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第139話 崖上の戦い・前編

本当にどっぷりと遅れてすみません。

これから本日分の執筆に入ります。

 大サソリを追う為、外通路へと出た。

 剥きだしの金属張りの床が甲高い音を足元で鳴らす。

 風が無遠慮に頬を撫でる中、手すりを掴み周囲を見回す。

 目標は……いた。

 大サソリは崖を削り取って出来たような坂道をゆっくりとだが登っていき、頂上に近いところにいる。

 サソリを追うにはこの螺旋状に伸びる坂道を登っていくしかないが、一度ここから降りるしかないかと眼下を覗く。

 この大穴の底の方はもう水浸しで、残った小サソリたちが泳ぐように逃げている。

 アーティファクトオブシディアン・タールを使えば、ここから飛び降りても大丈夫じゃないかと思うが……。

 その時、ッ…ガガッー……とくぐもったラジオノイズが聞こえてきた。


「…っしもしー? リーダー、ミケちゃん聞こえますかー」

 ポチ君の声だ。


「今から道を用意するのでちょっと待っててねー」

 そう言うやビッグクーンがその場で回転し始めた。


「うわっ」

「にゃにゃっ」

 振り落とされないように手すりに掴まる。


 半回転で止まると、ビッグクーンの左手、何も付いていない方のアームが崖へと振り落とされる。

 重い音を立て、粉塵を上げながら先端が崖に食い込む。

 坂道の中ほどへと繋がる橋となった。


「ありがとうポチ君」

「行ってくるにゃ」


「いってらっしゃーい」


 アームの上を通って坂道に到達、そのまま上を目指す。

 道を急ぐが、ところどころに開いた坑道からサソリたちが出てきた。

 サソリたちも一斉に上を目指し急いでいる。

 運良く側面の坑道に潜んでいたサソリたちはこのまま逃げ切るつもりのようだが、足は俺たちの方が速い。

 狙いは大サソリだから小者は見逃してもいいが、追い抜き様に後ろから刺されるのは勘弁したい。


「邪魔にゃ、ちぇぇいっ!」

 サソリの背後から、ミケちゃんが硬鞭をフルスイング。

 尻尾の根元を叩かれたサソリは地面を滑るように土埃を上げ崖っぷちへ、そのままずるりと落ちていった。

 それに続いて、俺もハンマーを抜く。

 狙いはこちらから必死に逃げるサソリへ。


「悪いなっ、と!」

 尻尾の先の毒針を引っ掛けるように横に一閃。

 サソリも飛ばされまいと抵抗するがその細い足先で地面を掴むことかなわず、引きずられるように地面を滑って崖下へ。


「ガンガン行くにゃー!」

 ミケちゃんが硬鞭を片手に掲げ、突っ走る。

 追われるサソリたちが一列になって坂道を登っていくが、後ろから次々と弾き飛ばされていった。

 中には振り返り毒針を向けて来るものもいるが。


「ふんっ!」

 突き出される毒針をハンマーで打ち返す。

 尻尾の先を弾かれ、バランスを崩したサソリが動きを止める。

 その隙に返す一撃で、崖に向かって弾き飛ばした。


 仕留めるのではなく、どんどん崖へと落としていく。

 今いるところは坂道の中腹、底から見れば高さ50mぐらいの場所だろうか。

 落とすだけで倒せるし、もし万が一生き残ったとしてもビッグクーンの餌食だ。

 底ではビッグクーンが丁寧に拭き掃除をする様に、ごしごしと掘削ホイールを地面に押し付けている。

 あれだけ丁寧に殲滅していたら一匹も生き残らないだろう。

 それにしても動かし方にずいぶん正確の違いが出るなぁ。

 ミケちゃんはもっと豪快にぶん回していたが。


「にゃはは! 落ちるにゃー」

 今も逃げるサソリの尻尾に硬鞭の突起を引っ掛け、崖へと引きずり落としていた。


 そうやって後ろから次々とサソリたちを弾き飛ばしていく。

 息せき切りながらなんとか頂上まで辿り着き、林を前にその片腕を振るう大岩の様な巨体を見つけた。

 大サソリだ。

 小サソリたちもいるが、次々とこの大穴を囲う林の中へと消えていく。

 逆に大サソリは木が邪魔で進めないようだ。

 傷ついた体では思うように進めず、片手で一本一本木をへし折りながら進んで行く。

 背を向けた今がチャンスだと、ミケちゃんと頷き合う。


 ハンマーを仕舞い、ポチ君から借りたライフルを構える。

 大サソリは掘削ホイールに振り回された時に尻尾を引き千切られている。

 さらに左の片腕も肘から千切れ、左側の足もほとんどが折れているように見えた。

 満身創痍、これなら……と、狙いを千切れた尻尾のあった根元へ。

 剥きだしの傷口に照準を合わせ、連射!

 タンッ!……とサイレンサーを通した軽い音が連続して鳴り響く。

 音は軽いが威力は強烈だ。

 入り口の青い血肉を撒き散らしながら、7.62mmライフル弾がやすやすと中に潜り込んでいく。

 装填されていた7発全てが埋まり、傷口を大きく広げた。

 壊れた蛇口のように青い血が噴き出す。


「ジーッ!!」

 大サソリが空気を震わせるような唸りを上げ、こちらへと振り向こうとした。

 左側の足は潰れ上手く動かせず、右側の4本の足をせせこましく動かし体の向きを変えようとする。

 真上から見た場合、左側の潰れた足を支点に反時計回りで回転していく。


「にゃっ」

 ミケちゃんがそれをじっと見る。

 硬鞭を持ってスススッと背後に寄ると、大サソリの後ろ足に向かって振りかぶる!

 死角から足を潰していくようだ。

 俺もライフル弾の装填を急ぐ。

 そんな俺をサソリの赤く光る目が捕える。


「ジーッ!!」

 大きく、威嚇するように鳴くと俺の方に向かって巨体を引きずるようにして近づき、その腕を振るった!


 すかさず後ろに大きく飛び退き、かわす。

 目の前を猛スピードの車が過ぎ去るような音と風を立て、大きな鋏が通り過ぎていく。

 尻への一撃がよっぽど効いたらしい。

 大サソリはミケちゃんを無視して俺だけを睨む。

 目が合うと、大サソリの頭部には細かくヒビが入っていることに気づいた。

 振り飛ばされた時の影響か?


 装填を終え、頭部への射撃!

 ライフル弾が岩のような甲殻を削り、大サソリの頭部から血が流れ始める。

 大サソリが唸りを上げながら再度腕を振るうが、距離をとって悠々と避ける。

 大股で距離を保ちながら歩き、一撃ずつ確実に撃ち込んでいく。


「ちぇすとーっ!」

 威勢の良い声と共に何かが折れたような快音が響く。

 ミケちゃんの方もようやく足の一本を叩き折ったようだ。


 それぞれが距離を保ち、死角に入って叩き続ける。

 じわりと大サソリを追い詰めた。

 それに危機感を覚えたか、大サソリが大きく鳴いた。


「ジーーッ!!」

 その鳴き声に反応したか、林から小サソリたちが戻ってきた!


「良いところにゃのにっ!」

 ミケちゃんは一旦足から離れ、そいつらを迎い打ちに駆け出す。

 だが、数が多く、俺の方にまで向かってきた。

 来たのは3匹。


「ちっ」

 即座に照準を変え、2匹を撃ち殺す。

 後1匹というところで、嫌な気配。

 大サソリがなぎ倒した木を放り投げてきた!


「うぉっ」

 慌てて避ける、がかわした際にサソリの屍骸を踏んでしまい、足を滑らせてしまった。

 尻餅を突き、すぐに立ち上がろうとするが、目の前には岩のような巨体。

 いつの間にか大サソリが近寄ってきていて、その大きな鋏が俺に向けて開いていた。

 鋏が俺に向かって迫ってくる。


「おにいさんっ!」

 ミケちゃんがこちらに気づき、硬鞭を放り投げる。

 硬鞭が開いた鋏の根元にぶつかると、ガチンッと音を立て閉じる。

 鋏は閉じたが腕の振りは止まらず、そのまま俺を押し飛ばした。


「ぐぇっ!」

 岩で殴られたような衝撃を受け、地面をボールの様に跳ね転がる。

 向かう先は崖、不意に地面に当たる感覚が無くなる。

 一瞬の浮遊感。


「うわわっ!?」

 無我夢中で腕を出し、崖っぷちを掴んだ。

 崖際で下半身が振り子のように揺れる。

 俺と一緒に転がってきた小石が、奈落へと吸い込まれる様に落ちていく。

 崖際は坂道になっているとはいえ、地面は20mは下。

 肝が冷える。

 とにかく戻らなきゃ、と両腕に力を入れてよじ登ろうとしたところ。

 それを待ち構えていたように小サソリが尻尾を振ってきた!



続きはこれから書くので今日の夜中になります。

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