第16話 噛み合わないルール
今回、残酷な描写があります。
昨日は調子に乗ってかなりハードな筋トレをしたのだがアーティファクトを付けて一晩眠っただけで体の疲れはまったく無かった。
腕の筋肉はかなり傷めたのか、ずっとぷるぷる震えていたんだがそれもきれいに治っている。
筋肉の太さはあまり変わってないようだがハリが出て、弾力が柔らかくなった気がする。
良い筋肉は柔らかいっていうしな、筋トレで練りこまれて柔らかくなったんだろう。
ステータス
Name サトシ
Age 20
Hp 100
Sp 100
Str 121.0 (+20.0)
Vit 106.5 (+5.0)
Int 92.0
Agi 108.0 (+2.0)
Cap 2.2 (+0.2)
預金 1656ルーブル
ステータスを見てみればStrがかなり伸びていた。
アーティファクトを装備しての筋トレはかなりの効果があるようだ。
これに持久走や他の筋トレも混ぜて行なえばStrだけでなくVitやAgiも上がりそうだ。
ハンターは体が資本だ。
上がりきる所までやってみるか。
軽く柔軟をし、身支度を整えて朝の食事へと向かう。
昨日行ったうさぎのおばさんの屋台だ。
席は8つほど埋まっており、朝から盛況のようだ。
煮込みなどの時間のかかる料理は朝はやってないそうなのでネズミの串焼きとカエルの唐辛子炒め、パンを頼む。
朝から重そうな食事だがこの後、狩りに行くので精のつくメニューを選んだ。
代金は30シリングだ。
串焼きは焼きあがるのに時間がかかるのでその間まわりを見渡せば、ここの市場でもコーヒーを売ってるのを見つけた。
うさぎのおばさんに一言断って席を立ち、コーヒーを買いに行く。
値段は南の市場と一緒で10シリングだ。
味も南と一緒だった。
食事を終え、宿に戻り、狩りの準備だ。
忘れずに宿のおっさんから水を買い、出発する。
今朝は食事に出た分時間がかかったがミケさんはもう西の川辺で狩りをしているだろうか。
そんなことを考えながら西のスラムを通りがかった時、こん棒を持った5人の男に囲まれたミケさんを見かける。
なにやらミケさんと男たちでハゲネズミの取り合いをしてるようだ。
一人の男がミケさんの横に回り、蹴り飛ばした!
俺は慌てて駆けつける。
「何をしてるんだ!」
俺の怒鳴り声にネズミを奪って笑ってた男たちの声が止まる。
男たちは俺の服装、特に腰に下げた銃を見て固まっていた。
「ミケさん!大丈夫?」
「おにいさん・・、あいつらがあちきのネズミを奪ったにゃ!」
「奪ったとは人聞きが悪ぃなぁ!
俺たちはここを通る通行料をもらっただけだろう?」
「そうだ!ここは俺たちハイエナ団の縄張りだ!
きちんと通行料を渡さないお前らが悪いんだろうが!ああ!?」
「なんでお前らなんかにそんなの渡さなきゃいけないにゃ!」
「そうだ!こんなのただの強盗だろうが!」
「やかましい!俺様たちが決めたルールだ!
従えないなら痛い目を見ることになるぞ?」
そう言って男たちは俺とミケさんを包囲するように広がって行く。
俺はミケさんの前に立ち、威嚇のために腰の銃を軽く叩いて示す。
だが、その行為に男たちがギョッとして立ち止まったのも一瞬だった。
男たちはニヤニヤしながら包囲を完成させる。
前に3人、後ろに2人回られた。
「撃てるもんなら撃ってみろや?
だがやるつもりならそこのネコごとぶっ殺しちまうぞ!」
男の言葉にまだこちらの戦意が固まっていないことを見破られたのに気づく。
ミケさんは男の言葉を受け震えている。
このままではマズイ。
「おう!腰に立派なもん下げてるじゃねーか。
それ、よこせや?そしたら見逃してやってもいいぞ?」
男は勝手なことを言っている。
だが包囲は完成したのにまだ殴られていない、脅しが目的、いや手段か。
これがこいつらの狩りなのだ。
自分より弱いものを囲み、脅して奪う。
それがこいつらのやり方なら俺は俺のやり方を通させてもらう。
荒野の流儀だ。
そこまで考えたところで心がスッと冷えていく。
ハゲネズミと戦うときのように心から無駄なものを省き、ただ相手を倒すことに集中する。
俺は腰のハンドガンを抜き、目の前の3人に銃口を向ける、まずは威嚇だ。
その動作に男たちはギョッとし、固まる。
前の男たちが固まったのを確認してすぐに振り返る。
振り返れば、忍び足で俺に近づいて来てた男と目が合う。
男はとっさにこん棒を振りかぶってきたがそれを左の肘で受け止め、振り払う!
受けたときに衝撃はあったが肘のプレート部分で受けたので痛みは無い。
こん棒を払われた男は姿勢を崩し、無防備な頭を俺に向けている。
その頭に銃口を当て、撃ち砕く!
ダンッ!という音と共にこめかみから入り側頭部へと抜けた弾丸は出口の血肉を撒き散らす。
傾けた花瓶から水が零れ落ちるかの如く、頭から血を流し、男は崩れ落ちた。
突然の凶行に後ろにいたもう一人の男は固まっていた。
俺はその男へと大股で近づいていく。
男は慌ててこん棒を振り下ろす、が当然それを左の肘で受け止める。
肘で受けたまま、さらにもう一歩踏み込み、男の眉間に銃口を当て撃ち抜く。
眉間から入った弾丸は後頭部から飛び出し、血の注ぎ口を作り出す。
後ろの壁が真っ赤に染まる。
銃を構えながら今度は前の3人に向く。
そこで男たちが見せた反応は三者三様だった。
それを右から順番に撃ち抜いていく。
右の男は依然動きが固まったままだったので素早く腹にレーザーポイントを合わせて、撃ち抜く。
真ん中の男は悲鳴を上げながら頭を抱えてしゃがみこんだのでその頭にポイントして、撃ち抜いた。
左の男、さんざん世迷言をわめいていた奴だ。
そいつはすぐに背を向けて逃げ出したのでその背に慎重にポイントを合わせ、その背を撃ち抜いた。
右は重症、真ん中即死、左は重症といったところか。
相手の戦闘力は無くなったと判断したのでハンドガンを腰に収め、右手でナイフを抜く。
まずは近い右の男から。
首を切り裂くために相手の髪を掴み、顎を上げさせるがその時に目が合う。
心底怯えた視線に心が揺らぐ、だが右手は自然にその首を切り裂いていた。
ハゲネズミを仕留めるように。
最後は左の男だ。
通りは静まり返っている。
誰もが息を潜め、化け物を見るかの如く非難めいたスラムの住民たちの視線が飛び交うなか、静寂を断ち割るように俺の足音だけが響いていく。
男はまだわめいている。
糞だの、殺してやるだの呟いてるが俺の接近に気が付けば勘弁してくれだの、と泣き言に変わる。
「頼む、ここで手打ちにしてくれ。
そうだ、俺があんたの手下に・・ぐぇ!」
ただ無造作に髪を掴み上げ、首を切り裂く。
男の服でナイフを拭い、仕舞いながらその場に立ちあがる。
周りを見渡せば戦々恐々としたスラムの住民たちの視線が突き刺さる。
ミケさんも呆然としている。
やっちまったなぁ・・、と思った。




