表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

156/169

第149話 帰り道4

大分遅れてすいません。

更新再開します。

「はぁ……」

 自身の行き先の現実を知り、イサックさんが溜め息を吐く。


「辞めることもできず、大変にゃー」


「そうですね……、ああ、でも、ここで一旗上げないと。実家にも帰れないし、あのジニさん?」


「何だ」


「東の蛮……草原の民の国(イーストステップ)では宝石が安いんですよね?」


「イーストなんちゃらか、お前たちは我々を一纏めにしてそう呼ぶな。実際にはカルトマンを筆頭とした六大氏族なのだが……」


「ああ、すいません! お気に障ったなら謝ります。それで」


「ああ、西からの行商人たちは宝石と発掘品をよく買っていくな。

 あたしは安いとは思わないが」


「ええ、ええ。そうですよね。それで何処の店が安いとか、質の良い物を卸してくれる商人の方がお知り合いにいませんか?」

 イサックさんが揉み手をして、上目遣いに尋ねる。


「あたしにそういった知り合いはいないが、何処まで行くんだ?」


「隊商はカルトマンまでは進む、と」


「宝石なら山を抱えてるケチュアまで行った方が良いと思うがな。

 カルトマンに行くなら発掘品目当てなんじゃないか、ここは?」


「え! そうなんですか?」


「多分そうだろう。知らなかったのか?」


「いや、向こうで何を買うまではまだ聞かされていないもので……」


「イサックさんも向こうで何か買うんですか?」

 俺が尋ねると。


「ええ、実は実家が商売をしているんですけど、3男の自分は家を出なくちゃなりませんで。

 それで一旗上げようと荷役人夫をしながら東まで買い出しにって思ってたんですけど、発掘品かぁ」


「それじゃダメなのにゃ?」


「宝石だったら実家でも少し取り扱ってたので目利きが出来るんですけどね。

 機械とかは目利きも修理するあても無くって」


「それだと大変ですね」


「ええ、何とか向こうで安く売ってる場所を見つけるか……抜け出す、か……」


「止めとけ。ケチュアもカルトマンから歩いて半月は掛かる場所だし、帰りに一人だと砂漠で骸を晒すだけだぞ」

 ジニさんが呆れた様に首を傾げる。


「あはは、そうですよねー。そう言えば皆さんは弾薬を売りたいんでしたっけ」


「ああ、ラクダの水代に交換しようかと思ってたんだけど」


「この辺の商人は内地の出だから…、大きな声では言えませんがケチ臭いでしょう?

 良かったら自分が交換しますよ」

 イサックさんが声を潜める。。


「お、良いのか?」


「ええ、皆さんには情報もマントも貰いましたし。地方の価格で交換しますよ。

 それに向こうでは弾薬が人気でいくらでも売れるなんて聞きますし」

 イサックさんが年甲斐もなく無邪気に笑い、話すが。


「いや、そんな事はないんだがな」

 ジニさんが呟く。


「え?」


「いや、こちらの話だ。それじゃ頼む」


 ジニさんが9mm弾の箱、2つを交換してもらい。

 俺も.357マグナム弾を手持ちの20発分代えてもらった。

 1発150シリングなので3000シリングだ。

 これで手持ちの弾は0になったので、また後で召喚しておかないと。


「毎度。皆さんはこれから地元までお帰りで?」


「ああ、チェルシーまで真っ直ぐ」


「自分も向こうから帰ってきたら内地の首都キエフに寄った後、実家の方まで顔出しに行くんで、また会えれば」


「ああ、また」

 イサックさんと再会を約束して別れた。

 楽天家な彼の行き先には不安を覚えるが。


 金を作り、そのまま水場へ。

 水場は人用と家畜用で別れていて、手押しポンプの蛇口の下がそのままコンクリートでできた小さなプールとなっている。

 ラクダの水代はジニさんが半分持ってくれて1600で済んだ。

 ポンプの持ち手を上下させれば、勢い良く水が零れ落ちる。

 一回に出る量が1リットルなので後319回押さなければいけないようだ。


「水筒も入れるにゃー」

「ぼくもー」

 ミケちゃんとポチ君が蛇口の下で水筒を構える。

 ラクダたちも下の水場に流れて来た水へと口をつけ始めた。

 必死にポンプを上下させている、と。

 何処からか小さなトカゲたちも集まり、水を飲んでいる。


「お!」

 それをめざとく見つけたミケちゃんが捕まえようと追い回す。


「待つにゃー」

 トカゲの半数は逃げていく。

 もう半数はポチ君の側に。


「いそがなくてもいいよー」

 キョロキョロしながら水に口をつけていくトカゲの背を撫でていた。



 水も補給し、そのままキャンプ地を出る。


「まずは北西に向かい、川に突き当たるまで進むぞ」


 そう言って先行するジニさんのラクダを追っていく。

 荒野を土煙を上げながら走り、ラクダが疲れてきたら降りて手綱を引き、なんとか川沿いにまで。

 その日は近くにあった寂れたガススタンドでキャンプを張り、次の日からは川沿いにひたすら西へ。


「見えてきたにゃ!」

 ミケちゃんの指差す方には見慣れた街影が。

 途中、ワニみたいなトカゲに追い回されたりもしたが、二日掛けてチェルシーにまで戻ってきた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング よければお願いします。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ