物だ。
そして、ガイダンスの中身だが要約するとこうだ。
・ここが地球とは次元の違う、異世界惑星ソユーズであること
・試験と言ってるが具体的な目標は提示せず、生きることを最優先で好きにやっていいということ
・ネトゲ<探索者>に近い設定の世界なので、それを参考に行動することをおすすめするということ
・この世界は100年前の核戦争で滅びかけ、核の冬がようやく終わったことで、今は復興期に差し掛かってること
・この世界に生息する生き物は、人間と亜人とミュータントと呼ばれる変異した動物たち、生き物ではないが自立した機械たちがいる。
・亜人は核戦争後に崩壊した地上での適応を目指して作られた、新しい人類であること
・亜人には優しくしてあげようと繰り返し書かれている
・俺の頭には、この世界の言葉と文字が前もって転写されていること
・近くにある町はチェルシー、使われている通貨はシリング、SHOPアプリで使う通貨はルーブル
そして、装備の再チェックを行う。
さっきは気づかなかったが、俺の後ろにはバックパックが置いてあり、中には水筒と3日分の食料、拳銃弾30発、腰につけるサイドバックに、内側が鉛で内装された箱、そしてアーティファクト探知機が入っている。
金は無い、ポケットも探ってみたが見つからなかった。
うーむ・・
拳銃は改めて見るとグロック17だと思う、フルオート機構が無いのでグロック18ではないと思う。
銃に関しては、ゲームでの知識ぐらいしかないが、昔海外の射撃場で実銃を撃ったことがあるので撃ち方はわかる。
ナイフは、サバイバルナイフだということぐらいしかわからなかった。
SHOPアプリを起動してみる。
出るのは商品リストと使い方。
使い方を読んでみる。
SHOPアプリで使われる通貨はルーブル、ルーブルは生き物を殺すか見つけたアーティファクトを売ることで手に入る。
それ以外の方法でルーブルを手に入れるには、他人から譲ってもらうくらいしか無いらしい。
俺以外にも誰かいるのだろうか?
話が逸れたが、SHOPで売っているのは各種銃器に銃弾、爆薬に近接武器、防具は衣類から戦闘服に強化外骨格にシールド、道具は食料に探知機、各種上位アプリといったところか。
武器や防具は金を払えば強化でき、新しい機能を付けたりもできるらしい。
ここら辺は<探索者>と同じ設定だな。
探知機だがこれはアーティファクト探知機と言ってアーティファクトを探すのに使う。
アーティファクトはエーテル体で出来ていて、そのままでは見ることも触れることも出来ないそうだが、探知機から出る波動をぶつける事で見えるようになり、人が見ることで存在が確定され物質化するらしい。
シュレディンガーのほにゃららみたいな物だな、探知機で具現化し、見て、確認することで存在が確定され、物質化する。
このアーティファクトが、この世界に生まれた新しい要素で、この世界の復興と発展に繋がるのを期待されてるようだ。
俺はそれを確かめるテスターなわけだな。
好きに生きろとも言われてるし、これを使ってこれからの生活に役立てればいいのだろうと思う。
ちなみにアーティファクトだが<探索者>でも似たような存在であった、向こうの方がもっと謎めいた謎物質でもあったが。
オートMAPは自動で現在位置を探索し地図に書き加えてくれるらしい、現在の地図は半径50mほどだけが映っていて、5kmほど離れた所にチェルシーと書かれた光点が見える。
まずはこの町を目指さないとな。
ステータスチェッカーはゲームにも無かった要素だ。
<探索者>はステータスと呼ばれるものが無く、HPとSPは皆同じで、装備の差で強弱をつけるゲームだったからだ。
もちろんLvも無い。
ちょっと期待して画面を覗くがやはりLvは無い、むー・・
代わりにあるのがステータス値。
ステータス
Name サトシ
Age 20
Hp 100
Sp 100
Str 100.0
Vit 100.0
Int 90.0
Agi 105.0
Cap 1.0
Nameの部分は名前だけか、俺の名字は千葉野というが、そこらへんは表記されないのか。
まぁ、名字は正直どうでもいい。
年齢も合ってるし、ステータスの項目を見ていかないとな。