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第124話 早く帰るには?

少女の名前間違えてました、正しくはランです。

 ジニは用があるようで去り、代わりにランと言う少女を紹介された。


「それでこの村の案内が要る? それとも食事処に連れて行こうか?」


「いや、あーっと、とりあえずこの辺の事が聞きたいかな」


「わかった、にしても暑いねー」

 そう言いながら顔を手で仰ぎ、その視線はテントへと向けられる。


「ああ、気が利かなかった。どうぞ、中へ」

 テントへと手を向けると、ランはニコリと目で笑みを返し。


「お邪魔しまーす」

「お邪魔するにゃー」

「ねー」

 カーテンの様な入り口をくぐり、ランを先頭に二人も続く。

 俺も中へと入りバックパックを降ろし、中からクーンを取り出す。


「わー、大きな機械だね」

 ランが興味津々にクーンへと視線を向ければ。


「こんにちは、お嬢さん」


「うわ! 喋った? ロボットなの?」


「そうにゃよー」


「うわぁ……初めて見た」


「この辺にはロボットの商人たちは来たりしないのか?」

 俺もまだ見たこと無いが。


「うん、砂漠だし。車すらあんまし見ないよ」


「砂の上を走るんじゃな、スタックしたら大変か」

 スタックというのはタイヤが地形に嵌り、空回りしてしまうことだ。

 ここだと砂に足を取られそうだな。


「交易する人たちも……ほら、あっちにいるけど。大体、徒歩だよ」

 ランの指差す方向にもテントが立ち並んでいるのだが、そこで多くの人たちが日陰に身を休めている。


「え、徒歩で砂漠を渡るのか? ラクダとか使わないの?」

 ジニはラクダを使っていたし、さっき行った事務所のような場所の外にもラクダが何頭か繋がれていた。


「東の私たちの国から来る人はラクダに荷物を乗せて渡るけど、西から来る人たちは徒歩だね。

 ラクダは結構高いからね、向こうでも手に入るのかどうかもわかんないし。

 あ、前に話した商人のおじさんは外で人を集めれば安いとか言ってたよ」


 外って言うのは前に聞いた外地、要は俺たちの住んでいるような地方都市のことかな。

 まぁ、スラムに行けば人は余っているし、安いっちゃ安いんだろう。


「ラクダって高いのにゃ?」


「うん、宝石かちゃんとした機械なんかと交換するってのは聞いたことあるなぁ。

 後は警備隊に入れば貰えるって」


「シリングだといくら?」


「向こうのお金はわかんない」


 通貨に換算できないんじゃよくわからないが、前にシャーロットさんにパソコンを買い取ってもらったときは確か40万だったか。

 うん、スラムで人を雇った方がはるかに安上がりだな。

 もう一度、別のテントで休んでいる人たちを見るが、あまり上等な身なりをしているようには見えない。

 丸めたマントを枕に寝ているが、着ている服は擦り切れ、継ぎはぎもよく見かけられた。

 荷物を背負って砂漠を横断するのはかなりきついと思うのだが、いくらで雇われたのだろう?


「きつい仕事だにゃー」

 そう言いながらミケちゃんがカバンから水の入ったペットボトルを取り出す。

 ランがそれをじっと見て、ミケちゃんもそれに気づいた。


「飲むかにゃ?」


「わ、良いんですか。いただきます」

 うれしそうにミケちゃんの差し出すボトルを受け取り、口元を隠した布を下ろした。

 褐色の肌に薄ピンクの唇があらわになる。

 ミケちゃんはこちらに視線を送り、肉球を上に向け、お代わりを要求して来た。


 ランに見えないようにバックパックの中でスマホを弄り、水を召還。

 ついでにおやつにするか。

 ソーセージも10本召還する。


「はい」

 水と一緒にソーセージをクーンを除く3人に配る。


「ありがとうございます」

 ランはうれしそうに受け取り、サラミの様なソーセージの包装紙を剥ぐ。

 ミケちゃんとポチ君もソーセージの包みを剥ぎ、その匂いに目を細める。

 まるで葉巻の香りを確かめるかのように、鼻先でソーセージをくゆらせ、香りを楽しみ。

 大切そうに少しずつ齧っていく。


 俺もソーセージを齧りながら、少し思案した。

 ラクダ、高いのか。

 この砂漠を早く抜けるのに良いかな、と思ったんだけどな。

 戦車バザーが終わるまであと1週間。

 それまでに帰れればと思うのだが……。


「ここからチェルシーって言う西の街まで帰りたいんだけど、早く行く手段は無いかな?」

 ご機嫌にソーセージへと齧りついているランに尋ねると、頬を緩めながら彼女は顔を上げ。


「早く帰るならラクダに乗るのがいいですよ。隊長さんに掛け合えば売ってくれるんじゃないですか」


「恥ずかしながら実は買えるほどお金が無くて、貸してくれるか運搬してくれる人とか居ないかな」

 残金が1335シリングしかないので、借りるにも厳しいだろうが。


「んー、貴重なものだしー、貸してくれる人は居ないんじゃないですかね」


「ですよねー」

 ラクダタクシー的なものをちょっとだけ期待したが、やっぱ無いか。


「あ、でも一応隊長さんたちに訊いてみましょうか?」


「あ、おねがいできるかな」


「それじゃ後で食堂の方に来てください。向こうですから」

 そう言って村の入り口近くの横に広い建物を指差す。

 水の入ったコップの絵が描かれた看板が入り口の上に掛けられていた。


「ありがとう」

「ありがとにゃー」

「ねー」

 俺が頭を下げると二人も同調し、俺のバックパックからソーセージを取り出すと、それをランに握らせた。


「どうもですー。でも訊くだけですよ?」

 ランは受け取った5本のソーセージをポケットに大切そうに仕舞い、立ち上がる。

 テントを出る間際、


「あ、水を汲みたいならオアシスは治安事務所の裏にありますから」

 そう言って、出て行った。


 見送った後、横になる。

 布で出来た天井を見上げながら、これからの事を考える。

 お金無いなぁ、どうしようと思案していたところ、肩を揺らされた。


「お代わり欲しいにゃー」

「僕もー」


「はいはい」

 コレ売れるだろうか、などと考えながらスマホを弄った。



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