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第20話 ハンマーを手に入れたぞ。

 こん棒の改造を待つ間に昼食を済ませることにする。


 ミケさんと一緒に、南門のバザーから北の市場へ内壁沿いに進む。


 北の市場の賑わいも南に劣るものではない、空き地にはいくつもの屋台が広がり、雑多な身なりの人々が食事を楽しんでいる。

 目当ての屋台もそんな一つだ。


「ネザーおばさん!こんにちはにゃ。」

 ミケさんがしっぽと手を起用に振りながら元気良くあいさつをする。


「お姉さんって言いな!こんにちは、ミケ。娼館のお使いかい?」

 うさぎのおばさんはそれにお玉を振りながら応えた。


「娼館はもう辞めたにゃ。

 今はこのおにいさんと一緒にハンターをしてるにゃ。」


「辞めたって、あんた・・、大丈夫なのかい?

 あ、最近良く来てくれる人だよね?この子の面倒を見てくれてるのかい?」


「こんにちは。面倒を、というより俺の方が世話になってるかもしれません。

 俺はここら辺の土地勘も無いですから。」


「おにいさんは頼りになるにゃ。

 今日もおにいさんと一緒にネズミを2匹ずつ獲ったにゃ。」


「へー、あんたがネズミをねぇ。」


「ふふん!褒めてくれても良いにゃよ?」

 ミケさんは胸をそらして、ドヤ顔だ。


「はいはい、すごいねぇ。」

 うさぎのおばさんも笑いながらミケさんの頭を撫でる。

 ミケさんも気持ち良さそうだ。


「おにいさん、この子のことよろしく頼むねぇ。

 この子はそそっかしくて目を離せないからさぁ。」


「そんなことは無いにゃ。レディにゃよ?」


「はい、わかってます。出来る限りでサポートをします。」


「ありがとうねぇ。うちに食べに来てくれるならおまけするよ。」


 挨拶も済んで、食事を頼むことにする。

 俺はネズミの煮込みにカエルの唐辛子炒めとパン。

 ミケさんはネズミの串焼きにパンを頼んだ。

 それぞれ25シリングと20シリング、メニューの値段を見るなら5シリングずつおまけしてもらえたらしい。


「そういえばミケ、ネズミは持ってこなかったのかい?」


「ん?今日のはギルドに卸したにゃ。1匹50シリングにしかならなくてびっくりしたにゃ。」

 ミケさんは串焼きを頬張りながら応える。


「え?」


「まぁ、ギルドは安いからねぇ。」


「そうなんですか?」


「そうだよ、うちなら1匹100シリングで買い取るよ。」


 びっくりである。

 ギルドの倍だ、いやギルドが安すぎるのか?

 聞けばカエルの買取もしてるようで、こっちは1匹5シリング。

 カエル自体が1食分にしかならない大きさなので、これで上限いっぱいだそうだ。

 ハゲネズミは結構大きい、でかい頭や内臓を取り払っても6~7kgほどの肉が取れる。

 30食分ぐらいの量になるので100シリングで買い取っても利益が出るそうだ。

 ギルドが安いのは中間マージンを抜いてるからか?


「んー、ギルド安いなぁ・・、今後はうさぎのおばさんの所に持ってきてもいいですか?」


「お姉さんだよ、おにいさん?ま、今後はうちに持ってきな。

 ネズミ以外の肉でも食べれるなら、うちが他所に話しつけてもいいしね。」


「ありがとうございます。と、なると今後ギルドにはどう対応するか?

 まったく何も卸さないんじゃ、働いてないってことで資格取り上げられるからなぁ・・。」


「おにいさんに腕があるなら、アメーバ狩りでもしたらどうだい?

 アレはギルドでしか買取してないからさぁ。」


「殺人アメーバも食べれるんですか?」


「何言ってるんだい。あんなの食べれないよ。

 アレはガソリンになるのさ。」

 うさぎのおばさんは笑いながら言う。


「え!?ガソリンに?」


「そうだよ、アレを内壁の中にある地獄穴って呼ばれる施設に投げ入れると、ガソリンになって返ってくるらしいよ。」


 今日、2度目の驚きである。

 アメーバがガソリンに。

 そういえば、石油は大昔のプランクトンなどの微生物の屍骸が、地熱による熱と、バクテリアの働きによる分解で熟成された結果、石油へと変わると聞いたことがある。

 たしか、太平洋の底にプレート同士が重なり合う隙間があり、そこに溜まった微生物がプレートの動きにより、徐々に海底の奥深くへと引きずりこまれ。

 長い年月を掛けて、太平洋から大陸の中央部にまで移動し、そこに石油溜まり、いわゆる油田を作るとか。

 そういったことを人工的に行なえる施設が内壁の中にある、ということだろうか。

 崩壊前のテクノロジーは前の世界から見て、かなり未来に位置づけするレベルのようだ。


「そういえば、Eランクへの試験もアメーバを納めることだったな。」


「そりゃ、ギルドからしたら食料よりもガソリンの元を収めてくれた方がありがたいだろうからね。

 政府への印象も良くなるし。」


「なるほど。ところで作られるのはガソリンだけなんですか?

 他の燃料は?」

 石油は精製するとガソリンの他に、重油や軽油も取り出せると聞いたことがある。


「他の?さぁ、知んないねぇ。」


「そうですか。」

 ガソリン以外は作れないのか?

 それとも秘密裏に貯めているのか?

 内壁の中はどうも、秘密が多そうだな。



 食事を終え、またバザーの鍛冶屋へと戻る。


「こんにちは、どうですか?」


「おお、お客さんか。さっき出来たばっかしだ。」

 そう言って、バンダナを巻いた若い店主は柄の長いハンマーを取り出す。


「ほうほう、これですか。」


 ハンマーの全長は80cmほどで、槌頭つちがしらは直径4cmほどの四角形、長さは15cmほど、反対側はピッケルになっており湾曲して尖っている。

 柄はずいぶん削ったようだ、こん棒の太い部分が握りやすくなっている。

 重さは2.5kgぐらいかな。

 振り回すには結構力が要りそうだ。

 小回りを利かせるには難しそうだから、ハゲネズミみたいな小さい相手には今まで道理、蹴りで相手した方がいいかな。

 ミケさんにも持たせてみたが重そうにしてた。


「そういえば、なんでハンマーにしたにゃ?」


「ハンマーの方が丈夫そうだからだよ。」

 よほど強い相手には銃を使うし、近接武器を使うのは銃弾をケチるためだからな。


「えへへ、これで新しい武器でおそろいにゃ。」

 ミケさんは微笑みながら背の硬鞭を抜き、いろいろポーズをとっている。

 俺も店主もそれを笑いながら眺めた。


 硬鞭を抜いてから、ミケさんのしっぽの先っぽが小刻みに左右に振れている。

 どうやら、新しい武器を使いたくてウズウズしてるみたいだな。


「ミケさん、もう一回ハゲネズミ狩りに行っちゃう?」


「お、お、行くのかにゃ。」

 狩りと聞いてピシッと真面目な顔をしてるがしっぽは左右に元気良く振れているぞ。


 まだ日が高いうちに武器の試しをしてみるか。

 店主にまた来る、と挨拶をして、いつもの西の川辺へと向かうことにした。



明日、月曜日は休みます。

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