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第157話 商品案内

 バルバトロイさんから教えてもらった価格は、軽戦車以外なら買える額だった。


「これならなんとかなりそうだ」


「どれ買うにゃっ」

 ミケちゃんもうれしそうにしっぽを振るう。


「失礼ですがご予算の方は」

 バルバトロイさんが大きな体を僅かに縮こませるようにして俺へと視線を向けた。


「えっと1200万です」

 正確には1229万だ。


「おお! お客様はリッチな方の様で。それならカスタムも如何いかがですか」


「カスタム?」


「ナビや座席の追加、内装の換装から装甲、燃料タンクの追加まで、幅広く請け負っています。

 こちらの政府との取り決めで兵器の取り付けは出来ませんが」


「へー」


「武器はダメなのにゃ? あーいうの欲しいにゃ」

 そう言ってミケちゃんが指差す先には、部屋の隅に巨大なガトリングガンが。

 直径が30cmぐらい、長さは2mぐらいありそうだ。


「あれは私の私物でして、すいません。都市同盟政府の方から兵器に関しては持ち込みを制限されてまして。

 戦車も備え付けの大砲以外の追加武装を禁じられてますしね」


「残念にゃー」


「とりあえず現物を見てみますか?」


 テントから出て車の展示されている広場へ。

 成約済みの札の掛けられていない車を順に見ていく。


「まずはこちらですね。今回のバザーの目玉、T-60インパラ軽戦車です」

 そう言ってバルバトロイさんが指す先に出てきたのは、黄土色をした戦車。

 いや、カーキ色というのかな?

 全長4m、高さは2mぐらいか。

 横から見てずんぐりとした流線型は魚の形に似ている。

 頭の位置が逆で、頭が後ろ、しっぽが前だが。

 前面は斜めに傾斜をとってあり、後ろ半分は内部のスペースを取るためか膨らんでいる。

 左右に大きな履帯が付き、天辺にはやや小振りな砲塔が乗っかっている。

 そこから伸びる戦車砲もやや細めに見えた。


「武装の20mm機関砲は秒間10発、20mm砲弾を連射します。威力は重戦車相手以外なら一瞬で引き千切りますよ。

 装甲厚は前面が20mm、それ以外が10mmとなっています。加工は均質圧延鋼装甲で、素材には高強度モリブデン鋼を使用。

 強度的には、人が手に持てる程度の銃器では表面を引っかくことしか出来ないでしょう。

 重機関銃を用いた場合、100m以内で射撃してようやく貫通できるかどうかと言ったところになります」


「はぁー……、なるほど」

 軽戦車と聞いたからそんなに凄くないのかな、と思ったがやはり戦車は別格のようだ。

 元の世界では44口径のマグナムで車のエンジンを撃ち抜いたなんて話があったが、戦闘用の車両はまったくの別物。

 動く要塞の様だ。


「最大速度は時速60km、軽戦車としては大きめで車内スペースを広く取っているので、搭乗人数は驚きの……なんと4名ですよ!」

 バルバトロイさんが熱弁するが。


「……以外に遅いにゃ」

「乗れる人数もそんなに……、かなー」

 二人が酷評する。


「……」

 ジニさんとランちゃんは無言でぺたぺたと車体に触っていた。


「軽戦車って偵察用に作られていることが多いので、搭乗人数が少ないんですよ。

 一般的には2名までってのが多いですね。車体自体が8000kgと重いので、これでも速度は出る方ですしね。

 ちなみに私は一人乗りだったりします、ほら」

 そう言って、バルバトロイさんの腹部の装甲が持ち上がり、中にコックピットのようなものが見えた。


「え!?」


「私も元々は悪路踏破用の人型機動戦車ですしね」


「わ! すごいにゃ! 乗れるのかにゃ?」


「すいません、内部をいじられると大変なので」

 そう言って、装甲を閉めていく。


「えっと、失礼ですけどロボットの人たちって元々そういう風に作られた…方ばかりではなく、車……や乗り物の人も居るんですか?」


「AIを持っている機械は全て、あの時に魂を得ましたよ。形に意味はありません」


「すごいにゃ! バルさんみたいなのもあるのかにゃ?」

 ミケちゃんが妙なあだ名を付け始めた。


「いえ、複雑な操作を必要とする物はほとんどAIが組み込まれていますから。

 流石に同胞を売り渡したりはしませんよ」


「ああ、それで旧式の車が多い……」

 辺りを見渡すと、元の世界で売られていたようなレベルの車両ばかりが目に入る。


「おや、わかるのですか?」


「え、ああ、いや。バルバトロイさんを見ていて、明らかに技術的に……」

 とっさに誤魔化した。


「ああ、それもそうですね。人型はもちろん、高速機動戦闘での射撃制御、ミサイルの迎撃システムに補助ドローンの操作。

 そういった複雑な操作を必要とする物は、前時代ではすべてAIに制御が割り振られていて、あの時代の最新技術を組み込んだ兵器、車両はそういった物でしたからね。

 ここに並べてある物はそれよりも前の時代、AIを組み込まず機械式制御で人が動かせるものに限定してあります」


「そうなんですか」


「ええ、それでも使われているパーツは元の設計よりも良い物を使っていますよ。

 エンジンも今の技術で作れる物を使ってますし、種類も選べます。

 他にも再設計で計算しなおしていますので、外観を変えない程度にサスペンションやギアも弄ってあるので、乗り心地も良いですよ」


「それはすごいですね、ところで」


「種類って何ですかー?」

 ポチ君もそこに引っかかったのか、質問した。


「エンジンに使う燃料の種類です。ガソリン式か電気式か、変わったもので水素電池式もあります。

 売れているのはガソリン式ですね。これらはご購入の際に選べるようにしてあります」


「なるほどー」

 俺たちが使うのであれば、補充しやすい……


「質問が無ければですが、それでは次に一般車両の方を見に行きましょうか」



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