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第100話 衝撃

 巨大アメーバから撤退を決めた俺たちの前に、大砲担ぎと呼ばれるAランクハンター、ミポリンさんと言ったか、が現れた。

 彼女?は右手に太く長い大砲を持って俺たちの方へと向かってくる。


「あんたたち、私の後ろにお下がりなさーい?」

 そう言って、奥の排水路を抜けて来ようとしている巨大アメーバへと向かう。

 俺たちは顔を見合わせるが、上位者の言うことだ。

 素直に従うことにした。

 俺たちがミポリンさんの後ろに回ったとき、近くの排水路からゴポッ……と音が立った。

 取りこぼしたアメーバだ、ミポリンさんの方へと向かってきた。


「キャッ! やだー」

 そう言って踏んづける。

 それだけでパツンッ!とアメーバが弾けた!


 軽く踏んだように見えたが、どれだけの体重……、不躾な事を思った瞬間、腹に重く冷たい冷気を感じ膝の力が抜けた!

 目の前の背中から威圧感を感じる。

 まるで殺気でできた鉄拳で腹を打ち抜かれたような。

 うん、失礼なことを考えるのは止めよう。

 女性?が重い訳が無い。

 現に俺の横のミケちゃんとポチ君もあさっての方向を向き、見なかったことにしている。

 あれは多分大砲の重さだな。

 あれだけの鉄の塊だ、何kgあるんだろう?

 アメーバが弾けたのを見ても、数十kgじゃ足りないように思える。

 そうこうしている内に巨大アメーバが奥の排水路を抜け、こちらへと迫ってきていた。


「あんたたち、ちょっとうるさくするから気を付けなさーい?」

 そう言って、大砲を巨大アメーバへと向ける。

 大砲は根元の部分が太く、あの部分が発射機構なのだろう。

 溶接で付けた様な無骨なグリップを握り、さらに手前のレバーを引けばガコンッと何かが外れる音が立つ。


 ロックを外した?

 やばい!と思って両手で耳を塞ぐが、横の二人はぼけーっと大砲を眺めていた。


「二人とも! 耳を……」

 声を掛けるが一瞬遅し、


「行くわよー……オラァ!!」

 大砲が火を噴く!

 薄暗い下水道内がパッと閃光で照らされ、ドッ……と音が聞こえた瞬間には衝撃波で全身を打ちのめされた!

 耳がキーンッ……となり何も聞こえない、全身の細胞へと等しく渡った衝撃波に体が悲鳴を上げる。

 ショックで自然と体の力が抜け、横になれ、休めと本能が訴えてきた。

 だが、それに逆らい震える視界で横の二人を見る。

 二人とも白目を向いて倒れていた!

 特にミケちゃんは近くで見ようとしていたのか、大砲に近いところで泡を吹いて倒れている。


「……! ……!」

 ミケちゃん! ポチ君!と言ったつもりだが、耳が遠くわからない。

 這う様に二人へと近づき、脈を取る。

 良かった二人とも脈はある、だが、ミケちゃんの胸が動いてないように見える……。

 呼吸をしてないのか!?


「……きなさい!」

 肩を掴まれ、そのまま押しのけられた!

 ミポリンさんがミケちゃんの前に座り込み、胸を押している。

 心臓マッサージか。


「……げふっ!」

 ミケちゃんが息を吹き返した。

 俺もミケちゃんの横へと回りこみ、


「ミケちゃん! 大丈夫? 起きて!」


「大丈夫よ、ショックを受けたみたいだからそのまま寝かせておいた方がいいわよ。

 音の事、注意が回らなくてごめんなさーい。ここ、狭いから音が反響するのね、私も耳がキンキンするわー」


「いえ、二人が無事なら良いです……」

 正直、思うことはあるがあの大砲を構えた瞬間に思い立ち、二人を連れて逃げるべきだった。

 普段、サイレンサー付きの銃を使っているから発砲音に鈍感になっていた。


「さ、表に出ましょう」

 そう言って、ミケちゃんを抱えてミポリンさんが立ち上がる。


「あ、はい」

 俺もポチ君をバックパックに入れて立ち上がる。

 そのまま出入り口へ向けて進むが、途中後ろを振り返れば大穴を開けた巨大アメーバが見えた。

 核は見当たらず、消し飛んだようだ。




「にゃっ!? ……ここは何処にゃ?」

 ミケちゃんが目を覚まし、左右へと頭を振る。


「外だよ。大丈夫? 痛みや吐き気は無い?」


「うう……くらくらするにゃ。ポチは?」


「僕は大丈夫だよ」

 ポチ君もちょっと前に目を覚まして、今は隠れてルビーを使って体力を回復させている。

 ミケちゃんにも、ルビーを入れたポケットを指差し知らせる。

 コクリと頷いてミケちゃんも使ったようだ。


「二人ともごめんなさいねー」

 ミポリンさんがミケちゃんの顔を覗き込む。


「んー……? 何が起きたんにゃ?」

 ミケちゃんにさっきの事を説明する。



「はぁー、音だけであんなにすごいにゃ。おっかないにゃー」


「ごめんねー」


「あちきが無造作に近寄ったのが良くなかったから、姐さんは悪くないにゃ」


「そう言ってもらえると助かるわー。お詫びにあの大きなアメーバあげちゃう」


「んー、他人の獲物を貰う気は無いにゃ。それにあちきたちの獲物もいっぱいあるにゃ。

 あ! おにいさん、アメーバは?」


「アメーバは中に放置したままだよ」


「取りに行くにゃ!」

 ミケちゃんが勢いよく立ち上がろうとするが、それを押しとどめる。


「もうちょっと休んだ方がいいよ」


「そうよー、それに大きいのが出たから一度ギルドに知らせに行かないといけないわー」


「そうですね。それにあれだけ運ぶとなるとリアカーを借りてこないと」


「よし! すぐ行くにゃ」

 そう言ってミケちゃんは這いながら、横に置かれた俺のバックパックへと入り込んでいく。


「持ち上げてにゃー」


「僕もー」

 ポチ君も入り込もうとするが、


「あら、僕ちゃんは私の方に入る?」


「はーい」

 ポチ君はミポリンさんのバックパックへと納まった。

 俺もバックパックを背負いなおし。


「さぁ行くにゃー」

 ミケちゃんがバックパックから顔を出して、俺の頭をポンポンと叩いた。



いつも読んでいただきありがとうございます。

今週の投稿はここまで、来週は中篇製作4回目(全4回予定、延びるかも?)なので。

次の投稿は再来週の金曜日(9/30)になります。

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