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Chapter1-4

あの事件から一か月が経ち、もうすぐ受験生にクラスチェンジするようになる頃と言ったところだった。

あの後?

予定調和のように緊急閉校。

一週間ほどの休校となった。

 

最近の状況はと言うと、

あいからわず小暮以外と連絡が取れない。

俺と小暮は極力この話題を出さないようにしようと努めているが、自分たちの最悪の想像が頭をよぎって離れない。

どうやらほかの三人に関してはどうやら失踪届けが出されたようだが、俺の予想が正しかったら・・・・・。


いや、やめよう。

今は信じることが大切だ。

それに・・・・・。


「駄目ね、大した情報が無い・・・・・。」


と、小暮が頑張ってる姿を見たら、自分に何ができるのか、自分はもしかして何もできないのではないか、と変な思考に走ってしまう。

でも、やれることはやるべきだろう。


俺が・・・・・というより俺たちがこの事件に対してわかっていることと言えば、


1・どうやらこの一連の事件には『フロンティアハーツ・オンライン』が関わっているらしい事。


2・そのゲームにログインすると、その世界に自分の体が文字通り『取り込まれる』事。


3・ログアウト方法は今の所『とある二つ』の方法しか存在しない事。


4・ゲーム内で死んでしまった場合、こちらの世界に『死体』で帰って来る事。これが先ほど言った『一つ目』のログアウト方法。もう一つはゲームをクリアすること。


5・現行の事象を踏まえ、警察がサイトの閉鎖を命令するためにゲーム会社に向かった所、恐らくスタッフであったであろう変死体が見つかっており、傷口からもはや恐竜と言っても差し支えないほどの大型獣の噛み砕いたであろう跡が発見されている事。


6・調査結果から、機動隊の突入を試みたらしいが、結果は全滅。事後対策としてその会社周辺には、鉄条網やらバリケードなどそういったもので封鎖されている事。


7・警察はこの一件からサイトを閉鎖したが、いつの間にか再構築され、イタチごっこ同然の状態である事。


8・某企業、某国家が犠牲者の遺留物から何らかのオーバーテクノロジーを発見し、クリアした物に膨大な賞金を支払うと世界規模のニュースで発言したため、ログイン者(犠牲者)後を絶たない状態になってる事。


9・どこの悪趣味な人間かは解らないが、ログイン中のプレイヤーの様子を客観的にみる動画サイトの様な物が発足している事。


の計九個である。


俺は、動画サイトからアキ達の存在の特定や情報の確認をしているのだが、アカウント作成時のアバターの姿などの情報が皆無のため、難航している。

流石に本名でやらず、ハンドルネームなどでプレイするのが普通であるため、探し辛さに拍車を掛けている。

正直、何も打つ手がない。

それでも、俺達は、あいつらの無事かどうかを確かめたい。


「もうこんな時間か・・・・・。」

「今日も何の情報も手に入らなかったわね・・・・・やっぱり・・・・・。」


閉校時刻の鐘が鳴り、パソコンの電源を切りながら小暮はつぶやくようにそう言った。


「やめろ、小暮・・・・・。ミイラ取りがミイラになってどうするつもりだよ。」

「わかってはいるんだけど・・・・・ここまで何もわからないとね・・・・・。」


俺達は、部屋の荷物をまとめ、部室から出る。

・・・・・俺は。


俺達は。


元の生活に、元の日常に戻ることができるのだろうか?


今までのように、笑うことができるのだろうか?


今も、そしてこれからも。


・・・・・変わらない、と思っていたのに。

変わってしまった。


散々使われてきた、散々使い古されてきた描写だと思って鼻で笑っていたのに。

実際にいなくなってしまってから、無くしてしまってからわかる事。

胸の奥にある不自然な空洞。


・・・・・埋まる日は、来るのだろうか。

忘れ去ることは、できるのだろうか?


帰路につきながら、俺はぼんやりと、その思考で脳を埋め尽くされていた。



*****




いつものように眠り、いつものような夢を見る。

でも、今日はそんな感じではなかった。


右も左も前さえも解らない真っ暗闇。


そんな所に自分はいる。


きょろきょろと周りを見回すと、一人の少年が目に入った。


しかし、それは人ではなかった。


何時かの変な人のような真っ赤な髪に、角と蝙蝠のような翼が生えている。


近づいてみたら、その子は泣いているようだった。


どうしたんだ?と聞いてみると、顔をこちらに向けた。


どこかで見たような顔。と言うより、自分の顔だった。


「貴方は・・・・・僕。僕は・・・・・誰?僕は・・・・・何?僕は、この世界の、人、なの?僕の居るべき場所は・・・・・どこ?」


そんなことを言われたあたりで、目が覚めた。


・・・・・。


どういう意味だ、あれは?


俺のいる世界。


俺のいるべき世界。


この時、この場所、この時代、この世界。


・・・・・今の俺がいる世界。


俺のいるべき世界とは何なのか?


ともあれ、学校に行く支度をしよう。

しかし、先ほど考えていた時に窓から見えた赤いのは何だったんだろうか?

ま、いいか。

早くいかないと。



*****



通学途中、周りがやけに騒がしい。

と言っても、あまり気にしていない。

俺はもともと趣味や身内以外にそこまで興味を持つこと自体まれなのがあるが。

おかげで部活や友人メンバー以外には無気力な奴と思われがちである。

と言っても一人でいるというのも話す相手がいない分、周りの話に興味が行く。


「あれみた?」

「見た見た、空飛んでたでっかいの!」

「そう言えばあっちにテレビ局来てるって!」

「ちょ、マジ!?いこいこ!」


何が飛んでたというのか。

ま、それに関しては坂本か誰かから聞けばいいか。


で、学校到着。

あいからわず学校でもこの話で持ち切りだ。


「木下、ニュース見たか?」

「あ、坂本。起きてそのまま学校に来たから何も・・・・。」

「んじゃあ、教えてやんよ。なんか昨日の晩から今日の朝方にかけて、赤い謎の飛行物体が見られたって話。学者連中は恐竜じゃないかってことらしい。」

「恐竜復活、か。あいつらなら喜びそうだが・・・・・。」


タカとアキなら、絶対休日全部費やして探し回る位はするだろう。

あくまで、ここに居れば、と言う話だが。


「そういや、もう一月になるんだよな・・・・・あいつらがいなくなってから・・・・・。」

「ああ・・・・・無事だといいんだが・・・・・あ、先生来た。」


そんな話しをして場がちょっとしんみりしていた辺りで、先生がドアから入って来た。


「ホームルームを始める。後木下。ちょっと来い。」

「何やったんだ?お前・・・・・。」

「何もやってねえって。で、先生なんですか?」

「お前に渡してくれって。中身はこっちで確認させてもらった。」


と言って、段ボール箱を渡された。


「何です?これ。」

「中身はノートパソコンと手紙だ。もっとも手紙のほうは何書いてあるかさっぱりだったが。」

「一応聞いておきますけど、誰から?」

「変な赤毛のおっさんが渡してくれ、ってな。」


赤毛のおっさん?

もしかして・・・・・。


「中見ても・・・・・?」

「昼休みか放課後にしろ。もう授業始めるから。」


ま、当たり前か。

昼まで待とう・・・・・。



*****



でもって、昼。

食堂で、パソコンを起ち上げるがパスワードが要るようだ。

仕方ないのでパソコンを横に置き、渡された手紙を見る。


拝啓 木下智朗様


せあむちとなてひちほしらくあちのらみらといのちにくちかなのなすにもあらみらしあむちひらひもちいくちむひひとらえすあらとあらすらあしなえのえなのらひすらひひむしいえくむちあみちのちかららもらあひむひならえむあもちいくえちとにみえあみつひにかえなあてらひとひにかかひあえいもらついかなむむこらなひとあにあみちにひのち


ヒントあわない、ひもない、えむもない。


・・・・・さっぱりわからん。


「何読んでんだ?」

「坂本か、これをな、マジで何書いてあるかわからん。」

「お前さあ、ヒントあんだろこれから無いって文字抜いたら・・・・・。」


と言って手紙を取り、文字を消していく。


で。



せちとなてちほしらくちのらみらといのちにくちかなのなすにもらみらしちらもちいくちとらすらとらすらしなのなのらすらしいくちみちのちかららもらならもちいくちとにみみつにかなてらとにかかいもらついかなこらなとにみちにのち


「・・・・・何これ?」

「だから言ったろ、わからんって。」

「二人とも、何をやってるの?」

「あ、小暮、これが解読できなくてな・・・・・。」

「へえ・・・・・。これが・・・・・。」

「お前に判るの?」

「木下、ちょっとパソコン貸して。」


言われるがまま、パソコンを小暮に貸す。

小暮は何の迷いもなくパスワードを打ち込んでいく。


『この世界は作り物』


漢字も混じったパスワードである。


「おいおい、こんなん会ってるはずが・・・・・。」

「うるさい。」

「ま、ダメで元々だろ?やってみてくれ、小暮。」

「多分、これで合ってるはずだけど。」


そういって小暮はエンターキーを押す。

するとどうだろう。

パスワードが通ってデスクトップ画面が表示された。


「ウソだろ?これで合ってんのかよ・・・・・。」

「小暮、種明かしプリーズ。」

「別にいいわ、でも少しくらい考えなさい、キーボードでも見ながら。」


そういって小暮はパソコンを触り始め、こっちに向けていた顔をパソコンに向けた。


「はぁ?それどう言う意味で・・・・・。」

「あ、なるほどな。」


ヒントはキーボード、と言われた時点で俺は解き方が分かった。


「これ、かな入力の文面で、ローマ字入力で答えが出るんだろ?」

「当たりよ、木下。」

「ホントに文になるのか?」

「ああ、その辺に句読点や後付けの文字をつければ、こうなる。」


拝啓 木下智朗様

パスワードは『この世界は作り物』だ。


追伸

お前もそろそろ気づく頃だと思う。

お前は真実を知っても絶望しないか?


「って文面になる。そうだろ、小暮。」

「そうね。少し気になることも書いてあるけど。」

「ああ、追伸が・・・・・これ、意味不明だな。」


作り物?

ま、学校にしろ社会にしろ、全部作り物であって自然の物ではないが・・・・・。


「ホントにな。パスワードに関してもだけど。で。小暮。なんかわかったか?」

「・・・・・。」

「小暮?」


聞こえて無かったようなのでもう一度話しかけようとしたが、予鈴が鳴った。


「!木下、ごめんなさい。これ。後、部活には来て。」


そう言うや否や矢のように食堂から姿を消した。

顔が少し青かったがどうしたのだろうか。

ま、後で聞けばいいか。

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