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第23話 アメーバ

 ポチ君に付いて行って、殺人アメーバの出るという穴を見に行くことになった。

 その前に、スマホを取り出したままだったので、せっかくだからステータスチェックに軽く目を通す。


 ステータス


 Name  サトシ

 Age   20


 Hp  100

 Sp  100


 Str   122.0 (+1.0)

 Vit   107.0 (+0.5)  

 Int   95.0  (+3.0)

 Agi   109.0 (+1.0)

 Cap   2.6  (+0.4)


 預金 1662ルーブル (+6)


 2日ぶりにステータスを見たがIntを中心に少し上がってる。

 Intが上がったのは常識を少しずつ学んでいるからかな?

 それより預金が思ったより増えている。

 あれから俺が倒したハゲネズミの数は3体だから、+3ルーブルのはずが+6になっている。

 これってミケちゃんが倒した分も入ったみたいだ。

 パーティを組んでいるからか?

 だが、スマホをいじってもミケちゃんのステータスは確認できない。

 単純に、スマホの近くで倒したものをカウントしてるのかもな。



 スマホを仕舞い、川辺沿いにポチ君について行く。

 日は斜めに傾き、その陽光は柔らかくなっている。

 土手を抜ける風が背の高い草を揺らし、それにシンクロするようにミケちゃんとポチ君のしっぽが揺れている。

 そんな光景を楽しみながら途中、橋を1つくぐった所でアーティファクト反応を見つけた。

 東側の川では初めての反応だ、後でりに行くとしよう。

 橋をくぐって、すぐの所でポチ君が止まる、目的地に着いたようだ。

 スラムの排水溝から300mぐらいかな、あまり離れてない。



「あの穴だよ。」

 ポチ君が指差す方向を見ると、60cmほどの穴が土手に開いている。

 思ってたよりも小さな穴だ。

 排水溝と違い、土手が陥没して自然に出来たように見える。

 土手の穴を観察していたところ、


「ん、おにいさん。あそこ。」

 ミケちゃんが俺の腕を引っぱり川を指し示す。


 川辺には、ハゲネズミと透明なウネウネが争っている光景が見えた。

 あの透明なウネウネが殺人アメーバだ。

 大きさは50cmほどで体のほとんどが透明で、中にソフトボールほどの青い核がある。

 ハゲネズミとアメーバの戦いはほぼ互角のようだ。

 ハゲネズミが必死に噛み付き、アメーバも負けじとハゲネズミの頭部をその体で覆おうとしている。


「ね、いたでしょ。」

 ポチ君がこちらに振り返る。


「ん、確かにいたにゃ。じゃ、お駄賃をあげるにゃ。」

 そう言ってミケちゃんは俺のバックを軽く叩く。


「パンはまだあるかにゃ?」


「パンはもう無いよ、ソーセージならあるけど。」

 バックパックを下ろし、ソーセージを取り出す。


「はい、これ。教えてくれてありがとうね。」

 ソーセージを差し出せば、ポチ君はとてもうれしそうだ。


「わ、いいの?ありがとう。」

 しっぽをぶんぶん振って喜んでくれている。


 ポチ君はソーセージの包装を少しだけめくって、その香りを楽しむと口の端からよだれを少し垂らしながら、ニンマリと笑った。

 ちょっとだらしない顔である。


「ねぇねぇ、あちきのは?」

 ミケちゃんが腕をぺしぺし叩きながら催促してくるのだが。


「ごめん、もう無いよ。」


 そう伝えると目をまん丸にし、愕然がくぜんとした表情を向けてくる。

 だが、無いものは無い。

 それを理解したミケちゃんは目を細めて、ポチ君に視線を移す。


「あ!じゃあ。僕行くね。また何かあったら誘ってね。それじゃ!」

 ポチ君は脱兎の如く逃げ出した。


「待つにゃ!分け前を寄こすにゃ!」


 ミケちゃんが引き止めるがポチ君は止まらず、あっという間に遠くまで逃げ切った。

 すごい加速だ。

 時速40kmぐらい出てるんじゃないだろうか、オリンピック選手並みだ。

 ミケちゃんがジトッとした目でこちらを見てくるが、もう差し出せるものが無い。


「後で屋台おごるから、それで・・。」


「仕方ないにゃー。」

 なんとか機嫌は直ったようだ。


 ミケちゃんの機嫌をとって、もう一度ハゲネズミとアメーバの戦いに目を向ければ、勝負の軍配はアメーバに上がったようだ。

 ハゲネズミの頭をアメーバが完全に覆い、ハゲネズミは横たわり動かない。


 さて、獲物を横取りするみたいで気が進まないが、群れる習性のあるアメーバと一対一で戦える機会は逃せない。

 ミケちゃんに顔を向ければ、すでに硬鞭こうべんを抜き放ち、目の瞳孔も縦に細く引き締まって、やる気まんまんだ。


「俺が正面から注意を引く、ミケちゃんは横から。」


「わかったにゃ!」

 ミケちゃんは力強くうなづく。


 俺はハンマーを構え、アメーバに近づく。

 ハゲネズミの頭部に張り付いているアメーバをハンマーで突っついてみた。

 いきなり殴りかかってもいいのだが、今回はアメーバの攻撃パターンを見るのが目的だ。

 アメーバは突っつかれて、ようやくこちらに気づいたようで、気配には鈍感みたいだ。

 こちらに気づいたアメーバは体を震わせ、「ヴィィーッ!」と鳴き始めた。

 その動きに俺が戸惑ってたところ、横合いからミケちゃんが硬鞭で叩く!

 バスッ!という音と共にアメーバは鳴き止んだが、まだ生きてるようだ。

 ミケちゃんがさらに叩くがまだ蠢いている、衝撃にはかなり強いみたいだな。


「ミケちゃん、核を刺すんだ!」


「わかったにゃ!」


 ミケちゃんは硬鞭を逆手に持ち、体重を掛けて核を突き刺す。

 そうして、ようやく動きが止まった。

 死んだアメーバは徐々にしおれていき、直径30cmぐらいの球体になった。

 萎れていく過程で水分が抜けたようで、触ってみると固い。

 押すと少しへこむので粘土みたいな固さだ。

 回収しようとバックパックを下ろそうか、としてたらミケちゃんが叫ぶ。


「おにいさん!新手にゃ!」


 ミケちゃんの指差す方を見れば、土手に開いた穴からアメーバが続々と出てきているところだった。

 あの鳴き声は仲間を呼ぶためだったのか。



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