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第130話 湧き水のアーティファクト?

 サソリたちは穴ぐらへと戻って行った。

 追撃でマグナム弾を食らわしたが、たいして効いてなさそうに見えた。


「ぼくの方は表面を結構削った感じがあったけど」

 ポチ君のライフルは7.62mm弾を使う大口径のものだ。

 人に当たれば簡単に風穴を開け、手足に当たれば半分ほど引き千切る程の威力があるのだが、それでも甲殻を削る程度にしか効かなかった。

 これ以上の打撃を与えるとなると青銅砲しかないのだが……もう火薬が無いんだよなぁ。


「とりあえず追い払えたのは良かった。倒すのは後で考えよう」


「そうだねー」


「それでこっちはどうするのにゃ。てか、コレ何にゃ?」

 ミケちゃんが水が湧き出している所を指差す。

 俺たちの居る巨大な掘削機のアームの上、その先端に近いところで突然水が湧いていた。

 沸きあがりの場所は床上10cm程で完全に宙から湧き、地上に向かって流れ落ちていく。


「どうなってるんにゃー?」

「なんでだろう」

 二人が湧き水をじっと見、水を手で掬った後、そのまま口へと運んだ。


「え? 危ないよ!」


「大丈夫にゃ、冷たくておいしいにゃ」

「うん、大丈夫そうだよー」

 そう言って、二人はそのまま水に口を付ける。

 ミケちゃんは手で掬い、ポチ君は水筒に入れ始めた。


 アーティファクト探知機を取り出し、再度チェックするがやはり反応がある。

 ただし、ガイガーカウンターが反応しないので放射能は出ていないみたいだ。


「二人ともちょっと離れて」


「うんー?」

「はーい」

 濡れた口を拭いながら二人が離れる。


 離れたのを確認して、探知機を水の湧き出し地点に向ける。

 瞬間、目の前にバチッ!と電撃が走ると、光が寄り集まり、石となったが……大きい。

 普段出てくるアーティファクトは小石程度、人差し指と親指で作る輪っか程度だが。

 これは手の平をめいっぱいに広げたぐらいの大きさがある。

 出てきたのは青い水晶玉の様な石で、石の中で青い炎の様な輝きが揺らめいていた。

 俺はこれを見たことがある。


「わぁ、きれいにゃー」

「これがアーティファクトの生成の瞬間ですか……」

「いつものより大きいねー、これもアーティファクトなの?」

 背のクーンも交え、3人がそれぞれ感嘆を上げる。


「ああ、たぶん《オアシス》だ」

 ゲームの中でキーアイテムとしてだけ出てきたアーティファクトだ。

 実際には使えなかったので詳しい効果がわからないが、環境に作用するものだったはず。


 ミケちゃんがうずうずと尻尾を揺らし、催促するようにこちらを見上げてくる。

 何で水が出ているのかとかわからないこともあるが、とりあえず手に取ってみるか。

 石を守るように張り巡らされた電気の檻に手を差し入れ、石に触れた瞬間。


 目の前が白黒になり、世界が止まった。


 白黒の世界は徐々にその影を濃くしていく。

 視線は動かせず、指先もピタリと空間に縫いとめられたようでほんの僅かにも動かせない。

 体全体が金縛りにあったように動きを止められ、肺も動かず、呼吸も止まる。


 呼吸が出来ないという恐怖に、なんとか肺を動かそうとするが。

 ど忘れしたか、呼吸の方法がわからなくなってしまった。

 焦燥を加速させるように、風景はどんどん真っ黒に塗りつぶされていく。


 全てが黒に染まり、目の前の石だけが青い燐光を散らばせる。

 石の中の炎の様な輝きが一際強く輝き、思わず目を瞑る。

 光が収まった後、体の自由が戻ってきていた。

 周りは自分と石以外全て真っ黒に塗り替えられ暗闇の中、辺りを見渡す。


「ミケちゃん? ポチ君? クーン!」

 呼びかけるが反応は戻って来ず、しん…と静まり返ったままだ。

 目の前で石がただ静かに青い燐光を放つ。


「これが原因だよな」

 もう一度、石に触れてみる。

 それと同時に頭に浮かび上がる言葉の羅列。



『エーテル変換システム《オアシス》へようこそ。

 何を望みますか』


「望み? 何を言っているんだ。とにかく戻してくれ」


『了解しました。ユーザーのログアウトを承認します』


 炎の輝きが一度揺らめいた後、世界が元に戻っていく。





 ハッ!として石から手を離す。

 周りを見回せば色が付いた風景に、乾いた空気。

 元の掘削機の上だ。


「どうしたにゃ?」

 ミケちゃんが心配そうに俺の顔を覗く。


「ミケちゃん……、みんなは無事か?」

 ポチ君の方を向けば、ポチ君も困惑したような表情を返す。


「どうしたのですか?」

 背のクーンが問いかけて来た。



 今、起きたことを皆に話す。


「よくわかんないにゃ。おにいさんがそれに触ったと思ったら、すぐに手を離してきょろきょろしてたにゃ」


「リーダーだけがその変な空間に行ったんだねー」


「おそらく意識のみに語りかけたんでしょうね。不思議なものです」


「ああ、おそらくそうだと思うんだが」

 手に持った《オアシス》へと視線を落とす。

 今は水も止まっている。

 何もせず出てきたことで止まってしまったようだ。

 手に持っても反応は無い、もう一度コレにアクセ……、おっといけない。

 これに干渉しようと思わない限りは大丈夫か?


「それでそれはなにが出来るのにゃ?」


「うーん、水は出せるみたいだけど……」

 詳しいシステムを聞く前に出てきてしまったからなぁ。

 やっぱしもう一度、中に入らないと駄目かね。




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