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第108話 ガイド

 ガレキから出てきたガスマスクの人物が俺たちにじっと視線を送ってきた。

 クーンを見たところで首を傾げるが。


「あんたらがロックの紹介か?」


「そうです! ロックさんからこの手紙を受け取って……」

 バックパックから手紙を取り出し、見せた。

 手紙を受け取るとガスマスクの男は一つ頷き。


「確かに俺が送った手紙だな。俺がガイドのモルダーだ。こんな所で立ち話もなんだ。こっちへ来い」

 壁から離れ通りの方へと向かう。

 そのやや小さな背を追い、ミケちゃんたちをリアカーに乗せてついて行く。

 向かった場所は通りの向こうの崩れた建物。

 2階建てで1階部分はガレキで埋まっている。

 ガイドは辺りを見回すとガレキをよじ登りジャンプ、2階の窓へと手を掛け入っていく。

 しばらくしてロープが下りてきた。

 登って来い、ということだろうか。


「クーン、バックパックへ」


「おねがいします」

 リアカーを通りの端に置き、クーンを背負った俺を先頭に登る。

 窓から入った中は雑然としてあり、テーブルやイスなどが壊れれたまま放置してあった。


「こっちだ」

 入りこんだ部屋の隅にガイドが座り込み、呼ばれる。


「金は持ってきたのか?」

 事前の約束で依頼料は20000シリング。

 3人で出し合ったものを封筒に入れて用意してある。

 それを見せ、


「確かにあるようだな。それじゃ説明といこうか。まず、どこまで行きたいんだ?」


「それでしたら私から説明を」

 背のクーンが俺の肩越しにアームを伸ばす。


「うおっ!? 動くのかよ。……ロボットなのか?」

 置物か何かと思ってたようだな。


「はい、クーンとご主人様に名付けてもらいました。よろしくおねがいいたします」

 クーンが擦り切れた紙切れを渡す。


「そ、そうか。それで……ここまで行きたいんだな?」

 渡した物は色あせた昔の地図で中央近くにある銀行の場所を赤ペンで丸く囲んである。


「ここなら地下道を通っていけば近くに出られるな。だが、中央付近か……。

 まぁいい、では案内する条件を伝えるぞ。俺がそこまでの案内はするがそれ以上は付き合わない。案内したら俺はここへと戻る。

 そこから先はお前たちで頑張ってくれ。帰りは行きの道を使って戻って来い。

 それと俺はここで二日間待つが戻ってこなかった場合はギルドにその旨を伝える。荷物があれば預かっておくぞ」


「それじゃ表のリアカーをおねがいできますか?」


「わかった。他には?」


 ミケちゃんたちと顔を合わせるが、他に預けるものも無いようだ。

 ミケちゃんがそう伝えると。


「では行くぞ」

 ガイドは近くに置いてあった長い板を持ち上げると、それを窓から出し隣のビルの窓へと掛ける。

 板を即席の橋として隣のビルに移る。

 俺たちもそれを追うが板に足を掛けると、ぎしり……と軋む。

 念のためアーティファクトで重さを消して渡った。

 隣のビルへと移ったが、ガイドは俺たちの姿を確認するとさっさと先に行ってしまう。

 今度は階段を下りていくようだ。


「足元に注意しろ」

 そう言ってガイドはヘッドランプを点ける。

 階段内に明かりは無く、暗い。

 俺たちもライトを持ってゆっくりと下りていく、2つ下りて地下1階へ。

 階段は終わり、真っ暗な通路に何処までとも知れず続いている。

 ライトの明かりが無機質なコンクリートの壁を照らす。


「こっちだ」

 先を行くガイドの明かりを目印について行く。

 俺の後ろでミケちゃんがスンスンと鼻をならした。


「なんか変な臭いしないかにゃ?」


「うん、トイレみたいな臭いだよー」

 ポチ君も気づいたようだ。

 俺にはよくわからないが。



 しばらく歩いたところでガイドが壁に光を当て、何かを確認している。

 ライトの中には緑のペンキで下を指す矢印とその隣に鉄製のドアが。

 ドアの前で立ち止まり、こちらへと振り返った。


「全員付いて来ているか?」

 俺も後ろへ振り向きミケちゃんとポチ君を確認する。

 クーンは俺のバッグの中だ。


「今度は中だ、俺より前に出るなよ」

 ドアを開け、中へと入っていった。

 俺たちも後に続いて入るが、……足元が変だ。

 床が斜めになっているような。

 ガイドの後ろから部屋の中を確認する。

 ライトを左右に振り、辺りを見回す。

 部屋の壁には大きなヒビがいくつも入っており、床へと目を向けると大きな穴が見えた。

 床全体が斜めに崩れかけ、部屋の真ん中には崩落した穴が開いている。

 穴の淵には杭が打ってあり、それにロープが繋がれていた。


「ここから下りるぞ」

 ガイドがロープに手を掛けるが、ここまで来れば俺にもわかる。

 部屋の中には饐えた臭いが充満していた。


「下水を通っていくにゃ?」


「そうだ。下水道はこの遺跡全体の地下に張り巡らされている。ここからならギガントに遭遇せずに動ける。

 アメーバやグールは出るがな」


「ちっこいのは出るのにゃ。大変にゃ」

 ミケちゃんが身につけた武器を手で確認する。


「安心しろ、この道は奴らとはあまり遭遇しない。奴ら、マンホール付近にたむろしているからな。

 グールとアメーバがやり合っているのをよく見るよ。ここはやつらの縄張りからは遠いんだろう」

 そう言うとガイドはロープを降りていく。

 俺たちも後に続いた。



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