第二話 世界が回りだすようです。
朝の憂鬱な日差しが、今日は少しだけまぶしく感じる。聖域を守ろうとする鉄壁のカーテンから、僅かに差し込む光を嬉しく思ったのはいつぶりだろうか? そんなことを思っていると僕のベッドで、可愛い寝息をたてていた天狐が上体を起こした。
「おはよう天狐」
天狐はまだ眠そうで、子猫が顔を洗うようなしぐさをしている。ここだけ見るなら世界は何も変わっていない、平和なままだと思った。しかし、カーテンを開けると世界の成れの果てが広がっている、僕はすぐにカーテンを閉めた。
「朝ごはんにしよう」
朝ごはんという単語が電池の切れかけた人形に新しい命を吹き込んだようだ。天狐の幼くも均整の取れた顔が急に凛々しくなる。
「おはよう、ろくお兄ちゃん!」
天狐の元気な挨拶を聞くと、沈みかけた僕の弱い心を押し上げる効果を感じる。こんな時だ、僕がしっかりしなくてどうする。自室から出て、一階に下りるとすぐにカセットコンロを引っ張り出した。電気の通っていない炊飯器の中には、まだ二人分のお冷ご飯が残っている。冷蔵庫の中にあった卵を早めに処理したかったのでそれを使い、たまごがゆを作り始める。
「ろくお兄ちゃん、手伝う?」
天狐が真っ直ぐな瞳でこちらを見上げていた。
「お皿とスプーンを出してもらおうかな、向こうの食器棚の引き出しにスプーンはあるから」
「はーい!」
とてとてと走っていく天狐の後姿がペンギンのようで、可愛い。ところで天狐はいくつなのだろうか、見た目的には小学校高学年くらいに見える。せっせと食卓テーブルに食器を並べている天狐に聞いてみることにした。
「天狐は小学何年生だ?」
その質問に天狐は、黒髪をなびかせて振り向いた。その顔はムっとしかめっ面だ。そしてこちらを可愛い目でにらみつけている。
「間違えた、中学生だよな?」
座敷わらしがほっぺたを赤くぷくーっと膨らませている、なんだこの可愛い生き物は。
「これでも中学ニ年生です!」
どうやら自分で幼く見えるという自覚はあるらしい。
「悪い悪い、あんまり行動が幼かったもんだからつい」
「あー! 怒りました。私、怒りました。今怒りましたー!」
食卓テーブルの椅子を引いたり押したりして怒る天狐を見て、少し僕は笑った。笑うなんて、いつぶりだろうか? 冷え切った心にほんの少しだけ、赤くなった薪がくべられたようだった。
「ふん、ろくお兄ちゃんだって、大学生通り越しておじさんに見えますから」
その言葉は予想していなかった、胸に何かが突き刺さる音がする。たまごがゆはそろそろ完成が近く、鶏がらスープの素を入れて、仕上げにごま油を少したらしながら、もう少しだけ煮詰める。
「お、おい、僕はまだ高校三年だぞ」
たじろいだ僕に満足したのか、天狐は口の端を幸福側に持ち上げた。たまごがゆからごま油の良いにおいが立ち上っている。
「それくらい頼りになるって意味です」
こいつはずるい、こんなこと言われてしまっては、これ以上反論する余地が無い。これはそうだな、ババ抜きで相手の手札が一枚しかないのに、取らなければいけない状況と同じだと僕は思った。
「ほら、出来たぞ」
僕は負けを認めるようにそう言うと、天狐が皿を持って嬉しそうに歩いてきた。天狐の皿は少し小さめで、これだけでいいのかと聞くと、朝はあまり食べないなどというので、少し大目に入れてやった、ざまあみろ。
予想より美味しく出来たたまごがゆを食べた後、ペットボトルのお茶を飲んで、口をゆすいだ。水は貴重品だと思い、水を使ったはみがきは一日に一度だけ、それも少量の水ですることにした。
「美味しかった、ほんとにお料理上手だね」
「そんなことは無い、誰でも作れるレシピだって」
内心まんざらでも無かった僕は、少しほほが赤くなるのを感じた。こんな風に誰かに褒められるなん
てことは無かったし、人と話す機会すら多くなかった。
お腹が膨れた後は、食材を全く冷えていない冷蔵庫から出した。肉類や魚類はもうダメだろう、異臭はしなかったがこの状況で倒れるようなリスクを考えると一食分程度の肉を食べるわけにはいかなかった。
今日中に食べた方が良い物、まだ日持ちする物に分けていく、二人で計画的に食べて1週間は冷蔵庫の中身で飢えずにすみそうだ。親が常温で保存の利くレトルト食品やハム、ベーコンなどを好んで買っていたのに感謝する。
それとこんな状況だ、何か武器がいるかもしれない。もしかしたら、あの異形の手の主が外にいるのかもしれない、などと考えると急いで武器を持ちたくなった。何故、僕はすぐにそれを考えなかったのかと苛立ちを覚えた。昨日の時点で、もし生き残った人々がいて、暴徒化しており襲われていたら終わりだったし、あの異形の手の者が生きていて遭遇していたら恐らく死んでいた。
今は自分で考えて、自分で生き残るしかないのだと言い聞かせて、家の中で武器になりそうな物を探しにかかった。
家の中の倉庫をあけると古びたラジオを見つけた。隅っこにあったせいか、昨日は見つけられなかったようだ。天狐と二人で少し期待しながら電池を入れ、周波数を色々といじってみる。しかし、聞こえてくるのはザーザーっという不安を更に煽る音だけだった。それを聞いた天狐が困ったように僕を見つめている。
「きっと、このラジオ壊れてるんだな、古そうだし」
そう取り繕って、また武器探しを開始する。家の倉庫の中にはめぼしいものは他に無かった。結局、家にあった役に立ちそうな武器は包丁くらいか? これでは少しだけ心細いと思った僕は、外に出て車の無い車庫を探し始める。二人で外に出ると天狐が僕の服のすそを強く握ってきた。
「大丈夫、大丈夫」
そう言いながら天狐の頭を二度軽くなでてあげると、別に怖くないと強がってみせてきた。その顔には明らかな陰りが見える。色々な不安と焦燥が天狐の小さな体を包み込んでいるのかもしれない。しかし、それを僕にはどうすることも出来なかった。
車庫の中に入ると見たことも無い棒が立てかけられていた。不思議に思って近寄ってみるとその棒の先には、鋭い刃物がきつく括り付けられていた。こんなの見たことが無いぞ、と不審に思う。
近くに使い古されたサバイバルのハンドブックが置かれていたので、親のアウトドア趣味だろうと無理やり納得した。僕は親に対して、全くといっていいくらいに興味を持っていなかった。
とりあえず、武器は問題無さそうだ。天狐の身長と同じくらいの手製の槍、人間くらいならこれで撃退出来そうだ。2、3度突いてみるが、とても具合が良い。手にしっくりなじむ安定感と刃先が思ったより重く、突くのにちょうど良い感じだった。
信頼出来そうな武器を持った僕は少し気が大きくなって、少し周囲の探索をするべく、外に出ることにした。天狐にすぐ戻ると念を押して、無理やり置いてきた。天狐の寂しそうな顔が窓から覗いているのを振り返ると、少しだけ罪悪感を感じる。しかし、万が一のことを考えるとやはり連れてはこれなかった。
僕の知る限りでは住宅街だった道を一人で歩いていく、砕けたコンクリートの隙間からは草が伸び、土が覗いていた。どうしていきなりこんなことになったのだろうか。僕が家で天狐の手当てをしていたら、こうなっていた。いくら考えても答えは出ない、現実だけを見ると世界が急に崩壊してしまった、とだけはかろうじて認識出来た。
どこまで歩いても人の気配はしない、それに犬や猫の姿も見えなかった。小さな昆虫は生きているようだ。バッタやトンボが我が者顔で、この快適になったであろう世界を謳歌していた。
やがて、崩れ果てた小学校だったと思われる瓦礫の山を見つけた。小学校の敷地の中に入ろうとすると吸い込まれてしまうような恐ろしい感じがしたので、やめておいた。
それから街中を色々と回ってみたが、どこもかしこも同じ風景だった。探索は無駄に終わったようだ。2時間ほど歩き回って疲労を感じてきたころ、周りは酷い有様の中で何故だか無事な我が家に戻ってきた、すると天狐が玄関を開けるなり飛びついてくる。
「遅かった!」
腰の辺りに抱きついてきた天狐が、上目遣いで少し怒ったような目を向けてくる。最初は遠慮深くて、大人しい印象の天狐だったが、どうやらその見識は大分間違っていたようだ。
「町中をぐるっと回ってきたんだ」
「どうだった?」
少しだけ灯した希望の光がすぐに消え散ったのは、僕が首を横に振ったからだろう。
「で、でもきっと皆どこかに避難してるんだと思う、流石に皆がいきなり消えるなんてことはありえない」
「そうだよね……きっと大丈夫だよね!」
天狐は無理やり笑顔を作る、その笑顔はとても寂しそうで見ていられなかった。
「天狐は何してたんだ?」
「ずっとラジオ聞いてたよ、何も聞こえなかったけど。やっぱりあのラジオ壊れてるみたい」
過去に大きな災害があった時、どんな時でもラジオは聞けたはずだ。それなのにラジオが聞けないというのは、まさか、日本全体がそういうことなのだろうか? 悪いイメージが頭をよぎる。それは無いよなと心の中で笑い飛ばし、槍を玄関に立てかけて、家の中でしばしの休息を取ることにした。
午後からは特にすることも無く、日が沈む前にノートに今日の出来事を書きとめておくことにする、一週間分の食料品、武器、町の有様などを書いた。
すぐに書くことが無くなると、天狐と話をしたりボードゲームをしたりして時間を潰した。こんな状況だというのに天狐は楽しそうにしていた。その様子を見ていると僕まで元気が湧いて来る。そうしているとすぐに日が傾き始め、夕飯の用意を始めた。
お米はサバイバルブックの通りに枯れ木を使って鍋で炊いてみた。無洗米で本当に助かった、水をかなり節約出来て美味しいお米が炊ける。本当に親がものぐさでよかった。
その間にカセットコンロでベーコンを焼いて、日持ちのするジャガイモを少しだけ足して炒め、日持ちのしないキャベツを多めに入れた、露骨なかさましだ。黒胡椒にマヨネーズを仕上げに少し、たぶん美味いはずだ。味に保証はしないけどな!
残った食材は明日また食べようと天狐に言って、サランラップをして置いた。
そこでお米が炊きあがった、ようやくご飯だ。お米は水の量を減らしたせいか、少し固めだったが食べられないわけではなかった。そこで明日は枯れ木集めをしよう、それに川に水を汲みにいこうと思った。明日の活動内容が決まったところで、食事が出来た。
「いただきます」
二人でそろって手を叩いてから、箸を進めた。適当に作ってみたものの案外いけるものだ、悪くは無いどころかそこそこ美味い。やはり、胡椒とマヨネーズは偉大だ。
「美味しかった。ろくお兄ちゃん、良いお婿さんになるよ」
「なんで婿なんだよ、僕はお嫁さんを貰いたい」
「お嫁さん貰う柄じゃないもん、良家の跡取り婿って感じ、どう?」
何をいきなりと思ったが、どうやら僕をからかっているらしい。その証拠に天狐の口元が緩んでいる。この娘は、僕をからかう時に口元がどうやら緩むようだった。
「たしかにそうなったとしたら、そうなったで嬉しいかもしれないけど、僕はそれほど期待されるような人間じゃないし、良家とご縁なんか持てるわけもないから、それは無理な話だ」
「私、ろくお兄ちゃんでもいいよ?」
おいおいおい、待て待て、何を言い出す。落ち着け、落ち着け、何を言い出すんだ。いいよっていうのは、どういうことだ? なんだその同意します、のような言い回しは。
「あー! 今、何か良からぬことを考えましたな?」
目の前の小さな黒髪の女の子が、ぐっと大人っぽく見える。相変わらず身長は小さいが夕日を窓から浴び、ずいぶん大人びて見えてしまう。女の子と付き合ったことなんてあるわけもないし、そもそもまともに会話すらしたことが無い僕は、ただただあわてるばかりだった。
「ふふーん、もしかして童貞……」
「なななな、何を言い出す、あっ、ご飯片付けるぞ!」
我ながら情けなさすぎる、中学生にからかわれて茹で上がったタコのように赤面する高校三年生、本当に情けない。僕に今すぐ穴をくれ。
すぐにご飯を片付けてから、歯磨きをした。夜が訪れて辺りは真っ暗闇に包まれる。僕と天狐は適当な寝巻きに着替えてから、昨夜と同じように、僕が布団の上、天狐がベッドと寝床に入った。それから、軽くおやすみと挨拶を交わし眠りについた。
しかし、おかしい、眠れない。昨日はすんなり眠れたはずが、目が覚めてしまってどうも眠れそうに無かった。そんな僕を置いてきぼりに天狐からはすやすやと安らかな寝息が聞こえてくる。ちくしょう、お前のせいなんだぞ。
しばらく葛藤しているうちにふと睡魔が天狐の放った言葉の隙を突いたようだ。僕は夢の世界へと引きずりこまれていった。
朝の光を僕に当てまいと立ちふさがる布切れから、僅かにもれる光に目が覚め起きる。すると先に天狐が起きていたようで、下の方から何やら音がする。
階段を下りてみると天狐がエプロン姿で、少しダボついたTシャツを着ている。僕の母親のTシャツに着替えたようだ。僕に気がついた天狐の目があちこちと泳いでいる。何をしているのかと覗き込むと昨日の残りのキャベツを切っていた。僕がそれをぽかんと口を開けてみていると、何やら決まりが悪そうにしていた天狐が口を開いた。
「ろくお兄ちゃんが明日の朝は、こ、これ使うって言ってたから、今度は私がと思って……」
そうか、勝手に食材を使ったことを悪く思ってるのか。
「さて、今日のご飯はなんだろうな? お腹がすいたよ」
その言葉を聞いた天狐は、任せてと胸を張って調理に取り掛かった。大分危なっかしいところもあったが、出来上がった料理は十分美味しそうなキャベツと人参、ベーコンの醤油炒めだった。昨日の残りのご飯は冷たかったが、まぁ食べられるだけましだ。
「いただきます」
「いただかれます」
おかしな挨拶をした天狐を見るとじっと僕の方を見ている、何やら僕が食べるまでは自分は箸をつけないらしい。キャベツとベーコンを一つまみし、箸を口に持っていく。天狐と目があった。そのままそらさずにパクっと一口で食べ、十分に咀嚼して飲み込んだ。
何か言いたそうにしている天狐をわざとほっておいて、そのまま食事を続ける。天狐の顔が次第に赤くなっていく。
「ねえ」
「なんだ?」
知らんぷりを決め込む。
「ねえねえ!」
「だから、なんだ?」
完全に優位だ。
「うーーー……」
今にも噛み付きそうな天狐に、不意打ちで僕はようやくその言葉を口に出した。
「凄く美味しい」
その言葉を聞いた天狐は腑に落ちないといった表情で、僕を少しにらんだ後、嬉しそうに言った。
「遅い」
「天狐はきっと良いお嫁さんになるな」
僕は昨日の晩のお返しだと言わんばかりにそう言った。
食事を終えて、枯れ木集めや川の水を汲んできて、水をろ過するための装置を作った。サバイバルブックに書いてあった方法で水をろ過し、夕方には飲み水になった。
三日前は翻弄されるだけだった僕も、今では少しだけこの環境に適応出来てきた様だ。
しかし、三日たってもヘリコプターや飛行機が通らないのは何故なのか? 状況の把握のために何度か通ってもおかしくないはずだと思って、焚き火の用意はしていたのだけれど、一向にその気配は無かった。
そのまま何の変化も無く、4日目、5日目、6日目が過ぎ、7日目の朝がきた。
寝ぼけながら階段を下り、頭をかいて朝の決まりごとをこなす。
「ふあ、おはよう天狐」
「おはよーろくお兄ちゃん!」
今日も元気でまぶしい天狐がそこにいた。僕と天狐はすっかり打ち解けて、今は本当の家族のように思っていた。何かと手のかかる妹だったが、一人っこの僕にとって、気心の知れた初めての家族だった。
ろ過した水で顔を洗って、歯磨きをする。今回だけは少し贅沢に使い、体も洗った。いよいよ、その時が来た。
「ろくお兄ちゃん、ガス使い切ったみたい……」
天狐が空になったカセットコンロのガス缶をふりながら困っていた。自宅にあった生きるために必要な物が、いよいよ底をつきはじめたのだった。
「いいんだ、もう必要無い。話したとおり、今日は家を出るよ」
家を出る、その選択はこのまま篭城していても、助けが来ない可能性が濃厚、もしくは動けるうちに動くという選択肢の一つだった。それまでには何かしらの助けが来ると信じていたのだが、どうやらそれは無さそうだった。ヘリの一つも飛ばない、ラジオは通じない、人の気配も全くしない。待っていても、もはや無駄だとわかった。
「札幌だ、札幌に行こう。生き残っている人がいるなら、きっとあそこに誰かいるはずだ」
僅かに残った希望だった。僕の住む、北海道で一番大きな街が札幌だ。今はどうかわからないけど、僕が知っている世界ではそうなっていた。幸いまだ9月の半ば、外で眠れるギリギリの月日だ。天狐は覚悟を決めたようで、一つうなずいた。
「さ、まずはご飯にするか」
「ろくお兄ちゃんのご飯大好き!」
たまにこういう可愛いことを言って来るのが、狙っているのか、天然なのか、未だに把握できておらず、そのたびにどぎまぎさせられてしまう。
今日の朝ご飯は、家で食べる最後なので贅沢に……と行きたいところだったが、もう食材が残っていなかった。ジャガイモと人参、たまねぎのすき焼き煮に、ジャガイモにバターをふんだんに使い、アルミホイルでこんがり焼いたジャガバターだ。
昨日の夜から用意していたのですぐ食べることが出来た。ほくほくのジャガバターを食べると身も心も温まるようだ。
「しばらくまともなご飯を食べられないかもしれない、ゆっくり噛んで食べろよ?」
「うん、大丈夫!」
食事をして、昨日の晩に全て用意をしていたノースフェイスというメーカーの水色のリュックサックを持った。しっかりしたメーカーだと親が言っていたのを思い出し、少し心強く思った。僕が中身のぎっしり詰まった重いリュックを背負い、天狐には肩からかけるかばんを持たせた。そして忘れてはならないのが、手製の槍だ。生き残った人々がいたとして、これがあれば、いざこざになったとしても、心強い。
「ここから札幌まで50キロはある。今日は隣町まで歩くぞ」
「おー!」
「いい元気だし、いい天気だ。さていこう」
力強く一歩を踏み出し、遠ざかる自宅を振り返らず歩いた。僕は何だか、ゲームのようだと少しだけ心躍るような思いが半分、行き着く先への不安が半分だった。