第161話 謎の3人
すいません、遅れました。
バザー最終日のお披露目の行進の事で文句を言っている二人を無視して、「成約済み」の札を掛ける。
何処に掛ければ良いのかわからなかったので、サイドミラーに掛けた。
「これで契約は完了ですね。実際のお引渡しまでもう少々掛かりますが、ご容赦ください。
オプション契約もたくさんお買い上げいただいて助かります。
何か1つサービスしますよ、何か欲しい物とかありますか? ナビとか」
バルバトロイさんから提案された。
「うーん……」
出来ればパワーアームなんか欲しいところだが、高いものは駄目だろう。
そうなると安価な小物で実用性が高いもの……。
車へと近寄り、運転席を眺める。
居住性を高めるようなものが欲しいと思ったのだが、運転席はやや狭めで物を新たに置くのには厳しそうだ。
次に荷台に、金属製の荷台は触るとひんやりとする。
「あ、荷台の床をなんとかできませんか? 板張りにするとか」
ミケちゃんたちは寝転がったりするだろうから、リアカーみたく表面だけでも木製にしたかった。
「それなら断熱シートをつけますよ。使わない時や荷台を洗う時には外せますし」
「ありがとうございます」
これでミケちゃんたちも存分に荷台の上で遊べる。
「ハンターの方々ですと荷台の上で夜を明かすことも多いでしょうしね。寝袋もつけますよ」
「重ね重ねすいません」
荷台には幌も付けられるようにしたし、これで遠出も楽になりそうだな。
バルバトロイさんと喋っている最中、周りがざわつき始めた。
振り返ると周りに人が集まり、遠巻きにこちらを見ている。
「ハンターとか言ってたけど、こんなやつらが買ったのか?」
「金持ちの使い走りじゃないか?」
などと声を潜めながら、こちらを窺っている。
耳をピクッと揺らしたミケちゃんが車に近づき。
「おやおや、わかってしまいましたかにゃ?」
車に寄りかかる様に片手を突き出しポーズを取る。
「ふふ♪」
ポチ君も運転席に上がると天井のサンルーフを開き、そこからひょっこり顔を出して群がる群衆に笑顔を向けた。
それを見た周りも、
「こいつら……我が物顔で!?」
「まさか、使い走りではなく……オーナーなのか!?」
「こんな小さな亜人のガキたちが?」
などとざわついていた。
「バカな、俺たち以外にもだと」
周囲の一角から声が聞こえる。
そちらへと視線を移すと、先ほどの原付バイクの近くに居た3人組が見えた。
声を発したのはその中で、腰に刀に似た剣を差した金髪の男のようだ。
横から肩をちょいちょいと叩かれる。
「あちらの方々もハンターを生業とする方々のようで、皆様のご同業のようですよ。
今回のバザーでは個人のハンターが購入されたのは皆様を含めて2件だけでして、お知り合いですか?」
バルバトロイさんが教えてくれた。
「ギルくーん、あの子たちもハンターだって。挨拶しておこっか?」
金髪の男の横に居る、ライダースーツを着たシャムネコの亜人が男に問い掛けていた。
声を聞く限り女性だろうか。
「う、うむ……だが」
男がその後ろの3台の原付と俺たちの軽トラを見比べる。
眉間にしわが寄った。
「ギル兄どうしたです?」
ワンピースを着たタヌキの少女が見上げる。
可愛らしい見た目と裏腹に、その肩にはサブマシンガンが掛けてあった。
少女の純真な眼差しに押されたか、男がこちらへと歩いてきた。
「やあ、君たちもハンターなんだって?」
「ええ、なってまだ日も浅いですけど」
「俺はギルダール、東の地からこの地へ冒険者になりにやってきた。
普段は遺跡の方を探索している」
「冒険者?」
「ふ、この地ではハンターと言うらしいがな」
「ギル君? 実家の方でもそーいう呼び方はしてなかったと思うなー」
シャムネコさんが疑問を問い掛け。
「です。そういうのはぷーたろーとかゴミ拾いって言うです」
タヌキの少女が口を挟んだ。
「そうやって、ロマンが無いからこんな辺境くんだりまでやって来たのだろうが!」
「お姉ちゃんとしては地元でおとなしくしていてもらいたかったなー」
「途中で拾われた私としては助かりましたけどね」
男が声を大きくするが、それに動じずに傍の二人が返す。
「それでおにいさんたちは何にゃー?」
ミケちゃんが尋ねる。
「なに、俺たちと同じく車両を買う、有望な若手ハンターが居たのでな。
声を掛けに来ただけさ」
「はぁ」
そう言って俺は頷き、男の腰元を見る。
黒い装飾の緩めな湾曲刀。
細身でありながらがっしりとした印象を、鞘に収まりながらも出すのはやはり刀に似ている気がする。
「なんだ、コレが気になったか?」
「ええ、知ってるものに似ている気がして」
改めて男の顔を見た。
彫りの深い造型、肌は小麦色とまではいかないが焼けており、金髪は自然な色合いで地毛にしか見えない。
どう見ても日本人ではない。
「最近、手に入れたものでな、業物だぞ」
男が誇らしげに剣を撫でる。
「何処でですか?」
俺が問い掛けるとシャムネコさんが困ったように眉を寄せ。
「あー、ギル君? あんまり長居すると悪いからそろそろ行きましょうかー」
「そうです、さっさと行くです」
それにタヌキの少女も同調し、ギルダールさんとやらを引っ張って行ってしまった。
「なんだったんにゃ?」
「さあ?」
ミケちゃんの疑問に空返事を返すが、あの刀らしきものについては聞きたかった。
車の購入という用事も済まし、次だ。
「次は何処へ行くんだ? あたしとしてはそろそろコレを金に換えてくれるところに案内して欲しいんだが」
ジニさんが背負ったカバンを親指で指す。
「んー、次は鍛冶屋にって思ってたんですけど……」
ミケちゃんをチラリと見る。
「はっ! アレを造るにゃ? おにいさん、材料は?」
ミケちゃんが俺の服の裾を引っ張り、そこで気づいたが材料を持ってくるのを忘れた。
「あ、それじゃ後回しにして先にガンショップに……」
「何言ってるにゃ! すぐに持ってくるにゃ、ポチ」
「うん」
「先に行っててにゃー!」
そう言ってミケちゃんは宿の方へと走って行った。
体調崩したので一日ずつ更新が遅れます。
今年の風邪は変だとは聞いてましたが、目や鼻の奥や歯茎がかゆい。
熱はすぐに引いたけど、いろいろかゆくて本当に変ですね。




