第18話 ネコが仲間になったぞ
ミケさんがハンターを目指すみたいだ、俺にとっては朗報だろう。
単純に仲間が増えるのがうれしい。
「俺も最近ハンターになったばかりで、あまり詳しいことは知らないけど力になるよ。」
「ありがとうにゃ。」
と言ってミケさんは微笑む。
右手にこん棒一本抱え、ツギハギだらけのワンピースを着たネコの女の子が、勇気を出して荒事の世界に進もうとしている。
俺は自分に出来る限りのことをしようと決心した。
「そういえば、そのこん棒はどうしたの?」
「ハンターになるって言ったら、女将さんが餞別にくれたにゃ。
あと姐さんたちがかばんと靴を用意してくれたにゃ。」
そういってミケさんはうれしそうにかばんと靴を見せてくる。
正直、新品には見えなかったがなかなか丈夫そうで、きちんとしたのを選んだのだろうなと思う。
丈夫そうで良いね、と言うとミケさんはうれしそうにうなづく。
「とりあえず、今日はハゲネズミの狩りをしよう。
その後でギルドに寄って登録の手続きをしようか。」
「わかったにゃ。がんばるにゃ!」
ミケさんにカエルを獲ってきてもらい、それを囮にしてハゲネズミを待ち受ける。
川辺に近い方が掛かりやすいと思い、少し開けた原っぱにロープで石にくくりつけたカエルを放置する。
結果は2時間で4匹、俺とミケさんで2匹づつ狩れた。
この時に、ハゲネズミに駆け寄る際、踏み込みがいつもより軽かったので筋トレの成果が出てるのを実感する。
俺が3匹、ミケさんが1匹背負いギルドへと向かう。
重さを吸収するアーティファクトがあるので俺が全部背負おうとしたのだが1匹ぐらいは自分で背負うと固辞された。
アーティファクトについてはまだ言ってないがどうしよう?
「そういえばミケさんはいくつなの?」
「おにいさん、レディに年を尋ねるのはマナー違反にゃ。
まぁ、あちきは14才にゃ。」
と、片目を細めながらミケさんは言うが、この場合ネコの14才なのだろうか、人の14才なのだろうか?
ネコって確か寿命20才ぐらいだよなぁ。
「なんか失礼なこと考えてそうにゃ顔してるにゃね。」
「いや、ごめん。亜人さんの寿命とかどれくらいだろうって考えていて。」
「亜人も人も寿命は確か変わんないはずにゃ。」
「そうなんだ、ってことはミケさん結構子供だったんだね。」
最初会った時、娼婦として働いてる人かと思って年上かと思ってた。
「子供とは失礼にゃ。立派なレディにゃ。
おにいさんいくつにゃ?」
「20だよ。」
「以外にゃ、思ってたより年上にゃ。
15くらいかと思ってたにゃ。」
「ははは、人生経験が薄いからね。
年よりも若く見られるのかも。」
ニートでしたからね。
「そういえばおにいさんの名前も知らないにゃ。
あちきはミケにゃよ。」
「そういえばちゃんと自己紹介してなかったね、俺はサトシ。
最近ハンターになったばっかしの新米ハンターだよ。」
「ん、よろしくにゃ。」
そう言ってミケさんと握手する。
ミケさんの手は肉球でぷよぷよで柔らかく暖かい。
指は思ったより少し長いな。
赤ちゃんの手を大きくしてネコの手に変えた感じだ。
「良かったらこのままパーティを組まない?
登録すれば同じFランク同士だし。」
「賛成にゃ!こっちからおねがいするにゃ。」
道中にミケさんとパーティを組んだりしながらギルドのガレージに着く。
向かう受付はもちろんいつものおかまさんの所だ。
「こんにちはー。」
「いらっしゃい、あらぁ!今日は可愛いお嬢さんを連れてるのね。」
「ミケにゃ。よろしくにゃ。」
「とりあえずハゲネズミ4匹の買取をおねがいします。
それと後でこの子の登録をおねがいしたいのですが。」
「あら、こんな可愛いお嬢さんがハンターになるの?
大丈夫かしら?」
「大丈夫にゃ。ネズミくらいなら獲れるにゃ。」
「へー、もしかしてその背のハゲネズミをお嬢ちゃんが獲ったの?」
「もちろんにゃ!今日は2匹獲ったにゃ。」
ミケさんは胸をそらして誇らしげだ。
「まぁ、それなら駆け出しとしてやっていけそうね。
ギルドは貴方を歓迎するわ。
さ、まずは買取の清算をしましょうか。」
ハゲネズミの買取は200シリング。
それをミケさんと半分こにした。
登録もスムーズに終わり、おかまさんに質問をする。
「今度、殺人アメーバを狩りに行きたいと考えているのですが、こん棒でも倒せそうですか?」
「あら、お嬢ちゃんを連れてアレを狩りに行くなら賛同できないわよ。
こん棒じゃ難しいし、もっと装備を整えなさい。」
おかまさんはミケさんを一瞥してそう言う。
確かにミケさんの装備が貧弱すぎるよな。
「こん棒じゃ無理ですか。」
「ええ、銃なら簡単だけどそれだと足が出るのよね。
アレ1体、100シリングでの買い取りだから。
槍やボウガンを使うのが一般的よ。」
「なるほど。参考になります。」
バザーで装備を整えたほうがいいな。
お礼を言ってギルドを出る。
また来るのよー、と言っておかまさんはミケさんに手を振っていた。
ミケさんも笑顔でそれに返す。
南門のバザーに向かうが手持ちは2265シリング。
ちょっと心許無いな。
まずは金を作るか。
そんなわけで南門近くのガンショップにやって来た。
「こんにちはー。」
挨拶をして店に入る。
ミケさんも、初めて入るガンショップに興味津々だ。
銃の値札を見るたびに、しっぽの毛が逆立っているぞ。
「この前の奴だよな、また買い取りか?」
店主は俺のことを覚えていたようだ。
9mm弾を売った後、他の弾の買い取り価格も聞いてたからな、察してくれたようだ。
「ええ、.44マグナム弾50発おねがいします。」
「お、ずいぶん持ってきたな。
マグナムならいくらでも買うぞ、7500シリングな。」
「ありがとうございます。」
これで手持ちが9765シリングになった。
一気に金持ちになったな。
「ついでにあのネコの嬢ちゃんにハンドガンはどうだ?」
「はは、さすがに銃を買う余裕は今無いのでまた今度。」
「おう、買うならうちの店でな。他所に行くなよ。」
挨拶をして店を出ようとする。
が、ミケさんが目を白黒させて棒立ちになっている。
「はわわ、すごい大金にゃ。」
「ははは、ネコの嬢ちゃんには刺激が強かったか。
だが一人前のハンターならもっと稼ぐぜ。」
「すごいにゃー。ハンターって儲かるんだにゃー。」
「まぁ、そこまで稼げるようになる前に大半はおっ死ぬけどな。」
「ひぇ・・。」
「あんましミケさんをからかわないでください。」
苦笑しながら言う。
「おう、悪いな、じゃ気をつけてな。」
「ありがとうございます、それでは。」
今度こそ挨拶をして店を出る。
「おにいさん、お金持ちだったにゃ?」
「たまたま使わない弾丸があったから売っただけだよ。
今度はこれで装備を揃えなきゃ。」
「へー、何買うにゃ?」
「とりあえず、俺用の近接武器とミケさんの分の装備を整えなきゃ。」
「う、あちきお金無いにゃ。」
「大丈夫だよ、弾売ったお金で余裕が出来たからこれで二人分揃えよう。」
「それはさすがに悪いにゃ。」
ミケさんは目じりを下げて困り顔だ。
「パーティを組んだのだから、装備を整えるのはパーティとしての責任だよ。
今回は俺に余裕があるから出すよ。」
「そ、そうかにゃ?それじゃこれは貸しにゃ。
いつか返すにゃ。」
申し訳なさそうな顔をしているがしっぽはピンと上に立ち、左右に少し振れて、うれしそうだ。
さて、何を買うかな。




