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第24話 告白

 土手に開いた穴から次々とアメーバが湧き出し、こちらに向かって来ている。

 出てきた数は5体、前に見た大湧き出しと比べればずいぶん少ないがそれでもこちらよりも多い。

 まともにやり合えば不覚を取る可能性が高いだろう。

 ここは銃で一気に殲滅するべきだと、ハンドガン(グロック17)を抜き、構えるが・・

 土手は背の高い草が多く、足元をって来るアメーバを視認しにくい。

 これはマズイ、もっと開けた場所は?と、探して思いつく。


「ミケちゃん!川に少し撤退だ、そこで待ち受ける。」

 川へと急ぎ、膝まで水に浸かりながら声を掛ける。

 日がかげってきたので川の水は冷たい。


「わかったにゃ!」

 そう言ってミケちゃんは、俺のバックパックに飛びついてきた。

 濡れたくないんですね、わかります。

 ネコさんですもんね。


 ミケちゃんはバックパックを這い上がり、俺の肩に足をまわす。

 ちょうど肩車の形になった。

 こんな時だが、頭に触れる肉球の感触がうれしい。


 腰まで水に浸かる所まで川中を進み、振り返る。

 川べりからは5mほどしか離れてない。

 だが、川べりの辺りは背の低い草が多いので、これならアメーバの動きを見れる。

 川べりに向かって、ハンドガンを構える。


 10mほど先の川辺の草が揺れる。

 早速、最初の一匹がやって来た。

 ここまで一直線に向かってきたアメーバだが、草むらを抜けてきた辺りで、何故か右往左往している?

 だが、こちらには好都合だ。

 慎重にアメーバの核にレーザーポイントを合わせ、撃ち抜く!

 ダンッ!という音と共に着弾した箇所が弾け、アメーバの全体が波打ち震える。

 核を破壊されたアメーバはすぐにしおれ、縮み始めた。

 次から次へと同じように撃ち抜いていく。

 最後の5体目!と待ち構えていたら、5体目は敗れた同胞に触れるときびすを返して戻っていった。

 あれから、新たに土手の穴から出てきたのは目にしていない。

 一対一で戦える状況は貴重だろう。


「ミケちゃん、アレと一対一でやってみる。手は出さないでね。」

 ミケちゃんに声を掛け、アメーバを追いかける。


「? わかったにゃ。」

 川辺へと上陸すると、ミケちゃんは俺の肩から降りた。


 アメーバの足は遅い。

 川の中を進むのに少し手間取ったが十分間に合う。

 ハンドガンを腰に仕舞いながら、バックパックにくくり付けたハンマーを手に取る。

 土手の穴に戻られる前に追いつき、ハンマーで軽く突きを入れた。

 攻撃を受けたアメーバは戦う決意を決めたのか、こちらにゆっくりと近づいてくる。

 様子見をしていると、1m手前ほどで突然、縦に伸びた。

 その姿はピーナッツを直立させたような姿だ、上部の楕円形に核が入ってる。

 上側の核の入った楕円部分が後ろにのけ反ったと思ったら、戻す反動を使って体全体で飛び掛ってくる!

 咄嗟とっさに横に飛びのき、避けるがアメーバが落ちたところからはドンッ!とボウリング玉が落ちたような重い音がしてくる。

 当たれば、かなり痛そうだ。

 これでアメーバの攻撃を2つ見れた。

 貼り付きと飛び掛りだ。

 他にも無いのか?と、様子見をするがまた飛び掛ってきた。

 アメーバがのけ反った時点で横に回避していたので、楽々と避けれる。

 その後も2度飛び掛ってきたので、もう十分見たと判断してのけ反ったところにハンマーを合わせる。

 上段からの体重を掛けた打ち込みは、アメーバを地面に激しく叩きつける。

 強烈な衝撃を受けたアメーバはバウンドし、土手の方まで飛んでいった。

 でかいスーパーボールみたいだな、と思った。


 土手のほうに落ちたアメーバを回収する。

 縮んで固くなり、中の核はパックリ割れ、破裂していた。

 川辺にあったアメーバはミケちゃんが回収してくれてたので、全て俺のバックパックに入れる。

 アメーバの死体1つで5kgほどある。

 それが6つで30kgだが、アーティファクトオブシディアン・タールの力で重さをまるで感じない。

 ミケちゃんが、「あちきも持とうか?」と言ってくるがアーティファクトを使える俺が持った方が効率が良い。

 ここらでアーティファクトの話もしておくか。

 これから先もパーティを組むなら、隠し通せるものでもないしな。


「ミケちゃん、今から大事な話をするんだけどいいかな?」

 川辺の適当な石に座り、話しかける。


「なんだにゃ?」

 ミケちゃんも俺の近くの石に座り、応える。


「俺の秘密に関する事で、これを他の人にバレちゃうと俺はこの町に居られなくなるんだ。

 これからも俺とパーティを組むなら、それを秘密にできるかな?」

 自分の心臓の音が聞こえる、緊張しながら問いかけた。


「にゃ!ネコ族は仲間を裏切らないにゃ!」

 ミケちゃんは憤慨したようにしっぽをピンッと立たせる。

 少し毛が逆立ってるかも。


「ごめんね、そしてありがとう。

 実は、俺は魔法の力を持っている石を探すことが出来るんだ。」


「魔法ー?」

 ミケちゃんは訝しげに見てくる。


「うん、これを見て。」

 そう言って俺はバックパックを下ろし、手に持つ。


「これを持ってみて。」


 バックパックをミケちゃんの方に差し出し、持たせてみる。

 ミケちゃんは恐る恐る両手で持とうとして、すぐに気づいた。


「!? おかしいにゃ!さっきアメーバ入れたのに・・、入ってないにゃ?」

 ミケちゃんはバックパックの中を覗くが、


「あれ?入ってるにゃ。どういうことにゃ?」

 ミケちゃんは眉尻を下げて不思議顔だ。


「魔法の力で重さを無くしてるんだよ。」


「・・おにいさんの歳で魔法は無いにゃ。正気になるにゃ。」

ミケちゃんは、しょうがないなコイツという目線を返してくる。

中二病を患ってるのはキミの方なんだよ、と言いたいがぐっと我慢する。


「いや、そうじゃなくて。本当に魔法なんだよ。」


「ふーん、何で魔法が使えるにゃ?」

 まだ疑っている顔をしている。


「この石を持つと魔法を使えるようになるんだ。」

 そう言ってオブシディアン・タールをポケットから取り出す。


 オブシディアン・タールを見ても、まだ疑問顔だ。

 触ろうとしてきたので手を引っ込める。

 これ、放射能放つからなぁ。

 それならとクリスタルエッグも見せてみれば態度は一変いっぺん

 緑色の光をチラチラと放つクリスタルに目は釘付けだ。


「これは確かに魔法っぽいにゃ!」


 女の子は光り物が好きというのを実感する。

 オブシディアン・タールを鉛の保管箱に入れ、クリスタルエッグをミケちゃんに持たせてみる。

 これは放射能を吸収するだけでデメリットが無いので、持たせても平気だろうと思ってだ。

 ミケちゃんはクリスタルエッグを様々な角度から眺めたり、日の光にかざしたりしている。

 その表情はうっとりとして、しっぽもゆらゆらと揺らめいていた。


「ふわぁぁ・・、魔法ってホントにあったんにゃねぇ。」


「うん、俺はある人からその力を確かめるのと自由に使っていいと言われてるんだ。」

 神様に関しては言わない。

 流石にアレはうさんくさすぎる。


「魔法ってどう使うにゃ?」


「それを装備するってイメージすれば使えるよ。」


 言うが速いか、ミケちゃんの持っているクリスタルエッグが一瞬輝く!


「え?」


「ん?どうしたにゃ?」


「いや、今一瞬光ったから・・、ミケちゃん、体に変なところ無い?」


「んー、特に無いにゃ。」


 クリスタルエッグは放射能を吸収するだけだから、実感は持ちにくいからなぁ。

 だが、あの輝きようを見れば、ミケちゃんが装備してるのは間違いないと思う。

 俺以外でも装備できるということか。

 ミケちゃんがいくつ装備できるか、安全に確かめる方法はないかな?


「今、光ったからミケちゃんも魔法の石を使えるみたいだよ。」


「本当かにゃ!」

 しっぽがピーンっと立ったぞ。


「本当、本当。しかも実はこの付近にも魔法の石が隠されてるみたいなんだ。」


「え、え?どこにゃ?」

 ミケちゃんは左右を見渡す、しっぽで近くの草をなぎ払う勢いで。


「あの川の中にありそうだから、ちょっとそのクリスタルエッグを返してね。」


 ミケちゃんからクリスタルエッグを返してもらい、装備する。

 さっき川に入ってずぶ濡れのままなので、着替えずそのまま川へと向かい、アーティファクト探知機を向ける。

 反応はやはり川の中のようだ。

 川へと入る、ちょっと冷たい。


 カリ・・カリ・・--


 と、ガイガーカウンターが反応しだした。

 が、クリスタルエッグがあるので気にしない。

 むしろ、この音が大きくなる方へ向かう。


 ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ!!・・--


 ガイガーカウンターの音が激しくなった。

 もうすぐだと思い、大股で進むと探知機から一際強い光が放たれる!

 瞬間、目の前にバチッ!と電撃が走ると、光が寄り集まり、石となった。

 石の周りを電気が円状に飛び交い、鳥かごの様になって浮かんでいる。

 すぐに石を取り、川辺へと戻る。

 笑顔で手の中の石をミケちゃんに見せる。

 ミケちゃんは唖然としていた。




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