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第162話 バザー内の商店たち

すいません、遅れました。

 ミケちゃんとポチ君の二人が荷物を取りに駆け出す。

 戻る前にポチ君に頼みごとをした。

 さて、先に行くか、というところで肩を掴まれた。

 

 「……右斜め後ろを見ろ、知り合いか?」

 ジニさんが小声で囁く。

 ゆっくりと振り返るとじっとこちらを見る目つきの悪い男が居た。

 俺と目が合うと、そそくさと群衆の中に紛れ込んでいく。


 「……物盗りか何かですかね?」

 

 「都市部にはああいうのも居るもんだ。一応、気を付けておけ」



 気を取り直し、ジニさんとランちゃんを連れて鍛冶屋へ。

 いつものバンダナをした店主が暇を持て余すように店番をしていた。

 店主に久しぶりに会い談笑しながら、二人を待つ。

 店主にチタンを扱ったことはあるのかを聞くと渋い顔をした。


「待たせたにゃ!」

 黒い金属製の棒を持ったミケちゃんがやって来た。


「持ってきたよー」

 ポチ君も荷物の詰まったかばんを背負って戻ってきた。


「おかえりー」


「にゃ、コレ頼むにゃ」

 ミケちゃんは俺に返事を返すと店主に棒を渡す。


「うん? 前の警棒のようにすればいいのか? って、これ鉄じゃねーな」

 手に持った重さで違いがわかるようだ。


「アルミ合金かチタンか……って」

 店主が困ったように俺の方に視線を向ける。

 それとは反対にミケちゃんはニコニコだ。


「どうにゃ? 良さそうな棒見つけたにゃ。前のは壊れちゃったから頼むにゃ。

 ほら、それに通すコブの部分もいっぱい拾ってきたにゃ」

 そう言って、カバンからチタン合金製のナットを取り出す。


「うーん……、チタンだと熱する温度も変わってくるからなぁ」

 店主が困ったように頭を掻く。


「難しいですか?」


「まぁ基本的には鉄と同じで真っ赤になるまで熱して、ナットを叩き合わせるだけだとは思うが……。

 コレ、1本だけか?」


「あと4本あるにゃ」


「じゃあコレ1本貰っていいか? それで練習してみる」


「別にいいにゃ。後でもう1本持ってくるにゃ」


「おお、悪いな。その分、代金はサービスするからよ」


 また明日来ると告げ、鍛冶屋を後にする。

 次はジニさんの希望したガンショップだ。


「こんにちはー」

「にゃー」


「おお、いらっしゃい。買い取りか?」

 薄暗い店内で禿げた店主がカウンターに座りながら、手を上げる。


「はい、これを……」

 ポチ君の背負ったカバンから弾などを取り出そうとしたところで、後ろから肩を叩かれた。


「おい、ここか?」

 ジニさんが店内を見まわしながら言う。


「はい、ここで弾の買い取りや銃器の販売をしてますよ」


「ふーん、ラン。メモを取れ」


「はい!」

 そう言って二人は壁に並んだ商品をじっくりと見始める。


「何だあれ?」

 店主が俺に聞いてきた。


「遠くから来た人たちで、この辺が珍しいそうでして」


「へー、それで今日は何を持ってきたんだ」


「あ、コレを……」

 ポチ君のカバンから金属製の大きな弾薬箱とハンドガンを10丁取り出す。

 どちらもビッグクーンの中で拾ってきたものだ。


「お、弾薬箱じゃねえか! 見つけてきたのか」


「はい、今回遠征した先で運よく見つけて」


「ちょっと査定するから待っててな」

 そう言うと店主は箱を持ち、中から弾を取り出すと中身を丁寧に調べていく。

 その間、俺たちも壁に並んだ商品を見ていくことにした。


 壁にはいろいろな銃が掛けられているが、前に来た時とラインナップは変わらないようだ。

 その中で一番値が張るものを眺める。


「これ、相変わらずたっかいにゃー」

「でも、これ欲しいなー」

 二人も同じものを見上げている。

 鍵の掛かったショーケースの中に銀色の少し古ぼけたハンドガンが飾られている。

 レーザーガンだ、値札には20万と書かれている。

 形は普通のハンドガンよりも一回り大きく、銃身が角ばっていて太い。

 グリップは指の形に合わせて溝が掘ってあり、その上の普通の銃なら弾に火を着ける薬室や排莢口はいきょうぐちの辺りは横に寝かせた円筒形になっていた。


「クーン、コレわかる?」


「レーザー兵器にしては小振りですね。将校用のコンパクトモデルでしょうか?」


「お、それに目を付けたか。買ってよ、ってロボット様じゃねーか」

 店主があざとくこちらにセールストークをしてきたが、クーンに気づき声を上げる。


「様って……」


「お前らこんな上客を連れてきたなら、先に言えよ。……へへ、今日はどんな御用でしょう?」

 店主が揉み手で寄ってきた。


「いえ、わたしは企業に属さないただのロボットですので、期待されるような事は……」

 クーンが戸惑う。


「へへ、そうおっしゃらずに。こちらをご覧になってたようで。どうです、掘り出し物ですよ?」

 そう言ってレーザーガンの収まったショーケースを開けていく。

 ミケちゃんとポチ君が間近で見ようとすぐに寄る。


「試し撃ちも済んでいて動作は確認済みですよ。射出時間は1チャージで5秒、チャージタイムは1分。

 燃料は電気でグリップの下に充電スロットが開いてます」


「5秒? 1発とかでなくてですか?」

 俺が尋ねる。


「ああ、こいつは引き金を引くと銃口から光が出る。引いている間ずっとだ。

 それが5秒間、撃ち終わるとチャージタイムを1分経てもう一度撃てるようになる。

 威力は30m離れた木を焼き切る事ができるぐらいだ」


「それはすごいですね……」

 うわぁ、これガチのやつだ。


「わぁ……、すごいなぁ」

 ポチ君は目を輝かせて店主の持ったレーザーガンを見上げる。

 ミケちゃんも欲しそうに見上げるが、値札が気になるようでちらちらと見ていた。


「それにしても電気で撃てるのか」

 俺が呟くとクーンが補足を入れる。


「レーザーと言っても結局は、光を寄り集めたものを射出しているものですからね。

 光源は内部のレーザーダイオード、それを銃身部の収束器が位相を揃え放射しているものかと思われます」


「流石、ロボット様だ。で、どうです?」

 店主が揉み手で寄ってくるが。


「いえ、見てるだけで。お金も無いですし」

 クーンがすげなく応えると落胆したようにケースに銃を戻す。


「それで買取の方はどうです?」


「ああ、箱が6000、弾が9mm300発で30000、銃の方も状態が良いな。

 ほとんど撃ってないんじゃねえか、アレ。1丁2000で20000。しめて56000でどうだ?」

 弾と銃は思ってた値段だが、弾薬箱は思ってたより安かったな。


「んー、箱はもうちょいなんとかなりませんか」


「うちみたいな商売だと助かるんだが、あくまで保管用の物だからな。

 これでいっぱいだ」


「そうですか」

 提示された値段で引き取ってもらうことにした。

 これは後で4人で山分けだな。


「それじゃ次はあたしたちだな」

 ジニさんが背負っていたカバンを慎重に降ろす。

 取り出したのは9mmの拳銃弾が入った箱。


「とりあえず1000発持ってきた。全部買ってくれ」

 ジニさんがそう言うと店主が困ったような、ありがたいような曖昧な表情を返した。



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