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第150話 帰宅

すいません、遅れました。

 日は落ち、空に青い薄闇がひっそりと佇む。

 遠くには街の光が。

 その光を頼りに、歩きなれた東の土手をラクダで駆ける。

 川の上を通り水気を含んだ風が、マントを膨らませながら中を通り抜ける。


「帰ってきたにゃ!」


「うん!」

 二人も騎上で光に向かって指を差しながら、頷きあった。


「ほら、急ぐにゃ!」

 ミケちゃんがラクダの腰をぺしぺしと叩くが、ラクダはマイペースに進んでいく。

 ポチ君はさっきからちらちらと川辺を覗いている。

 おそらくスラムの子たちを探しているのだろうが、時間も遅く、居ないようだ。



 東門へと辿り着き、ギルド証を提示して通過するがここでジニさんとランちゃんが引っかかってしまった。


「ちっ、損した」

 ジニさんがラクダを引きながら、ぶつくさ呟く。


「まあまあ」

 それをランちゃんが宥めるが。

 二人の提示した砂漠の警備隊の身分証はこの国のものでなく、街の衛視も隣国の事情など知らず。

 確認が取れないため、通行料として一人100シリングを支払うことになった。

 俺が初めて来た時はソーセージを代わりに支払ったが、あれは賄賂のような感じだったから安く済んだのだろうか。


「それでまずは何処に行くんだ? この街の顔役の所か?」

 ジニさんたちが俺たちの後について来る。


「まずは……宿に行きましょうか。もう遅いですし」


「そうだにゃ、さっさと荷物を置いてシャワーを浴びたいにゃー」

「お腹も減ったよー」


「そうだね。ギルドは……明日でいいか」


「おかまの姐さんに挨拶するにゃ?」


「いや、リアカーを遺跡に放置したまま砂漠に行っちゃったから。謝らないと」


「「あ……」」

 二人が思わず口を開く。

 都市遺跡の中央に突入する前に放置したまま、1週間。

 あのままだとしたらもう誰かに盗られていることだろう。


「レンタル代……いくらだっけにゃ?」


「1日200シリング。弁償だと2万とか言ってたけど」

 3人で思わず上を見上げる。

 手持ちが無いからなあ。

 そこにジニさんが話しかけて来た。


「金の話か? 弾を売れる場所を教えてくれれば多少は貸せるぞ。

 その分、恩には着せるがな」


「えっと、それはどうも。いざという時はお力を借りるかもしれません。

 それとこの前も恩がどうとか言ってましたけど、それって?」


「なに、大したことじゃない。あたしはこっちの事まったく知らないしな、案内役をしてもらいたいだけだよ」


「それぐらいなら別にいいよー」

 ポチ君が振り向く。


「そうか? まあ、いろいろ頼みたいことがあるんだけどな。まずは武器だが」


「まあ、それは明日ってことで。とりあえず俺たちの泊まっている宿を紹介しますよ」

 ラクダを引きながら西門近くのホテルへ。

 大通りはこんな時間でも人でにぎわっている。

 途中、南門のバザー広場の前を通り過ぎると普段よりも明るく、前までは見なかった照明が置かれていた。

 広場は露天が除かれその分、人とライトで照らされた車両でごった返している。


「戦車バザーか」


「明日までのはずだから、まだギリギリ間に合うよー」

 俺の呟きをポチ君が拾う。

 遠目にも10台以上の車両が見え、ちょっと見て行きたいが、ラクダを引いてあの人並みの中に入っていくわけにも行かない。

 そのまま通り過ぎ、ロックさんの宿へ。


「こんばんはー」

 宿の扉を開き、中へと入ると受付で頬杖を突いていたロックさんが目を見開く。


「おお、久しぶりだな。くたばっちまったかとギルドの受付が心配してたぞ」


「すいません、心配を掛けて」


「部屋はそのままだ。後5日で更新だからな、その前に帰って来れてよかったな。

 あのままだと荷物をこっちで処分しちまうところだったから。後ろのはお前らの連れか?」

 ジニさんたちを目で差す。


「宿をとりたい、2名でまずは一泊」

「おねがいしまーす」


「2階が女性客専用で、大部屋での雑魚寝が50シリングだ、長期宿泊でも割引は無い。

 3階と4階の個室は一泊300シリング、こちらは長期宿泊なら割引する」


「なら雑魚寝を2名頼む。サトシ、荷物を一晩預かってもらっていいか?」


「ええ、いいですよ。俺たちの部屋は302です」


「頼む」

 ジニさんが背負ったカバンごと俺に荷物を預けると、そのまま受付に支払いを済ませた。

 ロックさんが奥に声を掛け、ウェンディさんが二人を案内していく。

 それと入れ違いに見知った人物が階段を下りてくる。


「あら、サトシさんたち。お久しぶりです」

 青い長髪を背に流した長身のハンター、初心者講習で世話になったマリカさんだ。


「姐さんひさしぶりにゃー」

「こんばんはー」

 ミケちゃんとポチ君が挨拶をする。

 マリカさんに続いて下りてきた人たちにも。


「ミレナさんとステラさんもひさしぶりにゃー」

 後から降りてきたのは顔立ちの似た、紫の髪をした二人の女性。

 片方が短く肩の辺りで切り揃えており、もう片方は緩くウェーブが掛かって長い。

 二人は軽く会釈をするとマリカさんと共に出て行った。


「後の二人は?」


「姐さんの仲間にゃ。前に部屋に遊びに行った時に知り合ったにゃ」

 前に言っていた普段組んでいる仲間か。


 俺たちも部屋へと帰る。

 荷物を降ろし、ベッドへ腰掛けようやく一息ついた気がした。


「やっと帰ってきたにゃ」

「そうだねー」

 二人もベッドへと倒れこむ。

 俺たちが居ない間もベッドメイクされていたようで、真っ白なシーツに砂埃が付いた。


「おっとにゃ」

 ミケちゃんが気づいて、ハンカチで汚れを払う。


「リーダー、おなか減ったー」


「それじゃ、ネザーさんの所に行こうか」


「じゃ、二人にも声を掛けてくるにゃ」

 そう言って、ミケちゃんがジニさんたちを呼びに行った。



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