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第96話 下水道探索

 アーティファクト探知機から反応があった。

 探知機の画面を見るとこの先にあるようだ。

 方角的にも巡回ルートから外れないみたいだし、思わぬ収穫だと足取り軽く進んでいく。

 点々と距離を保ちながら照明の点く、薄暗さのある下水道を注意深く進んだところ。

 もう少しで反応のあった場所に着くという所で前から、ずりっ……ずりっ……と這いずる音が伝わってきた。


「あちきに任せるにゃ!」

 ミケちゃんが前に出て、カバンからアルミパイプを抜く。

 片手に一本ずつ構え、二刀流だ。

 どうやら組み立てずに使うようだ。

 そうこうしている内に照明の下、暗闇を丸く切り取ったような光の中にアメーバたちが這い出てきた!

 その数は5体。


「喰らうにゃ! 雷鳴剣! ……ビリッときたぁー!?」

 ミケちゃんがスパークトルマリンを開放!

 暴走した電流がミケちゃんの全身を走るが、ミケちゃんには前もって予備のトルマリンも渡してある。

 コレには電撃耐性もあるからビリッとくるだけで済む。

 ミケちゃんがぎこちない動きでよたよたとアメーバたちに向かう。

 それに対し、アメーバたちが縦に伸び、振り子のように体を振って飛び掛かる!


「にゃんの! ほっ! やっ! と、にゃー!」

 いつもより精彩を欠いた動きだが踊るようにかわしていく。

 見た感じ酔拳みたいだなぁ。

 体当たりをかわされたアメーバたちがぼてっと落ち、そこに電気を帯びたパイプが当てられる。

 バチッ!と火花が散り、アメーバが飛び上がりそうな勢いで丸く形を変え、しゅーっ……と萎んでいった。

 ミケちゃんが次々とアメーバを叩いていく!


 それを後方で眺めていたところ、背後でぼてっ!……と何かが落ちる音がした。

 俺とポチ君がおそるおそる振り向いたところ、1体のアメーバが!

 上を向けば天井にさらに2体のアメーバが張り付いている。

 それらもぼてぼてっ!と落ちてきた。


「わわ!?」

 ポチ君が俺の後ろへと隠れる。

 俺も急いで背からハンマーを抜くが、それと同時にアメーバが体当たりしてきた!

 ゴッ!と構えた腕に衝撃が走る。

 ボーリング玉をぶつけられたような重みに一歩後ずさる。

 痛いが……この程度グールに散々殴られて慣れてきたぞ!

 お返しだ!


「ふんっ!」

 後ろ足を引き、ハンマーを上段に構えゴルフスイング!

 砂袋を強引に叩き飛ばすような感触を残して、アメーバが吹っ飛ぶ。

 その先で飛び掛ろうとしていた残りのアメーバを巻き込んで弾け飛ぶ。

 すかさず駆け寄りハンマーの一撃、一体を仕留める。

 ポチ君も剥ぎ取りようのナイフを抜いて残りの一体を切り裂いていた。

 最初にぶっ飛ばしたのは大きく抉れる様に破裂して萎んでいった。

 そこにアメーバたちを仕留めたミケちゃんが帰ってくる。


「コレ、ちょっと使いづらいにゃ。返すにゃー」

 そう言ってパイプとトルマリンを返してくる。


「雷鳴剣はもっと練習が必要だにゃ。やっぱあちきはコレだにゃ!」

 いつもの硬鞭を抜いてしっぽを揺らす。


「リーダー、拾い終わったよー」

 ポチ君がカバンにアメーバを仕舞い終えたようだ。


「それじゃ、先に進もうか」



 探知機の画面を見ながら進むこと5分、目の前に広間が見えた。

 排水路の合流地点らしく、部屋の真ん中に十字に水路が重なり、それぞれの先に道が続く。

 アーティファクトの反応はあの十字の辺りのようだが……


「いっぱい居るにゃー」

「だねー」

 二人の言う通り、広間の中には多数のアメーバが蠢いていた。

 四方から合流したアメーバたちの溜り場となっているようだな。


「通路の方は任せるにゃ。おにいさんは水の中のを頼むにゃ」


「うん、水の中に沈んだのは見えずらいからねー」


「わかった」

 パイプを組み立て2mほどの長さに。

 まだ穂先の突いてない槍の柄なので、さしずめこんと言った感じだ。


 俺たちが広間に入っていく。

 それに気づいたアメーバたちが震え始めた。

 アメーバたちの数は50以上いるみたいだ。

 ならば先手必勝!

 トルマリンを暴走させ、電気を纏う。

 ビリッとした反応に筋肉が突っ張るが、強引に動かし排水溝の中に棍を突っ込む!

 バシュッ!と水が弾け、ぶくぶくと泡が立ち続けた。

 それに合わせるようにアメーバがぷっかりと浮かんできた。

 それ以外に、水の中をアメーバが逃げていくのが見えた。

 距離が離れたのには電気が上手く通らなかったようだ。

 排水溝に棍を突っ込みながら前に進むと、それから逃げるように水場のアメーバたちが逃げていく。


「ちぇぇいっ!!」

 ミケちゃんが地上すれすれを飛ぶ隼の如く駆け上がり、手前のアメーバに一撃!


「にゃー! にゃー! にゃー!!」

 さらに周りのアメーバたちへと乱打を入れた。

 一撃で仕留めるまではいかなかったみたいだが、衝撃でアメーバたちはビクビク……と震えている。

 だがアメーバたちも黙ってはいない、硬鞭を振り回すミケちゃんへと次々に体当たりを敢行した。


「にゃんの! ほっ! やっ! と、……にゃにゃにゃ!?」

 軽々とかわしていたが数の暴力は凄まじく、だんだんとかわす隙間が無くなっていく。

 アメーバたちがミケちゃんを囲おうとした!

 そこにパシュッ……パシュッ……とポチ君の援護。

 ミケちゃんの背後に回ろうとしたアメーバを撃ち抜く。


「ミケちゃん! 下がってくれ!」

 水から棍を引き抜き、駆け込む!


「わかったにゃ!」


 ミケちゃんと入れ違いになり、それを追って来たアメーバの群れに向かって大振りのなぎ払い!

 地面に接触した棍から火花が飛ぶ。

 触れたアメーバがビクッと痺れるが……萎みまではしない。

 しっかりと時間を掛けて当てないとダメか。

 だが、今は足止めで十分。

 体ごと回しながら全力のなぎ払い!

 ぶつかったアメーバたちを弾き飛ばしながら振り抜く。


「交代にゃ!」

 その声を聞き、すぐにバックステップ。

 入れ替わりに硬鞭を腰溜めにしたミケちゃんとナイフを構えたポチ君が進み。

 動きを止めたアメーバたちに次々と止めを刺していく。

 半数のアメーバがまだ動けるようだが、どうするか戸惑っているようでその場で震えている。

 それに向けて電気を帯びた棍を向けたところ、残りのアメーバたちは逃げていった。


 アメーバが後退したのを確認してから電気を解き、棍をハンマーに持ち替える。

 俺もミケちゃんたちと一緒に止めを刺していく。

 全てが終わったところ、アメーバの山が出来、数は28体もあった。


「さっきのと合わせて大漁にゃ」


「でも、カバンがもうパンパンだよー」


「そうだね。後はちゃっちゃと回って帰ろうか。と、その前に……」

 探知機を手に取る。

 十字の水路に分け入って行き、中心に近づくほど探知機から流れる電子音の間隔が早くなっていく。

 ピーッ……と電子音が連なった時、目の前にバチッ!と電撃が走ると、光が寄り集まり、石となった。

 石の周りを電気が円状に飛び交い、鳥かごの様になって机の上に浮かんでいる。

 すぐに取り、ミケちゃんたちの元へ戻る。

 手を開けば、手のひらの上に黒い丸石が載っていた。

 只の石の様に見えるが、照明の光に合わせて炎のような照り返しを返してきた。


「これは……ファイアオパールか?」

 新しいアーティファクトだ。

 二人も食い入るように見ているが……ミケちゃんの顔が渋い。

 ピカピカ光らないからお気に召さないようだ。



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