第9話 川辺に行ったらネコに会った
ミケさんの毛色書き足し。
川辺でミケさんがカエルを獲っているのを見つける。
ミケさんは、さっき行った南の立ちんぼストリートといういかがわしい場所で会ったネコの亜人さんだ。
身長は140cmぐらいで俺より頭一つ小さく、薄汚れたワンピースを着ている。
毛色は白をベースに、黒と茶色がまだらに混ざっている。
ちなみに、俺は170cmの中肉中背でお腹に脂肪がちょっとついてるぐらいだ。
そんなミケさんは川でカエルを獲って、ホクホク顔で川辺へと歩いてくるところで目が合った。
「あ、今朝の変態さんにゃ。」
「へ、へ、変態ちゃうわ。紳士、身も心もきれいな紳士だよ!」
「何言ってるかわかんにゃいけど、こんにちはだにゃ。」
「あ、こんにちは。狩りの最中ですか?」
「狩りっていうほどじゃないけどカエル獲ってるところにゃ。」
「へー、俺はカエルはまだ獲ったことないんですけど、やっぱ売れるんですか?」
「んー、売れることは売れるけど安いにゃ。
1匹5シリングにしかならないにゃ。
これは食べる用にゃ、この辺の子はみんなそうじゃないかにゃ?」
そう言ってミケさんは捕まえたカエルの首をねじり折った後、腰の袋にしまった。
「ほうほう、なるほど。
俺は最近ハンターになったばかりなので勉強になります。」
「やっぱハンターなのかにゃ。
お兄さんは何獲ったんにゃ?」
「ハゲネズミです、あっちの草原で2匹狩りました。」
「2匹もかにゃ!すごいにゃ。
今朝会ってからたいして時間も経ってないのに2匹獲れるのはすごいにゃ。
お兄さんすごいにゃー。」
「えへへ、いやいや、そんなことないですよ。」
褒められておもわず謙遜するが、やはり褒められるのはうれしい。
昨日、おかまさんにも褒められた気はするが、やはり可愛い娘のがうれしい。
相手は遺伝子レベルで可愛い種族の娘だけど。
そんな、おだてられて気分の良いところにハゲネズミの狩りの仕方を教えて欲しいと頼まれたら断れないわけで。
ミケさんと一緒に、また草原へと戻ることにした。
草原で餌を置くポイントを探しながら世間話をする。
聞けば、ミケさんもハゲネズミ狩りをしたことがあるそうだが、その時にケガをしたので安全なカエル獲りをしているらしい。
娼婦の様だがハンターの真似事をしないと食べていけないのだろうか?
草原の中に、ぽっかりと穴が開いたような草の生えてない見通しの良い場所を見つけたので、そこにパンくずを撒いたら、パンくずにミケさんが飛び掛った!
「ちょ!何やってんですか?!
それバッチいからペッしなさい、ペッ!」
「嫌にゃ!ごはんにゃ、ごはんにゃ!」
撒き餌を拾い食いするミケさんを止めようとするが、イヤイヤをしながら結局全部食べられてしまった。
「もう!これハゲネズミをおびき出す餌だったんですよ。」
「そんな上等なものを餌にするなんておかしいにゃ!おかわりを要求するにゃ!」
その後も手元に残ったパンくずを撒こうとするが、ミケさんが飛び掛ろうとする姿勢を見せるので仕方なく新しいパンを1つあげることにした。
「うまいにゃ、うまいにゃ。
流石ハンターは良い物食ってるにゃー。」
「もう邪魔しないでくださいよ。」
「わかってるにゃ。頑張ってにゃ。」
気を取り直してパンくずを撒き、少し離れた背の高い草の中にバックパックを下ろしながら身を隠した。
撒いて20分ほどしてから、撒き餌の近くの草が揺れる。
来たかと注目してると、なんと2匹のハゲネズミが現れた。
それを見てミケさんも野生の血が騒ぐのか、目を細めて様子を伺っている。
そんなミケさんに待てをし、ハゲネズミが餌に食いついたところで走り寄る、これは俺の獲物だ。
驚いた様子で動きの固まった、1匹の頭部に蹴りを叩き込む!
つま先の感触を信じるなら、一撃で頭蓋を叩き割れたようだ。
走った体をすぐに止めることはできないので、3歩使って減速するが、その隙に残りの1匹は俺の死角を沿うようにして近づいてきていた。
振り返った時には、俺の左足にハゲネズミが飛び掛り、噛み付く!
瞬間、本能的に膝の力を抜き、右足に重心を移して左足での胴回しでハゲネズミを振り払った。
振り飛ばされたハゲネズミが体勢を整えようとするが、今度はこっちがそんな隙は与えない。
一息でハゲネズミに駆け寄り、大股で歩くように軽く足を振り上げ、つま先をハゲネズミの頭部に当てる。
当てた瞬間、下半身の力を入れ、駆け込んだ運動エネルギーでつま先を押し込み、ハゲネズミの頭部を打ち砕いた。
ハゲネズミを打ち倒し一息ついたところへ、ミケさんが駆け寄ってくる。
「おにいさんすごいにゃ!
こん棒で倒す人は見るけど蹴り倒す人は初めて見たにゃ!」
「ははは、俺はこん棒持ってないしね。
それにこいつら蹴りやすいし。」
俺はハゲネズミを集めて手を合わせた後、ハゲネズミの血抜きをしながら考える。
今日は4匹狩れた、ギルドに持っていけば200シリングだから今日の宿代と南での調査費も含めて十分かな。
問題は合わせて60kgほどになるから持って帰るのがしんどいか。
さて、どうしようかと考えていると、ミケさんがうらやましそうにハゲネズミを見てるのに気づく。
せっかく出会った亜人さんだし、出来れば仲良くしたい。
情報収集という本来の目的に沿うなら、ハゲネズミ1匹を進呈して聞き出せるなら安上がりでもある。
まだ貯金も無い身だし、宵越しの銭は持たないなんて刹那的衝動生活をするのもバカらしいだろう。
なので問いかける。
「もしよかったら1匹あげようか?」
「え?!本当かにゃ!
は!そうやって、このミケさまの若い体をしゃぶりつくすつもりだにゃ?
エロいにゃ、おにいさんはメスを見れば追い回すどスケベハンターだにゃ。」
「いやいや!違いますから。」
「そのすぐ否定するの止めるにゃ!プライドが傷つくにゃ。」
「あ、ごめんなさい。
そうでなくて、ミケさんとこれからも仲良くしたいなーってのと、この町のことを聞きたくて。」
「ほうほう。」
「俺、この町に来たばっかでこの辺の事よく知らないんですよ。」
「わかったにゃ、それならこの町のことをこのミケさまが教えてあげるにゃ。
代わりにこのネズミはもらっていいんにゃね?」
「ええ、どうぞ。」
「うひょー、ネズミ肉はひさしぶりにゃ!」
1匹を獲物袋に入れ、もう1匹をロープで縛り、それをホクホク顔のミケさんが背負って川辺へと移動する。
あそこは座るのに適当な石が転がってるからだ。
お日様は、自分たちの真上へと差し掛かって来てる。
いろいろ聞きたいし、ちょうどいいから昼飯にするか。
バックパックを開けて、食料袋を取り出すとミケさんが期待した目でこちらを見てくるぞ。