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第105話 青銅砲

「やっぱでかい銃はカッコ良いにゃ」

 ぺしぺしと青銅砲を叩く。


「二人ともありがとうね」

 俺が礼を言うと、


「えへへ」

「にゃっにゃっにゃ」

 二人がめずらしく照れている。


「談笑してるところ悪いけどよ、それで弾はどうするんだ? それは専用の弾じゃないと飛ばねぇぞ」

 一人蚊帳の外の店主がその手に持った鈍色の鉄球を勧めてくる。

 色を見ると鉄ではなく鉛だろうか?


「それももらうにゃ。いくらにゃ?」


「砲弾と炸薬のセットで一つ1000シリングだ」

 店主が良い笑顔で告げてきた。

 財布を開けたミケちゃんが口を開けたまま動きを止める。


「高いにゃ!」


「しょうがないだろう、でかいんだから」


「ん、そうなのかにゃ?」

 ミケちゃんが困った顔をこちらに向ける。


「まぁ、これは仕方ないと思うよ」


「そうだろ? これにはマグナム弾30発分の鉛と火薬を使ってるんだ、安いぐらいだぜ」


「それだと安く聞こえるにゃ」

 たしかに.357マグナム弾で1発120シリングの買取になるからな。

 その点で不思議だ。


「これには薬莢が付いてないからな。鉛と褐色火薬の練成なら鍛冶屋でも出来る分、安上がりだ。

 薬莢を作るには専用の機械が必要で一般には出回って無ぇからな」


「そうなんですか」


「へー、それじゃもしその機械を見つけたら高く売れるにゃ?」


「いや、銃器関連の機械は見つかり次第政府に没収されるぞ」


「そんなの横暴にゃ!」


「俺に言われてもなぁ、治安の関係上ってやつだぞ。まぁ、もし見つけてもうちには持ってくるなよ、買い取れ無ぇからな」


「そういうのってギルドでも買い取ってくれないんですか?」


「駄目だろうな。精々、貢献ポイントと交換ってところだろう」

 多分、上のランクへ上がるためのポイントのことだろう。


「それでいくつ買うんだい?」


「うー、ちょっと待つにゃ。ぽちー?」


「うん」

 ミケちゃんが呼ぶとすぐにポチ君が寄ってきて、二人で内緒話を始める。


「……にゃ」

「……うん」

 話が終わったか、ミケちゃんが前に出る。


「決めたにゃ、5発くれにゃ」

 ミケちゃんが財布を開こうとしたので、押しとどめ。


「いや、これぐらい俺が払うよ」

 そう言うが俺の手が柔らかく払いのけられる。


「いいにゃ、いいにゃ。弾までセットにゃ」

 そう言って、支払ってしまった。


「毎度あり、点火薬には9mm弾が要るがそれは必要か?」

 青銅砲には9mm弾を差し込む穴が開いてあり、そこに弾頭を抜いた空砲を入れ、引き金と連動したハンマーで叩いて点火するのだ。


「9mmはいっぱい持ってるから大丈夫にゃ」

 ミケちゃんがいらにゃい、と手を振ると、


「そうかい」

 店主は棚へと伸ばした手を引っ込める。

 これでここでの用事は済んだだろう。


「それじゃ」


「ああ、また来てくれよな。レーザーガンなんかもおすすめだからさっ」


「ばいばいにゃー」

 笑顔の店主を尻目に店を後にする。

 外へと出ると日が落ち始めたところだ。

 まだ空は赤くないが、日に陰りが出てきた。

 少し早いが夕飯にするか。

 ネザーさんの屋台へと行く。



「ああ、いらっしゃい。座わんな」

 いつもの席へと勧められ。

 さっきはプレゼントして貰ったから、ここは奢ると言うと。


「いっぱい食べるにゃよー?」

「うん!」

 二人が狭いテーブルに並びきれないほど注文し始めた。

 二人が食べきれるかどうか不安なので俺は串焼きだけに留める。


「今日はずいぶん食べるねぇ」

 その注文にネザーさんが驚いていた。


「今日は空飛んできたからおなか空いたのにゃ」


「はぁ?」

 何言ってんだこいつ?みたいな怪訝な顔を向ける。


「本当に飛んできたんですよー」

 ポチ君も言うと、ネザーさんも信用し始めたのか。


「飛んだって?」


「紙鳥を大きくしたので土手からぶわっ、びゅーんって飛んだにゃ!」


「紙鳥?」

 何だろう。


「紙で折った……、あのハンググライダーを小さくしたようなやつですよ」

 ポチ君が説明してくれるのを聞くと紙飛行機みたいなものか。

 その説明にネザーさんも納得したのか。


「ああ、なるほど。土手からひょいって感じかい」


「ちがうにゃ。ぶわっ、ひゅーんにゃ。あちきは今日流星になったのにゃ」


「ははは! 大げさだねぇ」

 ミケちゃんの説明にネザーさんが大笑いするが、多分土手からひょいって飛び降りたぐらいに思ってるんだろうな。


「むー、なんでわかんないにゃ?」

 ミケちゃんがむくれてしまった。


 食事も終わり、屋台を後にする。

 二人は大量の料理をなんとか食べようとしたが6割ほど食べたところで動きが止まったので、残りは俺が平らげた。

 お陰でお腹が張り詰め、重い。

 宿へと戻ってくると、受付でロックさんが手紙を渡してきた。


「明日、それをガイドのやつに渡してくれ。手伝い賃は20000だ」


「わかりました。ありがとうございます」


「気を付けろよ」

 軽く会釈をし、部屋へと戻る。


 二人も食べ過ぎたのか、部屋へ入ると同時にベッドへと突っ伏した。

 手紙を無くさないようにバックパックへと入れ。


「明日にゃ?」


「ああ、明日遺跡中央を探索だ」

 今日の内に武器の点検をやっておかないとな。



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