第104話 ガンショップ
それから30分交代でミケちゃんとポチ君が飛んでいく。
俺は変わらずロープを掴み、二人が風に流されて飛んでいかないように踏ん張る。
二人とも2回ずつ飛び、ミケちゃんが3回目に入ったところでポチ君が腕をさすり、少し震えていた。
「寒いの?」
「うん、上は下と違って風が強いから冷えてきた」
いつも灰色のコートからはみ出していたしっぽも、内へと引っ込んでしまっている。
「それじゃミケちゃんが降りてきたらちょっと早いけど帰ろうか?」
「ええー……、もう一回、もう一回だけ」
腕をさするのを止め、両手の平をすり合わせて懇願してきた。
「じゃあ次で最後ね。終わったら一度街に帰ろうか」
「うん!」
うれしそうに笑うポチ君を尻目に、今度は上空のミケちゃんを見上げる。
ミケちゃんが降りてきたら、そろそろ帰ることを話さないとな。
それにしても上空は風が強いのか。
俺はまったく飛んでいないから、実感が無いなぁ。
このグライダーは一般的なグライダーの半分以下の大きさで、普通なら俺なんかを乗せて飛ぶことは出来ない。
まぁ、アーティファクトの力で体重の9割ほどを消せるから、俺でも飛べるんじゃないかと思うのだが。
問題はその時、誰がロープを掴むかだよなぁ。
俺でもロープに引っ張られ、足元を滑らせることがある。
二人が掴んだらそのまま飛んで行ってしまいそうだ。
また今度の機会の時に適当に重りになるものを作ってくるか。
そうこう考えているうちにミケちゃんが降りてきた。
俺に向かってゆっくりと向かってくる。
俺の手前でミケちゃんがふわり、と飛び降り、残った無人のグライダーをジャンピングキャッチ!
グライダーを地面へと降ろし、ロープを絡まなせないように纏める。
「楽しかったにゃー。ポチ、交代にゃ」
ミケちゃんがとてとてと俺たちの方に寄ってくるが、ミケちゃんも腕をさすっている。
「ミケちゃんも寒い?」
「ん、そうだにゃー。上は冷えるにゃ。でもまだまだ大丈夫にゃよ!」
ミケちゃんが腕を曲げて力瘤を作るようなポーズをとるが。
「ダメだよ、今日はこれでお終いね。ポチ君が飛び終わったら帰るよ」
「えー」
ミケちゃんが不満そうに頬を膨らませる。
「また今度休みの日にね。次の都市探索が終わったら戦車バザーまでずっと休みでも良いんだし」
お金は最近結構稼げたから、生活費も問題ないしな。
「バザーはたしか4日後にゃ。明日一日で探索が終わればそれからずっと遊べるにゃ?」
「うん」
「それなら今日はこれで我慢するにゃ。そうと決めたらなんか冷えてきたにゃぁ。おお、寒っ」
大げさに腕をさすっている。
「あのー、そろそろ……」
「ああ! ごめんねポチ君」
急いで支度をし、ロープを持って駆ける!
加速の付いたところでポチ君の乗ったグライダーを引っ張り上げ、飛ばしていく。
ポチ君を乗せたグライダーが風に負けないように、果敢に攻め込んでいった。
……
…………
「さて、それじゃ帰ろうか」
「わかったにゃー」
「うん」
あれからポチ君も降りてきて、荷物をまとめ帰り支度だ。
グライダーは手回しのネジを回すだけで分解できるので、パイプの部分を揃えて、それを帆に使ってた布で巻きあげた。
それを今はミケちゃんが持っている。
「流星号はあちきが持つにゃ!」
名前まで付けたようだ。
その名前に横のポチ君もうん、うんと頷いている。
街へと戻ってきたが、まだ夕食に早い。
さて、どう時間を潰すか?
「リーダー、明日探索なんでしょ。そろそろ新しい銃を買わなくても大丈夫なの?」
「ああ、それがあったか。うん、俺はガンショップに行ってくるけど二人はどうする?」
「あちきも行くにゃ」
「ぼくもー」
みんなで南のバザーにあるガンショップへと向かう。
南門近くのバザーは昼の熱気と人の熱気が混ざり、暑苦しい。
人並みではぐれないように手をつないで、ガンショップへと向かう。
前に弾を売った事のある店へと入ると、カウンターで銃を磨いていた店主が声を掛けてきた。
「いらっしゃい。お、こないだの兄さんだな。決めたのかい?」
スキンヘッドで口の周りにヒゲを生やした店主が眉尾を上げる。
「こんにちは、ショットガンを見せてもらっても良いですか?」
「ああ、こっちにあるぞ。どっちにするんだい?」
店主が指し示す棚には二つのショットガンが。
片方は銃身が2つ横にくっついた2連式ショットガン。
もう片方は銃身の下に弾を収める弾倉パイプが付いているポンプ式ショットガン。
値段はそれぞれ2万と5万だ。
値段の開きを考えるといろいろ考えてしまうのだが、使い道は実戦だ。
なら選ぶ方は決まっている。
「ポンプ式ショットガンの方をください」
「あいよ、弾はどうする?」
そう言って今度は銃弾が置かれた棚を示すが。
「うわ、高いな……」
ショットガンの弾は正規品で一発400シリング。
ハンドロードの非正規品でも200シリングだった。
手持ちはショットガンの分を抜けば15875シリング。
50発は欲しかったのだが、どうしよ……
ハッと思いつき、SHOPアプリを起動。
弾薬の項目を探すと……あった。
■ショットガン用弾薬 5ルーブル *規格は問わず
ルーブルは今1621ルーブルある。
昨日の巨大アメーバの分が効いたな、これなら300発買える。
ミケちゃんではないが撃ち放題だ。
土壇場でケチるのは自殺行為だからな。
「すいません、弾はまた今度。へへ」
「ん、そうか? また金貯めて来な。それじゃショットガンの代金だが……」
代金を支払う。
その間、ミケちゃんたちが静かだなぁと思っていたら。
二人はこの前の青銅製の大砲を見ていた。
静かに見てるのかなと思っていたら、おもむろにそれを持ち上げる!
「あ、こら! 触るなって言っただろ!」
高いものなので店主もおもわず声を上げた。
「ふふん。店主、いくらにゃ?」
店主の怒鳴り声も何のその、軽々と青銅砲を抱えたミケちゃんが胸をそらす。
「あ? 5万だぞ、買えんのか?」
「ポチー?」
「はーい」
呼ばれたポチ君がミケちゃんのカバンから財布を抜き、お金を取り出す。
それをカウンターに置き、さらにポチ君の財布からも取り出した。
それに目を剥いた店主が数える。
「……確かに5万あるな、えぇ……」
まさか小さな二人がこんな大金を出すとは思ってもおらず、困惑している。
「おにいさん、これはあちきたちからにゃ」
そう言って俺に青銅砲を渡してくる。
ミケちゃんの手を離れた瞬間、重さが戻り、手が下へと引っ張られる。
重い……。
俺もオブシディアン・タールを使い、重さを消した。
「いつも世話になってるからプレゼントにゃ」
「うん」
「え、でも良いの? これ、すっごく高いのに」
「もちろんにゃ。おにいさんのお陰であちきたちも稼げたし、おにいさんも自腹でショットガン買ってるにゃ」
「そうだよー」
二人がしっぽを揺らしながら言ってくる。
「そいつをおもいっきしぶっ飛ばすにゃ」
そう言ってミケちゃんが親指を立てた。




