第143話 報告
昨日は更新できずすいませんでした。
横になりながら話を考えていたら寝てしまいました。
その分、明日も更新します。
ミケちゃんたち担いで砂漠を横断。
途中で日が落ち始め、着いた頃には夜になったが無事オアシス村まで帰ってきた。
遠くに見える篝火の明かり、村の入り口となる2階建ての建物と建物の間。
そこへと近づくと……門番が居ないな、と思っていたところ。
「おい。……朝に出てったやつらか?」
2階のテラスからライフルを持った男が姿を表した。
相変わらずここの門番は高所をとるのが好きなようだ。
「ええ、入ってもいいですか?」
「ああ、構わんぞ」
そう言って、興味を無くしたかの様に暗がりへ戻っていく。
村の中へと入り、背の三人を降ろした。
ミケちゃんとポチ君がバッグの縁から這い出て来て、体を滑り落とすかのように抜け出てくる。
クーンを持ち上げて、出す。
バックパックに括りつけていた荷物も落としていないか確認。
よし、無事だな。
それじゃ、
「まずは報告からっと、何と話したものか」
最初に来た時、連れて来られた事務所へと向かう。
ノックをして中へ。
「すいませーん……」
「何だ?」
奥の机で頭に布を巻いた壮年の男が、日に焼けた顔をこちらへと向ける。
「サソリの討伐の件で」
「ああ、昨日ジニが言っていたな。どうした、取り止めるのか?」
「いや、もう終わったんですけど、それで」
「うん? 確かデスストーカーの巨大種の掃討だったはずだが、殺れたのかね?」
あのサソリ、そういう名前だったか。
「はい、証拠はこちらに…」
「これにゃー」
俺がバックパックを降ろすよりも早く、それに括りつけられた包みをミケちゃんが外す。
床に広げられた中身はサソリの大きな毒針が3つ。
隊長さんが席を離れ、間近に寄ってくる。
「ほう! 確かに巨大種3体分のようだな。行って、すぐに狩ってくるとは大したものだ」
そう言って俺の肩を叩いた。
「ありがとう、これで北の探索に取り掛かれる」
「いえ……、それで報酬の方なんですが」
「ああ、ラクダ3頭だったな。明日、様子を見に行くからその後で構わないな」
俺の肩に手を置くと、真っ直ぐな目で凄んでくる。
部下に命令を下すのに慣れた人の所作に思えた。
思わず、はいと頷きそうになるが、こちらにも都合がある。
「いえ、実はなるべく早く元居た街に帰りたいので、明日の朝までにお願いできますか」
「ふむ……」
俺から離れ、もう一度毒針に視線を送り、再度俺へと向けてきた。
「北の調査にも着いてきてもらいたいのだが、ダメかね?」
「すいません」
「……どうやって大型を狩ったのか知らんが、あそこにはまだ大量の小型が棲みついているはずだ。
それについての助言も伺えたらと思ったのだが……」
「ああ、それなら……」
「全部やっつけたにゃ!」
ミケちゃんが胸の前で手を組んで、自慢げにしっぽを振り振り。
それに隊長さんが困ったように眉を寄せ、見つめ返す。
「向こうには相当な数が居た筈だ。我々の調査では数百は下らないと」
「それなのですが……」
クーンへと目配せをする。
「それでしたら私から」
クーンが前に出、ビッグクーンを動かしたことを話した。
……
…………
「……ふむ、つまり穴の底にそこのロボット族のお仲間が居て、彼の力を借りてデスストーカー共を殲滅した、と」
ビッグクーンに関してクーンが私の体の一部ですと言ったところ、そう解釈したようだ。
「はい、今はあそこから動けず眠っていますが」
「確かにあの穴の底に何らかの建造物があるとは報告でも聞いていたが、まさかロボットとはなぁ……」
隊長さんは釈然としないのか、腕を組む。
「俺も見てきましたが、アレは掘削用のロボットで、あの穴も元々アレが掘った跡のようです」
「ふむ」
「掘削する為の機構を用いてサソリたちを潰してまわったのですが、その時に実は…」
「何だね」
「地下へと穴を開けてしまった様で水が噴き出てきました」
「ほう……」
隊長さんの目が僅かに広がる。
「あのロボットの中にあった書類では地下に大きな地底湖があるらしくて」
「その書類は? 水はどれくらいかね?」
「書類は置いてきてしまったのでありません。水に関しては……」
クーンへと視線を送った。
「水位は底から30mほど、これはビッグクーンが丸まる沈み込む高さです。
水量に関しては表に出てるもので推定600万トン、地底湖まで含めれば推定3000万トンかと思われます」
それを聞き、隊長さんの眉に力が入る。
「それは本気で言っているのかね?」
「「はい」」
俺とクーンが声を合わせて返すと、顎に手を当て考え込み始めた。
「……それが本当だとしたらここの1000倍に等しい規模だ。オアシスと言う規模じゃないな、本隊を……」
「……それでビッグクーンについてなんですけど」
「何かね?」
「ちょっと引き上げる手段が無いのでしばらくあのままにしておいて欲しいんですが、よろしいですか?」
「ああ、それは構わないが。……暴れたりはしないのかね?」
「もちろんですよ。しばらく寝てるだけです」
クーンが力説する。
「それならまあ、動かすときは事前に通達してくれ」
「あと、俺たちへの報酬なんですが」
「ああ、それなんだが改めて明日の調査に着いてきてもらいたいのだが、どうかね?
もちろん報酬は上乗せする」
その言葉を聞いて傍らの三人に視線を向けるが、3人ともまっすぐ返してきた。
「すいませんこちらの事情ですが、俺の居た街での戦車バザーの終了が近く、それまでに帰りたいんです」
「ああ、ロボットたちの。この辺には来ないが本国の首都、カルトマンには来るな。
そうか、それに参加したいのか」
「ええ、それで明日の朝には出立したいので、それまでにラクダが欲しいんです」
俺の言葉に隊長さんは一つ息を吐くと、静かに返してくる。
「もっと詳しい状況を聞かせて欲しいのだが、君たちはしっかりと仕事を果たしてくれた。
これ以上、置き待たせるのは失礼か。このオアシスの責任者として礼を言う」
そう言って頭を下げてきた。
釣られてこちらもいえいえ、と頭を下げる。
隊長さんはちょっと待ってくれと言うと、一枚の書類を書き上げる。
「これをジニに見せれば譲渡の手続きをやってくれるはずだ。今の時間なら多分食堂に居るだろう」
「ありがとうございます」
「にゃー」
礼を言い、退室することにした。
ドアを閉める際に、さて……と独り言が聞こえてきた気がした。
「お、いたにゃ」
食堂のドアを開けると、壁際の席に黙々と食事を続けてるジニさんを見つけた。
こちらへと気づき、スプーンを上げる。
「よう、飯か?」
「いや、仕事の報告に」
食事もしたいが、手持ちがあと175シリングしかないのだ。
「そうか、北の様子はどうだった?」
「サソリがいっぱい居たにゃ!」
ミケちゃんが手振りで示す。
「そうだろう」
「全部やっつけたにゃ!」
「嘘つけ」
にべもなく切り捨てられる。
「本当にゃ!」
ミケちゃんが声を大きくすると、醒めた目線をこちらへと向けてきた。
「本当ですよ」
そう言い、テーブルにさっき貰った書類を載せる。
「マジかよ……」
それを手に持ち、ジニさんが呟く。
いつの間にかその横に移動したミケちゃんが、しっぽを振りながらドヤ顔を寄せていた。




