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第94話 大砲

 ミケちゃんが持ってきたでかい火縄銃、おそらく大筒と呼ばれる類だと思うのだが。

 長さ60cmほど、銃身がやたら太く直径10cm近くあるんじゃないか?

 それを受け取る。

 受け取った瞬間、腕がガクッと下がり、やや前かがみになる!


「重い……!」

 そう呟きながら姿勢を戻し、持ち上げた。

 20kgぐらいか?


「コラ! 返してくれ!」

 店主が額に青筋立てながら迫ってくる。


「あ、すいません」

 重いですよ、と声を掛けながら渡す。

 店主もおう、と脇を締めながら大事そうに受け取って陳列棚へと戻した。


「コレって一体?」


「ん? コレは前に亜人のじいさんが店に置いてくれって持ってきたものでな。

 見ての通り、手持ちの大砲で弾も特殊だし。

 売れるかどうかわからねぇから、とりあえず預かって棚に飾ってあるんだ。

 売れるなら正式に買い取っても良いとは言ってあるんだがな」


「どんな弾を使うんですか?」


「興味があるのか? ちょっと待ってろ」

 そう言って、店主が奥から手の中に納まるぐらいの鉄の塊を持ってきた。

 先が半球になった円柱で、ちょうど缶コーヒーぐらいの大きさだ。

 側面には斜めに溝が彫ってある。


「持たしてもらっていいですか?」


「ほらよ」

 店主から渡された鉄の塊は持ったところ……300gぐらいか?

 本当にただの鉄の塊で薬莢や火薬は付いてないようだ。


「これは先込め式の銃でな。まぁグレネードランチャーとかと一緒だ。

 銃口から火薬、弾頭の順に入れて棒で押し込むんだ。

 火薬はこれだ」

 次に見せてくれたのは土色の粘土のような物。

 これが火薬らしい。


「黒色火薬の仲間らしいんだが、なんか変わった木炭を使ってるらしくてな。

 見ての通り茶色なんだ。褐色火薬って言うんだってよ」

 その褐色火薬は円盤のようなペレット状に練り固められている。


「これを大砲に装填して火縄で火を着けるんですか?」


「火縄? なんだそりゃ? これは銃身の持ち手側の上部、ここだ。

 ここに空砲を差し込んでな、このハンマーで叩いて着火するんだ」

 ハンマーは引き金と連動してるようで、この辺は普通の銃と一緒だな。


「空砲はわかるか? 銃弾から弾頭をペンチで外して、代わりに紙か綿で蓋をするんだ。

 弾頭は無いが火薬は入ってるから、信管を叩くと火花が噴き出る。

 ダンッ!……って感じでな。音は実弾と一緒だ」


「そうなんですか。空砲は使ったことが無いので知りませんでした」

 聞いたことはあるが実際には見たこと無いしな。


「まぁ、普通は使わんからな。蓋に変な物使ったら銃口内が汚れるし、メンテナンスが必要になるから使わん方がいいぞ。

 こういった特殊な銃以外ではな」


「それでこの大砲はどれくらい威力があるんですか?」


「弾頭は.357マグナム弾の30倍、火薬量もそれと同じ程だそうだ。

 威力は鉄筋の入ったコンクリート壁を悠々と撃ち抜き、廃車の残骸に横から撃ち込めば、ドアをぶち抜いてその衝撃で横転させたぜ!」


「す、すごい威力ですね」

「すごいにゃー」

 ミケちゃんの目がキラキラとしている。

 ミケちゃんが好きそうな銃だが、これは流石に撃てないと思うぞ。


「ああ、代わりに単発で、撃つ度にメンテが要るけどな」


「いくら何ですか?」


「5万だ」


「やっぱし高いですね……」


「ああ、これは見ての通り銅製でな。銃身が全て青銅で出来ている。

 素材代だけで2、3万ぐらいするんじゃないか?

 これでもかなり安くしてるんだぜ、売れたときの俺への分け前も少ねぇし、作ったじいさんはもっと少ないかもな」


 改めて大砲を見る。

 色は赤っぽい金属色、いわゆる赤銅色というやつだ。

 まだ錆びてないので赤いらしい。

 青銅が青く見えるのは表面に緑青ろくしょうと呼ばれる青緑色の錆が浮き出るからだ。

 それを考えれば、やはり古い物ではなく最近作られた物なんだろう。


「ねぇねぇ、どうするにゃ?」

 ミケちゃんが目を輝かせて俺の脇を突つく。

 ミケちゃんのおすすめはこっちかぁ。

 ショットガンを買おうかと思って、この店に寄ったが。

 これはこれで何か使える場面もあるかもしれない。

 だが、買えるのは1つ。

 悩む。


「いろいろ説明してもらってすいません。

 決めきれないので今日は出戻ろうかと思います」


「そうか、決めたらうちの店に来てくれよ。いいか? うちの店だぞ」

 店主が手を差し出し、握手をする。

 その後、肩をバンバンッと叩かれた。

 ちょっと強引な感じもするがこれだけ高い物はなかなか売れる機会も無いのだろう。

 会釈をして店を後にした。




「さて、この後どうする? 俺は鍛冶屋の方も見に行くけど」


「んー、あちきは狩りしたいにゃ」

「僕もネズミ狩りに行こうかなー。ネザーさんに頼まれてるし」


「ん、ポチがネズミ狩ってくるにゃ? じゃぁ、あちきはアメーバ叩きに行くにゃ。

 最近、銃ばっか使ってるから硬鞭が暇だって泣いてるにゃ」

 ミケちゃんが背のトゲトゲの付いたこん棒を引き抜き、頭上に掲げる。

 ただ単にストレス発散がしたいだけに思えるが。


「でかいのが出たら……」


「わかってるにゃ。さっと逃げて通報にゃ」


「それじゃ……」

 二人と別れ、壁沿いの鍛冶屋へと向かう。




 バザーの奥の方、外壁に近い辺りに煙が立ち、少々鼻にツンとした刺激がくる。

 崩れた建物に、屋根代わりにテントを張っている様な店が鍛冶屋だ。


「こんにちわー」


「いらっしゃい、今日は何を探してるんだい?」

 声を返したのは、バンダナをした若々しい男の店主だ。


「壁登ったりするのに便利な道具ないですか?」


「壁かぁ……、山登りってことでいいのかな?

 それならピッケルとか岩壁に打ち込む杭とかあるけど」


 とりあえず見せてもらい2つとも買うことにした。

 ピッケルは小さな鶴嘴つるはしのようなもので先が尖っている。

 合わせて2000シリングだった。

 今のリッチマンな俺にはお小遣い程度だな。

 他にも何かおもしろいものがないかと見てたところ、色の違うパイプを見つける。

 鉄パイプよりも色が白く、軽い。

 これって……


「お、良いの見つけたな。最近仕入れたアルミ製のパイプだ。

 この前作った鉄パイプ槍の柄に入れ替えてみないか?」


「それも良いですね」

 この前作った槍は巨大アメーバに突き込んで曲げてしまったからな。

 直すか買いなおそうと思っていた。

 アルミなら通電性も良いはずだ。

 アルミは熱伝導率がかなり良いと聞いたことがある。

 熱伝導率というのは通電性とも比例していて、熱が良く通る物は電気も良く通すのだ。

 スパークトルマリンを使うなら通電性は重要だからな。

 だが、それ以外にもこのアルミパイプを見ていて思いついた。


「これって加工できますか? 1mのパイプ4本、その半分のパイプが3本かな?

 それをさらに組み合わせられるように加工して欲しいんですけど」

 手振りで説明する。


「ふーん、パイプを組み合わせて3角形を二つ作れるようにすればいいんだな?

 パイプとパイプを繋ぐジョイント部分を作れば出来るだろう。

 ジョイント部分は一回り大きい鉄パイプを曲げて作ることになるがいいか?」


「はい、それでおねがいします」

 ちゃんと使えるかどうかはわからないが、おもしろいおもちゃを考えた。

 ガイドさんと連絡が取れるのは明後日で、明日も多分オフになるだろうから二人とこれで遊ぶか。



いつも読んでいただきありがとうございます。

今週の投稿はここまで、来週は中篇製作3回目(全4回予定)なので。

次の投稿は再来週の金曜日(9/9)になります。

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