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第144話 ラクダ

「たしかに討伐が認められたみたいみたいだな」

 ジニさんが書類に目をやるとその肩にミケちゃんが顎を乗せ、その存在を主張する。

 軽く頬を膨らませながらじっと見つめた。


「わかった、わかった。大したもんだ」

 鬱陶しそうな視線を送った後、空いた手でミケちゃんの頭をぐりぐりと撫でる。


「わかれば良いにゃ」

 満足げに目を瞑り、ようやく離れた。


「ラクダの引渡しだな、ちょっと待ってな」

 そう言うと急いで飯をかきこみ始めた。


「ゆっくりでもいいですよ」


「そうだよー、急いで食べると消化に悪いよ」

 そこに給仕をしていたランちゃんもやって来た。

 ミケちゃんとポチ君に小さく手を振って、それに二人もしっぽを振って応える。


「もう終わった。さ、行くぞ」

 皿に残った一切れの肉を摘みながら、ジニさんが外へと出て行くので俺たちもついて行った。



 連れられた場所は事務所の裏手にある厩舎。

 10頭のラクダが繋がれている。

 やや獣臭い、動物園のような臭いがした。


「お前たちに渡すのはこいつらだ」

 ジニさんが奥の厩舎に繋がれた3頭のラクダをランタンで指し示す。

 暗がりの中、良くは見えなかったが手前に居た、他のラクダに比べやや体が小さく見えた。


「やや小振りですね」

 それでも背の部分が俺の目線と同じ高さ、長い首を持った2つの頭は見上げるほど上にある程度の大きさだ。


「こいつらはまだ2歳だからな。あんまし荷物を持たせなければ十分走れるよ。

 そっちのお嬢ちゃんたちなら軽いから問題ないだろう」


「これでチェルシーの街までどれくらい掛かりそうです?」


「さあ? そこまで行った事無いからな。西にある都市同盟の入り口まで二日ってとこだな。

 ハルキウって知ってるか? 馬の居る街だ」


「いや、知りません」

 横の3人にも視線を向けるが、顔を振っている。


「そこからチェルシーまでは……どれくらいだろうな?

 まぁ、二日もあれば着くんじゃないか?」


「そうですか」

 やばい、かなりギリギリかも。

 砂漠に来てから3日が経つ、確かバザーが終わるのが4日後だ。


「それじゃ次に乗り方を教えるぞ」

 ジニさんはそんな俺の焦燥など気に留めず、ラクダに飛び乗った。


「ラクダには2つの頭があるが、手綱が付いているのは片方だけだ、わかるな」


「あ、ほんとにゃ」

 確かに右の頭だけに轡を口に嵌められ、そこから手綱が伸びている。


「ラクダはそれぞれの頭が主頭と副頭に分かれ、手綱を付けるのは主頭だけだ」


「もう片方には?」


「副頭は周りの監視をしたり、主頭が寝てる時に代わりに起きてるだけで、足を動かすのに余り関わりが無いから気にしなくていい」

 確かにラクダの左の頭は瞼が重そうで、右のに比べてなんだか眠そうに見える。


「変な生き物にゃー」


「お前らも十分変だぞ」


「にゃんだとー!」

 ミケちゃんが両手を上げてラクダに乗ったジニさんに詰め寄るが、当のジニさんは笑っている。


「動作の一通りの調教は済んでいる。胴を蹴れば進め、曲がりたかったら曲がりたい方向に手綱を引っ張れ。

 止まりたい時は思い切り引っ張れ」


「俺たちでも乗れそうですか?」


「この辺じゃ子供でも乗れる。心配するな。今日のレクチャーはここまでだ。

 明日は早いぞ、夜明けに迎えに行く」


「あ、すいません、ありがとうございます。出発は早めに出た方が良いですか?」


「変な言葉を使うな。まぁ、いい。ラクダはこう見えて足が速いんだが走れる時間に限りがある。

 一日に早足で2時間、それが限界だ。それと日が上がりきってしまっては暑くて動けん、だから涼しいうちに進んでおけ」


「なるほど」


「それじゃ、また明日な」


「「「はい、おねがいします」」」

「また明日にゃー」

 俺に続き、三人もそれぞれ挨拶をかわし、テントへと戻ることにした。

 後ろではジニさんがラクダの背から降りる。

 そこにライフルを背負った別の隊員が声を掛けてきていた。


「ジニ、隊長が呼んでたぞ」


「わかった、すぐ行く」


 声を背に、テントへと帰ってきた。

 とりあえずは食事だな、それと。

 タオルを水で濡らして顔を拭く。

 肌には細かな砂埃が薄っすらと張り付いていた。

 ミケちゃんとポチ君はもっと大変そうで、毛の隙間に入り込んでいるようで、丁寧にブラッシングをしている。

 それに比べクーンは簡単なもので、表面をさっと一拭きするだけだ。


 さて、ご飯は、と。

 今日はよく動いたし、フルコースでいいか。

 缶詰にソーセージとパン、それに水だ。

 そう思いスマホを操作したところ、ルーブルの残高は……5932!


「ずいぶん増えたなあ」


「どうしたにゃー」

 横から覗いてくる。


「いっぱい倒したからねー」

 ポチ君も覗いてきた。

 それにしても朝に比べ4500以上増えているようだ。


「やっぱあのでかいのがポイント高かったにゃ?」


「かもしれない、巨大アメーバでも600前後あるからなぁ」


「ちっちゃいのもいっぱい倒したよー」

 ポチ君が自慢げに手をくいっ、くいっと捻る。


「よく頑張ったね」

 ポチ君の頭を撫でると隣のミケちゃんが、おやおやー誰かお忘れではありませんかねぇと言った目線を向けてきたので、ミケちゃんも撫でた。

 俺の手に擦りつけてくる様に、頭を押し付けてきて撫でられるがままに。


 思う存分撫でた後、再度スマホに目を向ければ通知が一つ入っていた。

 ん?!


「何だ……」

 通知を開くと、SHOPアプリでの商品一覧が更新されたらしい。

 条件達成によりロック解除と書かれていた。

 それに付随した残高5000突破のトロフィーマーク。

 画面をスクロールしていくと武器や防具の項目で商品が増えているようだ。

 これらは後で見ておくか。

 まずは食事だと食料欄も見ると、こちらも増えていた。


「新しく増えたのは、酒と甘いものにお茶か」

 ウォッカが1本20ルーブルにチョコが一つ5ルーブル、お茶は…紅茶だろうか?

 一缶20ルーブルのようだ。

 どうやら嗜好品が増えたようだ。

 食後に良いかもな。

 スマホを操作して食事の用意をしていると。


「あ、もう一つずついいかにゃ? ランちゃんにもお裾分けしてくるにゃ」


「いいよ、はい」

 缶詰などを渡す。


「それじゃ一っ走りしてくるにゃ」

 渡すとすぐにミケちゃんはテントを出て行ってしまった。


 缶切り渡し忘れたな。

 まぁ、開けようと思えばナイフでも代用効きそうだしいいか。



ちょっとキリ悪いですけど、新商品のこと考えたいのでここで。

次回更新は金曜の夜中からになります。

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