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第148話 帰り道3

すいません、大分遅れました。

 そんな訳で全員金が無い。

 何とか弾薬を金に換えるか、何かしないと。


「それにしても酷いレートでしたね、何でそんなことに?」


「そうにゃ。舐められてるにゃ!」


「まぁな、交易を結んでいるのは両国の友好の為という目的があるからな。

 実際のところを取り仕切っているのは官吏の奴らだから、あたしらにはよくわからんが」


「仲悪いのにゃ?」


「昔はな。砂漠を挟んで小競り合いを何度かしていたそうだ。

 砂漠があるお陰で両国とも大軍を送れず、戦争までは発展しなかったそうだが」


「あー、確かに砂漠を渡るのは大変そうですしね」

 車はロボットの商人たちが扱っているそうで、都市連合を含む人類圏で作られているかは今のところ聞いたことが無い。

 そうなるとこの世界の兵員輸送は昔ながらの徒歩か馬車などになるのかな?


「それもあるが何よりの問題が水だ。オアシスの数は片手に収まるほど、大軍が補給できる程には無い」


「なるほどにゃー」


(それもこいつらが見つけた北のオアシスが出てきたことで状況は変わったがな。

 隊長は夜中のうちに人を送り、確認したと言っていたが……こちらも何とか任務を済ませなければ)


「とりあえず水の補給だけでも済ませませんとね」


「そうだな、一応水売りにも当たってみるか」


 それから俺たちも水売りの列に並び、弾薬と交換で買えるか交渉してみたが、現金以外は扱えないと言われ。

 他の隊商と再度交渉することにした。

 入り口前に旗の挿されたテントは全部で3つ、さっき訪れた所以外に話を持っていってみるが。


「あいつらむかつくにゃ!」

 ミケちゃんがしっぽを低く、ぶんぶんと振り回す。


「そうだねー」

 俺も頷くが尋ねた2つの隊商とも、へらへらと笑いながらこちらの足元を見てきた。

 本当にここでは弾薬の値段は半額で通っているようだ。


「すまんな」

 ジニさんが眉をしかめる。

 この辺りの値段が安く設定してあるのは、東のジニさんたちの国との交易を見込んでのことだろう。


「いえ、しょうがないですよ」

「そうにゃー」

「そうだよー」

「そうですよー、悪いのはあっちですよ」

 俺たちがなだめるとそれにランちゃんも続く。

 とはいえ、どうしたものか

 いざとなれば水と食料に関してはSHOPアプリで出せるが。

 まぁ、ルーブルは出来るだけ温存したいし、割安でも交換した方が……。


「まいったな、ここでラクダに4日分の水を飲ませたかったが」

 ジニさんが困ったように手綱を引く先へと視線を移す。


「ん?」

「どういうことにゃー?」


「ああ、ここから先はチェルシーまで補給地に寄らないからな。

 ここでラクダに水を一気飲みさせるつもりだったんだよ。こいつらは一度に80リットル程度は飲めるからな。

 それで1週間は飲まずに走らせられる」


「ほう……」

 流石、砂漠で生きる動物だ。

 毎日の水分補給無しで生きられるとは、生き物として保水性がとても高いらしい。

 それにしても。


「そんなに飲むのにゃ」

 さっきの水売りでは1リットル、10シリングと割高で売られていた。

 80リットルを4頭とすると……3200シリング!


「なんとかお金を作らないと……」


「そうなんだよなあ」

 ジニさんが困ったように笑う。


 なんとか高く売れる相手を探さないと、辺りを見渡すが。

 商人を除けば、後は荷物運びの人夫しかいない。

 人夫はおそらくスラムで募集を掛けられて来た人たちなのだろう。

 誰もが使い古し擦り切れた服にサンダルといったみすぼらしい格好だ。

 とても高く買ってくれそうには見えない……が?


「あの人はどうかなー」

 ポチ君が俺の服の裾を引っ張り、遠くを指差す。

 その先には人夫たちにまぎれて普通の格好をした人も居た。

 厚手のコートに、足元は丈夫そうなブーツだ。

 商人か?

 ポチ君へ頷くと、そちらへと近づく。


「すいません」


「はい?」

 ぼーっと座っていた青年は驚いたように目をしばたかせる。


「いきなりで申し訳ないんだけど、弾薬買いませんか?」


「弾薬、ですか? それでしたらあっちのテントに商人たちがいますよ」


「いや、向こうにはすでに行ってみたんですけど……」


「ああ、買い叩かれましたか。この辺ではそういうものらしいですね」


「ええ、そのようで。あなたも砂漠を渡る商人の方ですか?」


「いえ、自分は荷役人夫ですよ。イサックと言います」


「あ、これはすいません。サトシです」

「ミケにゃ」

「ポチです」

 俺たちの挨拶にイサックさんがクスリと笑う。


「すいません、身なりが他の方たちと違うのでてっきり……」


「ああ、確かに。自分はホメリの方から仕事を探しに来て、ついでに遠くまで旅するのも良いなと思って、この仕事に応募したんですよ」


「ホメリ?」

 ポチ君へと目線を送ると、チェルシーの近くで南西にある小さな村だと言う。


「へー、皆さんはチェルシーの方から?」


「ええ、元々は。今は砂漠から帰ってきたところです」


「ほう! 砂漠はどうでした? やはり暑いですか?」

 と、暢気な事を聞いてくる。

 俺とミケちゃんが目を合わせる、と。


「ジニだ、徒歩で渡るのは厳しいから覚悟しておいた方が良いぞ」


「あ、これはどうも。やっぱし厳しいんですか……。説明だと片道1ヶ月の旅だが、日中の移動を避けて休憩をとりながら進むから、初心者でも大丈夫だと言っていたのですが」


「あー、それでも脱落者はかなり出る。あたしはオアシスで警備をしているからよく見ていたが、行きで4分の1が砂漠に置き去りになるな」


「え、置き去り? 脱落ではなくですか?」

 言葉のニュアンスが変わったことに驚き、思わず言葉を挟む。

 イサックさんも目を見開いて驚いている。


「そうだ。砂漠を巡回しているとよくミイラ化した遺体を見つけるよ。

 近くに荷物も落ちてないし、倒れたらそのまま置いていかれるようだ。荷物だけ剥いでな」

 その光景を想像したか、イサックさんの顔色は青い。


「きついし止めた方が良いんじゃないかにゃ?」

「そうだよー」


「いや、そういうわけにも……」


「それは?」

 俺が理由を問おうとすると、ジニさんが口を開く。


「違約金か」

 その言葉にイサックさんが頷く。


「ここで取りやめる場合は違約金として5万シリングと言われていて……」


「高いにゃー」


「ええ、それだけの手持ちも無くって」

 うな垂れるイサックさんを見て、俺とジニさんが目を合わせる。

 イサックさんの格好は砂漠を渡るには適しているとは見えない。

 俺はターバンを外すと。


「これ、渡しても良いですか?」


「それはお前たちにやったものだ、好きにしろ」

 ジニさんの了解も得て、俺のターバンとマントを手渡す。

 砂漠は終わったし、もう必要ないだろう。


「これは?」


「少々厚着になりますけど、日差しを遮り通気性が良いですよ」


「すいません、ありがとうございます! 大事にします」

 こちらを見上げ、イサックさんの顔に生気が戻る。


「いえいえ」


「そうだな、その格好なら後は水分をきちんと摂っていればなんとかなるだろう。

 ただし、帰りには気を付けろよ」


 ??


「行きで人が減っても商人たちの買い込む量に変わりはない。

 人が減ればその分だけ少ない人数で分担させられるからな」

 ジニさんの無情な一言に再度、イサックさんが顔を青ざめさせた。



今日の分は明日投稿します。

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