表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

160/169

第153話 朝の身支度

遅れてすいません。

 さて、何を選ぶか。

 とりあえず買う候補に入れているのが通信機。

 ミケちゃんたちと離れている時にも連絡が取れ合うのは必須だ。

 都市遺跡でギガントに追いかけられ離れ離れになるような事もあることだし。

 これがまず1つで500ルーブル。

 出来れば人数分欲しいが、まずはお試しで1つのみとするか。


 これで残金は4877ルーブルとなる。

 5000を割ったことで買える選択肢が大分減った。

 買えるのは近接武器に火炎放射器とアサルトライフルぐらいか。

 これ以外にもワイヤーガンがあれば遺跡での探索が楽になりそうなんだが。


「マスター、お悩みですか?」

 クーンがスマホを覗き込んでくる。


「ああ、装備の更新をしようかと思うんだが、道具を買う必要もあるし」


「武器は大事ですね」


「そうなんだが先の事も考えると弾薬を消費しない近接武器にするか、安全をとって連射の効く武器にするか」


「なるほど」


「まぁ、これは後々考えるか」


 とりあえず通信機だけ買うことにする。

 スマホを操作すると画面から光が放たれ、宙に寄り集まった光の帯が形を成していく。

 現れたのは色違いのスマホ。

 俺が元々持っているのがメタリックグリーンの外装に対し、メタリックな輝きを持ったオレンジのスマホが現れた。

 中身を確かめる。

 機能は通話とメールのみ。


「これだけか、改造は……あ、出来るのか」

 元のスマホを弄り、改造欄を覗くと。


 ■各種アプリ追加  費用100ルーブル

 ■ルーブル獲得機能追加  費用1000ルーブル


 改造することで俺の持っているスマホと同じ機能になるのか?

 予備としてフル改造しておくべきか。


「って、あれ? ルーブル獲得って俺個人に割り振られた能力じゃ……ないのか?」

 てっきりそう言うものだと思っていたのだが、違うのだろうか。

 よくわからなくなってきた。


 とりあえずオートMAPアプリだけ入れておく、これで離れていても互いの位置がわかるようになった。

 武器に関しては追々考えていくか。



 次の朝、ドアをノックする音で目覚める。

 寝ぼけ眼でドアを開けると赤髪の小さな頭が胸の辺りに見えた。


「おはよーございます」

 ランちゃんが元気良く挨拶し、その後ろでジニさんがよっと手を上げる。

 二人とも頭のターバンを外していて、赤い髪を下ろしている。

 廊下に差し込む光が当たり、赤銅色の輝きを返して……てかりが凄いな。

 ややオイルっぽいような。

 砂埃も少し付いている。

 顔は洗ったのか、さっぱりしているみたいなんだが。


「なんだ、あたいらの顔をまじまじと見て?」


「あ、すいません。おはようございます。昨日はそのまま寝ちゃったんですか? シャワーとか」


「シャワー? そんなのあったか?」

 ジニさんがランちゃんに聞くが、首を振られた。


「おはようにゃー、どうしたにゃ?」

 ミケちゃんも起きてきた。

 二人を見て、察する。


「大部屋には無いにゃ? 出かける前に浴びとくにゃ」

 ミケちゃんが二人を中へと招き入れた。


「ほう、水浴びが宿の中で出来るとは、やっぱ水の有る場所は違うな」

「すいません、お借りしますねー」

 二人がシャワールームの扉の前に立つと、そのまま荷物を降ろし、マントを外し服に手を掛け……。


「にゃにゃ!? 中に更衣室があるからそこで脱ぐにゃ!」

 ミケちゃんはそう言うと、キッとこちらを睨み。


「何見てるにゃ! 出てくにゃ」

 そう言って、俺の腰を押してくる。

 部屋のドアの方を見ると、そそくさとポチ君とクーンが出て行くところだった。


 部屋を追い出された俺たちは1階の受付へ。

 部屋の隅に置かれたテーブルに着き、時間を潰すことにした。

 そこに水の入ったコップが運ばれる。


「どうした景気の悪そうな顔をして」

 宿の主のロックさんが相席して来た。


「まあ、懐的には本当に景気が悪いんですけど、今は部屋を追い出されたところでして」

 シャワーについて話す。


「まあ、女の支度は時間が掛かるからしょうがねえな。それしても何処まで行って来たんだ?

 ロボットまで連れて来て?」

 ロックさんがクーンへと戸惑うように視線を向けた。


「こちらはクーン、俺たちの新しい仲間です。遺跡に行った後、いろいろあって砂漠の方まで……」

 これまでの旅を簡単に説明すると興味深そうに頷いてきた。


「旅なんてこの仕事についてから出来なくなったからな。うらやましいぜ」

 ロックさんがしみじみと言う。

 確かに街に定住するようになれば、早々遠出をする機会も無いだろう。

 こんな時、旅の思い出と共におみやげでも渡せればなと思ったのだが。


「あー、おみやげでも有ればよかったんですが……」

 戻るのにいっぱいでそこまで考えていなかった。

 何か渡せそうなもの何てあったかな?

 砂漠では武器になるものぐらいしか拾わなかったが、遺跡では前に……。


「いや、別にいいぜ。無事に戻ってきて宿泊を更新してくれるだけで宿としては御の字だぜ」

 茶化すように言われたが、更新についてもあったな。


「あー……そう言えば、前に遺跡で中身の入った酒瓶を拾ったんですけど……」

クーンの居たビルの最上階で空の空き瓶なんかと一緒に拾ったものだ。


「ほう! 酒か、どんなのだ? ビールだったら要らんぞ。昔、ハンターやってた頃に拾ったことがあるが中身が腐ってて酷い臭いだったからな」

 鼻を摘んで嫌そうに手を振る。


「中身はまだ確かめてないんですけど、赤褐色の液体で多分ウィスキーかブランデーの様なものを1本」


「お、それなら良いな。買うぞ?」


「おみやげってことでも良いんですけど、出来ればそれを宿代の足しに……」


「蒸留酒なら腐ることも無ぇだろうし、高く買うぞ。大戦前なら少なくとも100年物って事だしな」

 そう言ってニカッと笑うが、瓶詰めでも寝かせる意味があるのだろうか?

 無いような気がするけどなぁ。


 しばらく雑談したところでミケちゃんたちが下りて来た。

 ジニさんたちも濡れた髪を下ろしながら、こざっぱりとした表情をしていた。

 それと入れ違いに酒瓶を取りに部屋へと戻る。


 テーブルに戻り、ロックさんと共に中身を確かめる。

 透明な、硬いゴムのような栓を抜くと注ぎ口からねっとりとした濃い香りが漂い始める。

 鼻の奥に絡みつくように、ツンとした有機溶剤、なめした古皮、凝縮した木の香りに香木を燃やしたような捉えどころの無い不可思議な香り。

 それらが鼻の奥へと駆け巡った後に、チョコのような甘い香りと焼いたアーモンドのような香ばしい匂いが静かに残る。

 存在感のある強い香りに感覚を揺らされ、頭の奥が目覚めるような感じを覚えた。

 年代物のウィスキーのようだ。


「こりゃ……良い酒だ」

 ロックさんが蕩ける様な視線を酒瓶に向ける。


「これなら……今の部屋の1か月分をタダにして良いぞ」


「よくわかんないけど、もう一声にゃ」


「ははは、嬢ちゃんには適わないな。シャワーの時間を倍にしてやるよ」

 部屋代は基本6000だから、それなりに良い話なのだろうか。


「それじゃ、それでお願いします」


「あいよ、ウェンディ! しばらく受付代わってくれ!」

 ロックさんが受付の奥へと声を掛けると娘さんが顔を出す。

 酒瓶を掴むとそのまま奥へ。

 ウェンディさんが文句を言うが、ガハハと笑いながら扉の奥へと消えていった。


「さて、これからどうするんだ?」

 こざっぱりとしたジニさんが聞いてくる。


「今日はとりあえずギルドに顔を出してから、バザーへ」


「エリザベート姐さんに会うのもひさしぶりにゃ」

「だねー」

 ミケちゃんとポチ君が笑いあう。

 おかまさんのことを思い浮かべているのだろう。 

 ほんの1週間程度とはいえ、毎日会っていたからなんだか懐かしく感じるな。



現在、中盤の導入部でいろいろ考えることがあり、しばらく遅れがちの更新になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング よければお願いします。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ