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第111話 ビル内へ

遅れました。

 砲撃を受け、巨人が後ろ倒しになった。

 左右、どちらの頭も口元を押さえジタバタと。

 左の方には口の中に撃ち込み、喉を直撃したと思ったのだが、これでも死なないのか……。

 右の方は指の隙間から前歯が欠けているのが覗き見れた。

 さっき宙を舞っていた破片はこれか。

 ギガントはよほど痛いのか立ち上がる気配無く、寝転がったまま腕を振り回す。

 その腕がバスへと当たり、真ん中からひしゃげ、折れた。

 爆弾が落ちてきたような音を盛大に立て、前輪と後輪の間の車体が直接地面へと押し当てられる。

 それを見て、ゆっくりと後ずさる。

 こんな怪獣とやってられるか。

 バスを大きく迂回して俺も建物の中へと逃げる。


 3人が先に入り込んだビルからは何かが争うような声や物音、それと微かにだがパシュッ……と空気の抜けるような音が伝わってきた。

 3人も戦っている急がなければ。

 ビルに入った俺を待ち受けていたのは、広いスーパーの様な室内、そこで大量のグールどもに追い回されている3人だった。

 それぞれに10体前後のグールが襲い掛かり、それから必死に逃げている。

 モルダーさんとポチ君は拳銃片手にグールどもの包囲の隙間を掻い潜り、モルダーさんは逃げ様に近くの棚やテーブルを倒したりしている。

 それに直進しか知らないグールどもが引っかかっていた。

 ミケちゃんは……

 部屋の隅にグールどもが集っている。

 その先には棚に上ったミケちゃんが!

 天井近くで、下に向かって爪を剥きながら威嚇をしている。

 すぐにそちらに向けてショットガンを連射!

 轟音が室内に響き渡る。

 10体近く居たグールが4発の散弾を受け、急な突風を受けたように上半身を傾かせ、足元から崩れる。


「ミケちゃん!」

「ミケさん」

 クーンを背負った俺がすぐに駆け寄る。

 途中、グールたちの倒れた中に見慣れた鉄のこん棒を見つけたので拾った。


「助かったにゃ、掴まりそうになって思わず硬鞭こうべんを落としちゃったにゃ。後は見ての通りにゃ」

 ミケちゃんが恥ずかしそうに俺から受け取った。

 銃は?と思ったが、さっきモルダーさんが持っていた銃にサイレンサーが付いてた様に見えたから、貸したのかな?

 すぐに残りの二人に合流する。

 モルダーさんの方は……グール相手に障害物を上手く利用してやり過ごしている。

 こちらはまだまだ余裕がありそうだ。

 ポチ君の方は……


「ひぇぇーっ!」

 グールを引き連れて全力で逃げている。

 まずはこっちだ!


「ポチ君!」


「リーダーぁぁ!」

 ポチ君がこちらへと向かってくる。

 すれ違い様に銃を構え、グールどもを向かい撃つ。

 正面から浴びせるように連射!

 だが、2発撃ったところで弾が切れ、3発目はカチリッと引き金の音だけが響く。

 正面の4体は倒れたがその左右に居た、残り6体が俺へと勢いを止めずに向かってきた。

 思わず、せめてカウンターを当ててやろうと銃床を向けたところ。

 そこに小さな影が割り込み、一閃!


「シャーッ!!」

 全身を捻りながら硬鞭を横に一薙ぎ!

 その強烈な一撃を2体が顔に受け、ひっくり返る。


「にゃー、にゃー、にゃーっ!」

 そのまま間髪居れずに乱打!

 鋼で出来たこん棒がしなるほどの速さで縦横無尽に振られる。

 グールの突き出してきた手を叩き折り、それに驚いたグールが後ろへと退く。


「周りのは任せるにゃ!」

 ミケちゃんが俺の援護に入ってくれ、その間に装填完了。

 グールどもは何度か向かってこようとしていたが、ミケちゃんが威嚇しながら剣先を向けると止まる。

 先ほど折られた腕の痛みからびびっているように見える。

 硬鞭を正眼に構えるミケちゃんの頭上から、ぬっと銃身を出す。

 立ち止まったグールに向け、乱射!

 轟音が鳴り響き、ミケちゃんが首を竦めた。


「うるさいにゃー」

 振りむく表情は眉を顰めている。


「あ、ゴメン!」

 ミケちゃんに謝り、次のモルダーさんは……


 相変わらず障害物を上手く使ってグールを捌いているが、その数が倍ほどに増えている。

 奥を見れば、階段から下りてくるグールたちが居た。

 モルダーさんはこちらへと気づくと、よっと言う感じで手を上げる。

 まだ余裕有りそうだな。

 向かう前に装填。

 入り口近くの開けた場所に移動し、近くの棚を倒す。

 これで入ってくる場所を限定できた。


「モルダーさん!」

 声を上げるとモルダーさんも手を上げ応え、増えたグールを引き連れてこちらに向かってくる。

 ガスマスク越しにも聞こえる程、荒く息を吐くモルダーさんとすれ違い様に銃を正面に向け乱射!

 津波のように向かってきたグールを押し戻す。

 隣でポチ君も銃のスライドが開ききったままになるまで連射している。

 全てのグールに当てることは出来なかったが、前列の10体が弾丸に引き裂かれバタバタと倒れたところで、それに足を引っ掛け後列も止まる。

 さらに追撃だ、とサイドバックの弾をまさぐってるところで、グールの表情に気づく。

 今まで追い回していたはずが一瞬でその優勢を崩され、膝を突き、驚愕、恐れと言った表情だ。


 ここだ。


 ショットガンを取り落とし、代わりに背のハンマーを引き抜きながら、背を丸めやや前傾となり、駆ける!

 ミケちゃんも気づいたか、硬鞭を肩に乗せ俺に併走してくる。

 敵は引いた、ならそこを一気に踏み抜く!


「うぉぉぉ!!」

 まだ立ち上がれないグールに向けて横薙ぎの一撃!

 槌頭が頭蓋にめり込み、首を引きちぎって頭を吹き飛ばす。


「ちぇぇいっ!」

 ミケちゃんの跳び上がりからの兜割がグールの頭蓋を叩き割った。


 グールどもが慌てて立ち上がろうとする。

 だが、それを悠長に許すようなことはしない。

 常時発動しているスパークトルマリンへと意識を移す。

 それを収めた胸ポケットから一際強い青い光が零れた。

 体がカッと熱くなり、走り回って溜まりつつあった疲労が霧散する。

 体の奥から迸る熱のままにハンマーを横八文字に振り回し続けていく。

 次々とグールを打ち据えていくが、その間に立ち上がったグールが俺へと拳を振り上げる。

 それを肩で受け、お返しだ!


「らぁっ!!」

 リミッターの外れたような手加減無しの一撃がグールの胴体にめり込み、ぶっ飛ばしていく。

 吹っ飛んだグールは3m先にある棚を押し倒し、埃を上げる。

 左右を見回すが俺たち以外に立つ者は居ない。

 今ので最後だったようだ。

 俺と同じで肩で息を吐くミケちゃんと目が合い、笑う。

 互いの獲物を当てて、ハイタッチした。



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