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第147話 帰り道2

大幅に遅れてすいません。

これから今日の分を書きます。

 砂漠を抜けてハスカウと言う街へ到着した。

 遠めには廃材を寄せ集めて作ったような門と、その近くに陣を張るテントの群れ、それに群がるような人影が見える。

 街へと近づき、先頭のジニさんがラクダから降りる。


「よっ……と、ちょっと休憩したらすぐに出るぞ」

 そう言ってテントの方へとラクダを引っ張っていく。

 俺たちも降りて、続いていく。


「街には入らないのかにゃ?」


「他は知らんのだが、ここは入るだけで通行料取られるぞ」


「いくらです?」


「あたしが前に聞いた話では一人頭2000だったか? 水の補給ぐらいだったら外でした方が良い、割高だけどな」


「なるほど」

 行く先を見やれば、金網に囲まれた中に手押しポンプの付いた井戸が見える。

 そこにタルや瓶を持って並ぶ人々の列、そこから料金らしきものを徴収している制服を着た役人らしき男。


「と、その前に寄る所があるけどな」

 そう言ってジニさんが向かうのは一つの大きなテント。

 テント自体は20ほどあるが、その中で入り口の横に旗の挿されたものを選び、天幕を潜り。


「失礼するぞ」


「何だ?」

 中からは渋みのある声が聞こえてきた。

 続いて俺も天幕を潜り、中を見渡す。

 モンゴルのゲルの様な円形の布張りの壁、足元には赤茶けた絨毯が広がり、その奥に茶色い髪にややふっくらとした丸顔のおっさんとライフル銃を持った壮年の男が構えている。


「急に済まないな、砂漠の西の2、メヒコで駐在憲兵をやっているジニ・ラルタラナザールだ。

 ここは隊商のテントだな?」

 ジニさんが名乗るとテントの中の二人が身じろぎした。


「憲兵さんが何の用で?」

 茶色い髪のおっさんが緊張した面持ちで尋ねる。


「何、大した用ではないのだがな。こちらの4人(・・)を西にまで送っていくのだが、あいにくとこちらの通貨を持っていなくてな。

 お前たちの持ってくる銃弾と両替・・して欲しいのだ」

 4人と指したのは俺とミケちゃん、ポチ君にランちゃんだ。

 クーンは俺のバックパックに入ったままで隠れている。

 クーンは見た目がちょっと特殊なので、騒ぎにならない様におとなしくしてもらうことにしたのだ。


「へぇ、そういうことでしたか。もちろん買取・・ますよ」


「うむ、物はこれだ」

 ジニさんが背負ったカバンから出したのは9mm弾1箱、50発入りだ。

 9mmだと確か前に売った時は……。


「へぇ、物は……正規品ですな。これでしたら1発50シリングで買い取りますよ」


「え?」

 思ってた以上に安く声が出る。


「ふむ、やはりそんなものか……」

 ジニさんは納得しているようだが。


「あのー、安すぎませんか?」


「そ、そんなこと無いぞ! ここじゃ当たり前の値段だ」

「そうだぞ!」

 俺の言葉に目の前の二人が慌てた様に答える。

 ジニさんが静かに俺の方に視線を送ってきた。


「俺の居たチェルシーだと9mmの正規品なら100シリングで買い取っているはずですが、半額はあまりに安すぎるでしょう」


「だ、そうだが?」

 ジニさんが静かに二人にへと視線を送ると、二人が身じろぎをする。


「……値段は場所によって変わります。この辺りの相場ではこれが精一杯です」

 男が愛想笑いで答えるがそれと反対にジニさんの眉間が険しくなった。


「お前たちはいつもこれが西の取引で使われてるものだと銃弾を置いていくが、我々がお前たちの物を買おうとするとシリングに直してくれと言う。

 そうすると随分と割高になるなと感じていたが、やはり交換レートがおかしいのだな」

 ジニさんの口元が笑う、それに反比例するようにその視線は冷気を帯びた。


「いえ! 我々も砂漠を越えて行くには多大な労力を必要としますから、そのコストも計上……」


まだ(・・)出発してないだろう。私の方から来たぞ?」


「あ……、いえ、そのー」


「憲兵さん、いきなりそんなことを言われても困る。ここじゃそういう決まりになってるんだ。

 ルールに従えないなら他所に行ってくれ!」

 商人らしき男が困っていると、横の護衛らしき男が口出ししてきた。

 商人が思わずバカ……と声を漏らす。


「ほう……。誰と誰(・・・)が決めたのかな? 我々を抜かして」

 声から抑揚と温度が消える。

 胸へと突き刺さるような切れ味を持って、言葉が室内に響く。

 まるで突然ガラスを割った後のような静寂が降りた。


 その中、ジニさんが一歩踏み出した。


「ジニさん!」

 思わず肩を掴んで止める。

 エメラルドの瞳が鋭さを持ってこちらを覗きこむ。

 が、一瞬下を向くとまた前へと戻し。


「少々、感情的になってしまったようだ。また後で来るとしよう」

 そう言ってきびすを返した。


「へ、へい……」

 その後ろで商人たちが力無い声を零し、弾を返してもらって俺たちもジニさんの後に続く。





「もう少しうたわせたんだがなあ」

 外へと出ると、先ほどのことを忘れたようにあっけらかんと言ってきた。


「驚かさないでくださいよ。思わず殺っちまうのかと思いましたよ」


「そうにゃ。びっくりしたにゃー」


「すまんな、それでさっきのレートの事なんだが」


「ええ、本当ですよ」


「そうか……、やはりな」


「今まであんな不利なレートでやり取りしていたんですか?」


「西の連中との交易が始まったのはここ10年のことでな。正直、情報が足りんのだ」


「そうなんですか」


「ふむ、両替も出来なかったしお前たち少し貸してくれんか?」

 ジニさんの問いに俺とミケちゃんとポチ君が曖昧な笑みを返す。

 俺の手持ちは後175シリング。

 二人が財布を取り出して、困った顔で差し出してくるのも小銭だ。

 それを押し留め、さて困った。

 俺も銃弾を両替したかったんだがなあ。



昨日いろいろ考えたんですけど、この辺もう少し掘り下げようと考え直したので、街に戻るまで後1,2話掛かります。

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